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ヤマサキセイヤ
著者:ヤマサキセイヤ(やまさきせいや)
フリーランスの編集者・ライター・実務翻訳者。東京都在住。1968年生まれ。長崎市出身。東北大学薬学部中退。
コラム/エンターテイメント

カラオケという仕事

[読切]
カラオケの曲データを作成する人々の職人的世界をレポート。MIDIから「耳コピ」、入力など、日を追って、その作業を見つめる。
【2010年6月某日付記:初出は15年ほど前。冗長な説明文も自分ツッコミの構成も90年代のサブカル記事のスタイルです。職業上、思い切りアカを入れたい衝動に駆られますが、時代感を伝えるならそのままでいいかなという気もして誤字訂正だけに留めました。
 また、随所に時代を感じる記述もありました。
 通信カラオケの世界も現在ではブロードバンド化の恩恵により、MIDIデータ以外にも演奏のバックトラックデータを遅れるようになっています。
 また、当時の耳コピ環境では、まだカセットテープからデータを起こしておりました。カセットが現役だったのです。今ならMP3でのやりとりになるでしょう(機密保持が厳しければCDでのやりとりでしょう)。MIDI機材についても、当時はハードウェア音源を使っておりましたが、現在ではソフトウェア音源が主流となっています。
 なお、最後のオチに使っているCMについては、すでに筆者もどこのメーカーを指しているのかわからないです。15年とは、そういう歳月なのですね。
 現在のカラオケ制作者をめぐる状況は取材しておりませんのでわかりません。ただ、当時とはあまり変わらない、むしろ厳しくなったのではないかと予想しています。】


 ゲイシャ、フジヤマ、スキヤキのつぎあたりに有名になってしまった日本語がある。カラオケだ。英語の辞書に載っているというはなしも、まんざら嘘ではない。いまや海外にも日本のカラオケ文化は進出している。カリフォルニアで、日本製のカラオケをバックにイーグルスのナンバーをうたいまくる外人だっているのだ。文化輸出が少ないといわれる日本で、海外にも通用したのが、ビデオゲームとカラオケである。
 ここにあげるのは、ほんの一例でしかないが、カラオケ――とりわけ、いま全盛となりつつある通信カラオケというのが、どうやってつくられるかというものを簡単にレポートしたものだ。
 通信カラオケというのはホストコンピュータからデータが配信されるから通信なのであるが、その送られてくるデータにも、作成や入力するひとやがいるということを考えたことがあるだろうか。
 そこには職人の世界がある――。

【なにが送られてくるのか】
 求人情報誌を手にとると、『データ入力』という職種を見かける。数値を単純に入力していく仕事だ。通信カラオケで配信されるデータも、そうなのだろうか。たしかにデータとしては、単純に数値化されたものである。しかし、音楽的な意味がある。
 MIDIという存在だ。MIDIとは、Musical Instrument Digital Interfaceの略称で、音楽メーカーのYAMAHAが提唱した世界的な規格で、ミディやミディーなどとよぶ。
 広辞苑には、
『電子楽器とコンピューター、また電子楽器相互間で、音程・音調・音長を伝送できる定められた規格。』
 と記載されている。
 仮に鍵盤のキーをどれかひとつたたいたとしよう。そのときの音、鍵盤をたたいた強さ、音のひびいた長さ、それらがすべてデータとして残る。そのデータをもとに、ほかのMIDI対応の電子楽器で、まったくおなじ雰囲気で再生するための規格なのである。
 あえて「まったくおなじ雰囲気」と書いたのは、再生する電子楽器(これを音源とよぶ)がちがえば、雰囲気が変わってくるからである。
 ひとつたとえると、読みかたが指定された文章があったとする。それに従ったとしても、人間ひとりごとにちがう読みかたをしてしまうのと同じなのである。
 このたとえを用いると、文章がMIDIデータ、書かれてある文字がデータ、読むひとが音源ということになる。
 MIDIの説明は、これくらいでとどめておこう。

【だれがつくるのか】
 おなじ曲でも、カラオケの会社ごとに音が違うのはお気づきだろうか。これは会社ごとに音源がちがうからだ。でも、それだけではなく、某社のカラオケだと、あの曲を忠実に再現している、と思うことがあるだろう。これは音源の問題ではなく、曲をデータとして作成・入力するひとの問題でもある。
 ここでふと疑問に感じたひともいると思う。小室哲哉を筆頭として、いまや《打ち込み》と呼ばれるコンピュータをもちいた音楽全盛の時代である。ならば、かのデータをそのまま使用すれば、カラオケになるじゃないか。そのためのMIDI規格じゃないのか、と。
 とうぜんの疑問だ。でも、実際のところ、そういうはなしはない。カラオケ用のデータというのは、一個人が曲を聞き取り、入力していくのだ。これにはすべての曲がMIDIを使って録音されたわけではないからという理由のひとつだったりする。北島三郎(鳥羽一郎でもかまわない)が、MIDI機器を前に打ち込みをしている姿は想像したくない。
 はなしがそれそうなので、もとに戻そう。
 このカラオケのデータは、だれがつくるだろうか。
 カラオケ会社のひと。
 無難なこたえだ。ほかにもある。いまや大多数の一般書籍が出版社主体ではなく、編集プロダクションでつくられているのとおなじく、カラオケの制作にもやはり下請けというものがある。カラオケ会社がプロダクションに依託、プロダクション側は契約した社員やアルバイトにデータを作成させる。この流れを忘れてはいけない。世の中はヒエラルキーでなりたつという事実は、ここでもいっしょだ。
 後者のほうに着目してレポートしよう。

【耳コピ地獄】
 プロダクションから依頼を受けると、データ入力をする前にやらねばならないことがある。データの作成である。あたりまえだ。てきとうにデータつくって音源を鳴らすと、それはカラオケではなくて、ジョン・ケージのような現代音楽になってしまうからだ。ジョン・ケージのカラオケを聞いてみたいと思うこともあるが、カラオケという大衆文化を考えると、アンダーグラウンドの文化が混入しては迷惑だろう。
 さて、データ作成だ。
 最初にすることは『耳コピ』。
 読んで字のごとく、曲を耳で聞いてコピーする作業だ。譜面などはない。じぶんでつくる。ひとつのパートならまだしも、メロディ、コーラス、ドラム、ベース、ギター、ピアノ、サックス、トランペット、フルート、バイオリン、ビオラ、チェロ、ウクレレなどなど、カラオケ化すべき曲に入っている音のほとんどすべてのパートを聞きわけて、コピーしなければならない。つらい仕事だ。
 そのうえ、忘れてはならないことがある。
 これは通信カラオケをつくるヒエラルキーの最下層をレポートするものである。大切な合言葉がある。
 そう、それは『納期』だ!
 言いかえれば『締切』。
 パソコン通信独自の4バイトキャラクターにすれば、『糸内 其月』である。『糸帝 七刀』である。生活のサイクルが、万事これに左右されるのである。だいたい受注して、一週間後までに納品することになっている。カラオケボックスで酔いつぶれるひとのために、日夜、納期と闘いつづけるひとがいることを忘れてはいけない。ごはんを食べるまえに、箸をもって「お百姓さん、ありがとう」と手をあわせるがごとく、マイクに手を合わせて感謝の気持ちをつぶやくべきである。
 では、最下層のレポートを続けよう……て、表現がきついか。まあ、いい(よくないが)。
 ともかく耳コピして、データを作成する。これを納期にまにあうように入力しなければならない。

【音がないっ!】
 データを作成したら、いよいよ入力作業だ。
 じつはここまでの記述に嘘があった。本当の入力作業というものは、データをつくりながらやっていく。データを作成してから入力しているようだと、二度手間になるからだ。
 入力作業の行程をながめてみよう。一連の作業は、いわゆる《打ち込み音楽》とおなじなので、わかるひとには電光石火のごとくわかるだろう。
 まず、曲全体の骨格をつかむために、リズムパートを入力する。それから、ほかのパートをかさねていく。これが基本的なやりかたである。
 なれてくると、好きなパートから入れていく。メロディーからだろうが、コーラスからだろうが関係ない。ようするに帳尻があえばいい。
 この作業、通信カラオケならでは、といった苦労ばなしがある。ここで、すこしばかりMIDIのはなしにたちかえる。
 音源というものは、すでに説明した。通信カラオケが配信されたMIDIデータを音源で再生するものであるということも説明した。
 問題はこの音源にある。
 カラオケ会社ごとに音源が違ってくるであろうことは、しろうとであろうと想像できる。音の質も変わってくるであろうことまではわかるだろう。それ以外にも問題がある。
 音色や最大同時発音数というスペックである。
 カラオケになる曲は、ピンキリである。それこそ星の数ほどある。星の数ほど曲があるなら、音色が星の数ほどあってもおかしくない。山下達郎の『スプリンクラー』という曲にはエレキ大正琴がつかわれているし、吉幾三の『雪国』の作曲で知られるの京建輔の曲は、かならずエレキ三味線がフィーチャリングされる。こういう音色は、高価な音源を購入しようとも、ふつうは内蔵されていない。カラオケ音源もいわんやである。
 ひとつの音源に内蔵された音色で、星の数ほどの音色をそろえるというのは、どだい無理なはなしである。だが、それをやらなければ、通信カラオケという商売はなりたたない。じっさい、この二つの曲はカラオケのナンバーにあるのだ。
 どうするのか?
 なければつくる。原始的だが、これこそ人間の叡知である。ハードの性能をソフト的におぎなうのだ。
 もともとMIDI音源に内蔵されている音色というのは、さまざまな波長をくみあわせて、似た音色をシミュレートしている。内蔵された音色を加工して似せた音をつくるのだ。波長をかえたり、音が減衰していく周期をかえたりして、できるだけ近づけていく。こういうものもMIDIの音色データとして、配信できるのであった。ありがとうMIDI。ありがとうYAMAHA。
 つまり、音色をつくれば、出せない音はない。ここまで言いきれるが、カラオケ作成者にとって、これは引導を渡すような言葉でもある。音色ひとつつくるのも大変な作業だからだ、だからこそ音源のなかに、さまざまな音色があらかじめはいっているのである。
 さて、もうひとつの落とし穴、最大同時発音数にふれよう。
 漢字が七つもならんで、なにやら中国語めいた単語だけど、れっきとした日本語である。中国でも意味は通じるだろう。さすがカラオケ用語。ワールドワイドである。
 とか、いいつつ、この言葉もMIDI用語である。意味も字義どおり、同じ時間に出せる音の数の限界である。これがカラオケ作成において、曲をコピーするときの最大の難関だったりする。。
 ふつうの音源だと、最大同時発音数は六十四である。通信カラオケの音源でも似たようなものだが、データの転送効率をあげるためにこれより少なく設定されているという。それでも多くありそうに思えるが、そういうことはない。
 Cという和音をピアノでひいたとしよう。
 これだけでドとミとソで三つの音を発音しなければならない。そこにギターの音色でCのコードをかさねたとしよう。弦が六本だから、正確にギターの和音をシミュレーションするなら、これで六つの発音数をつかってしまう。たった二つの楽器だけで、九つも使うのである。これにベースやドラムなどが重なるから、曲を正確にコピーしようとすれば、すぐさま限界に達してしまう。
 Cという単純な和音なら、まだいいが、add9やsus4などのテンション系のコードがはいったりすると(もっとも最近の曲で、テンション系のコードが入ってないものというものは皆無である)、それだけ同時に発音する音の数は増えるのである。
 音色はつくればよいが、限界はふやせない。ハードの問題であるからだ。これもソフト的に解決しなければならない これもおぎなわなければならない。
 和音というのは、すべての音を出さなくてもそれらしく聞こえる。これを利用して音をけずる。もとの曲のイメージをそこなわないように、同時発音数を減らすという作業をする。
 あるいは、よくよく耳にしないと聞こえてこないような音色のパートをけずるということもする。
 けずるべき音やパートを見きわめるには、なれが必要であり、これこそ職人芸といえる。

【制作日記】
 これまでは仕事の流れを物理的に見てきただけで、制作にたずさわるひとの顔がみえてこなかった。そこで実際に制作にたずさわっているひとに、ごく一週間分のかんたんな制作日記をかいてもらうことにした。
 年末のある週の日記を公開しよう。


『今週やる曲「やん衆挽歌(やんしゅうばんか)」 唄:北島三郎』
●一日目
◇22:00-24:00
 さて始めるかと、ようやく夜の十時に重い腰を上げる。まずは渡されたカセットを聴いて曲のテンポを取る。(*1)
 結果、四分音符イコール80。……テンポ80の演歌……(涙)。
 その後、メロディをコピーして直接カモンに打ち込んでトラックデータを作る。さらにエディタで歌詞データを作って、リンクさせるプログラムにかける。これは完成時の歌詞(文字)の色塗りのタイミングのデータになる。
 必然的にこの時点で曲のサイズ(小節数)が決定される。この曲は 105小節になる。

 (*1) テンポの取り方の公式:テープを聴いて、一小節分の秒数を計ったあと、四分の四拍子の場合、240をその数字で割る。この曲は一小節四拍が三秒だったので、240÷3=80となった。ちなみに四分の三拍子なら割られる数は180、四分の二拍子なら120。

●二日目
◇23:00-24:00
 今日は、別の仕事に行って都県境を合計四回も越えたのでバテている。(*2)
 眠いのをこらえて、ようやくシステムを立ちあげカセットデッキに手を伸ばす。
 曲全体を聴いて、出てくる楽器をトラック別に設定したあと、それぞれのパンポットを割り振る作業をする。
結果、この曲はメロディを含めて13トラックの曲ということが判明した(笑)。
 今日の作業は、これでおしまい(笑)。全然仕事してるうちに入らないなあ(笑)。
 でもまあ、いよいよ明日からが本番ということで。

 (*2) ただ世田谷から町田を電車で1往復しただけなのは内緒(笑)

●三日目
◇13:00-15:30
 ベースパートのコピー、打ち込み。(*3)
◇16:30-17:00
 次にオブリガードのキラキラの音。あっけなく終わる(笑)。(*4)
◇22:00-23:30
 尺八のパートをコピーしていたら、どうしてもパンフルートの音でしか、うまく再現出来ないところを見つけて、急遽、その分のトラックを増やした。
 結果、14トラックの曲になってしまって手間が増えた(笑)。

 (*3) 16ビートの細かいフレーズばっかり出てきて、すごく大変だった。スタジオミュージシャンさんの熱い意気込みがうまく再現されたかな(笑)。
 (*4) いわゆる曲中に出番の少ない「飾りの音」は、わりとサクサク進む。

四日目
◇14:00-15:00
 エレクトリックピアノパート。(*5)
◇16:30-17:30
 三味線が左右から2本聴こえているパート(トラック2つ分)
 リードシャミとサイドシャミとでも言うんだろうか(笑)
◇22:00-23:00
 シンセパッドパート。(*6)

 (*5) ピアノ、ギターなど伴奏のパートも1コーラス採れば、あとはコピーするだけなので比較的早く終わる。
 (*6) 逆にこのパートはイントロの1小節だけなのだが(笑)なかなかこれぞという音を音源の方から見つけることが出来なくて30分もかかってしまった。

●五日目
◇13:00-15:00
 ディストーションギターパート(*7)
◇16:00-17:00
 ノンディストーションギターパート(*7)
◇22:30-24:00
 左右から聴こえているストリングスパート(トラック2つ分)の途中まで。

 (*7) この2本のギターの作業中に、実はもう1本ギターが鳴っているの見つけてしまった(笑) でも見つけたのは伴奏だし、これ以上、手間を増やすのはめんどくさいから、2本で3本分に聴こえるように作ってしまった(笑)。あとで怒られないといいなぁ(汗)

●六日目
◇13:00-17:00
 ドラム&パーカッションパート。(*8)
◇22:30-23:30
 昨日のストリングスパートの続きから最後まで。
◇24:00-24:30
  イントロのテンポ調整。同時発音数の確認。

 (*8) 今回の曲はドラムセットの他にやたら小道具みたいな楽器が多い(涙)。2回の休憩をはさんで、ようやくといった感じで終わらせる。ドラムにこれだけ時間をかけるのは、かなり長い方である。

●七日目
◇9:00-10:00
 仕上げ。いままでヘッドホンで聴きながら作業していたのを、スピーカーで音を外に出してみて、最終的なバランスを取る。
 そのあと事務所に出掛けるため、家を出る。(*9)

 (*9) 怒られないといいなあ、といったところは、チェックの時、気付かれませんでした(笑)。めでたく納品です。


 と、まあ、こんな感じだ。
『(笑)』が多いので、なごやかな雰囲気をうけるが、本当はもっと修羅場である。日記に書かれていない時間も、こまごまとした作業がある。とくに事務所でチェックをうける前日などは徹夜しごとになることも多いそうだ。
 注目して欲しいのは、七日間、ほぼなんらかの作業をしているということだ。基本的に、すべてがフリーという日はない――らしい。
 これは一曲の行程だが、一週間のうちに四曲やるということもあるという。その苦労は推してもらいたい。

【演歌地獄 ―ペンタの果てまで―】
 日記をみてもらってわかったと思うが、カラオケにした曲は演歌である。だいたい受注する曲は演歌が多いらしい。ポップな曲というのは、たいていカラオケ会社のひとが作成するらしい。
 はなしをわざと脱線しよう。
 演歌というのは、メロディーにどくとくの雰囲気がある。これはペンタトニックスケールという旋律をおもにもちいているからである。――つまり、ペンタトニックをもちいれば、だれにだって演歌っぽい曲がつくれるのだ。
 ここで弊害がうまれる。
 カラオケで演歌ばかり、コピーしていると、指が演歌のペンタトニックスケールをおぼえてしまい、それっぽい曲しかつくれなくなってしまうのだ。
 オリジナルのフュージョンをつくろう! と思いたって作曲しても、そのうち泥のかおりのする純和風の演歌インストの曲ができてしまうのであった。
 どこまでも演歌はついてまわる。まさに日本人の性{さが}である……て、おい。

【たたかうひとたち】
 大変な仕事であると書いてきたが、それなりの報酬があるかというと、そうでもないらしい。ぼくが取材したひとなどは、カラオケ制作の仕事をはじめてから、すでに五年はたつが一曲あたりのギャラは、この五年間かわってないと、涙ながらに語ってくれた。
 一曲あたりのギャラは正確な額はおしえてもらえなかったが、三万円いかないそうだ。
 上の日記に書かれた実働時間は二十時間半である。が。最終日の事務所でのチェックは、ほぼ一日がかりだから八時間だとする。それ以外にも、こまごまとした仕事があるから、一週間の実働は一曲あたりにつき、最低でも三十時間は越える。これで、各自、計算してほしい。
 ユースホステルの時給二百円の世界ほど悲惨ではないが、あまりおいしい仕事とはいえない。音楽が好きじゃないとやってられない。

 ひとつエピソードがある。
 くだんのカラオケ制作者だが、じぶんのつくった曲を外で聞いたことがないそうだ。いくひまがないのだ。
 ぼくたちが、へべれけによっぱらって、ボックスで気勢をあげているころ、彼らは寸暇をおしんでパソコンにむかっているのである。
 テレビでお猿の顔をしたアイドルが踊っている通信カラオケのCMを見て、
某カラオケ制作者は、こうつぶやいた。
「こんな音色は、入ってないのに……」
 さらにCMのコピー『○○○○○は、曲が豊富!』を見るにおよんで、靴下を画面に投げた。
「だれがつくってると思ってるんだっ!」
 ごくろうさま。
(了)
(初出:1996年01月)
登録日:2010年06月22日 18時07分
タグ : カラオケ

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