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ヤマサキセイヤ
著者:ヤマサキセイヤ(やまさきせいや)
フリーランスの編集者・ライター・実務翻訳者。東京都在住。1968年生まれ。長崎市出身。東北大学薬学部中退。
コラム/エンターテイメント

葱に関する戦慄すべき謀略の数々、または効能に関する一考察

[読切]
植物学的に葱を調べていくと――なんと秘密結社につきあたってしまった! 裏ルートで手に入れたビデオには、恐ろしい儀式の模様が映しだされていたという。口にしては命さえ危ぶまれるという内容に、著者はひとつのヒントを指し示す。「聞け! 光の戦士たちよ!」
【2010年6月某日付記:もってまわった言い回しが腹立たしくてしょうがないですね。初出は1996年ごろだったと思います。ともかくデタラメな文章が書きたくてしかたがなかったんです。
 葱をモチーフにしたのは、当時、筆者の周囲で葱が流行っていたからです。葱を使ったネタ駄文は、ここ以外にもいくつか書いた気がします。2000年代になって、初音ミクで葱がフィーチャーされたときは、うれしかったです。
 さて、このデタラメ記事についてです。れっきとした事実を、都合のよいようにロジカルに結びつけていくと(ロジカルでありつつも少し変な方向に演繹して)、最後には明後日の方向に行ってしまうことを示したかったんです。「あれ? そういうつもりじゃなかったのに!」というダマシ絵みたいな記事を作りたかったんですね。こういうミスリードしていく手法は、当時から大好きでよく使っていました。
 現在では「以下の事実を見てほしい」と述べて、都合のいい事実だけを並び立てて、読むほうが勝手に想像する手法にブラッシュアップしております。自分ではなにも語らずに、「行間から察して欲しい」ですから、卑怯さはアップしております。さらに、行間から読まなくてもいいものも読んでしまうかたもいらっしゃいますので、パワーもアップしているのではないでしょうか。
 ともあれ、オカルト的なネタに信憑性を与えるには、効果的なモンタージュ手法でしょう。
 で、お気づきかと思いますが、この記事はオカルト記事の作り方をやりたかったわけです。最後のほうは少しネタに走ってますね。これは当時の筆者の体力不足・技量不足です。しかし、「日夜、葱をとぎすまし」というフレーズは、いま読んでもとても莫迦っぽくて名フレーズだと思いました。】




 なぜ葱か?
 そんなことは、どうでもいい。ともかく葱なのである。そして、この葱というものを調べていくうちに、ぼくは驚愕すべき事実に出くわした。
 いま葱が熱い。

 植物学的に『葱』を追ってみよう。
 まず学名だ。植物の学名は国際命名規約 International Code of Botanical Nomenclature(ICBN)というものによって、二命名法で名づけられる。ICBNである。一歩間違えば、大陸間弾道弾になりそうなどえらい規則で名前が決まるのだ。これだけでも葱の底力を感じるだろう。しかもNの正式名称を見て欲しい。ノーメンクラーツラである。ロシアの赤い貴族である。ここに葱に隠された、一種名状しがたい国際的謀略を感じてしまうのは、ぼくだけではないだろう。
 さて、この二命名法だが、属と種でもってあらわされる。
 具体的なもので示したほうがいいだろう。トウリンドウを例に出す。学名は Genetiana scabra という。Genetianaが属であり、scabraが種である。この二つが合体してはじめて、トウリンドウはトウリンドウたるアイデンティティを世界的に認知されるのである。それもノーメンクラーツラによってだ。はっきりいって横暴である。
 では、葱の学名はどうなるのか。
 その前に分類学上の整理をしておこう。属や種というのは分類群の階級のひとつであり、この階級も実は国際植物命名規約よって決められている。規約である。これまたノーメンクラーツラである。赤い貴族である。これもおそらくは国際的謀略が絡んでいるにちがいない。
 基本的な階級の例を示そう。

 門                       Division
  亜門                     Subdivision
   網                     Class
    亜網                   Subclass
     目                   Order
      亜目                 Suborder
       科                 Family
        亜科               Subfamily
         連(族)            Tribe
          亜連(族)          Subtribe
           属             Genus
            亜属           Subgenus
             種           Species
              亜種         Subspecies
               変種        Variety
                品種       Form

 以上のようなヒエラルキーで、優勢主義的な陰謀の臭いむらむらな国際的謀略である。もはやフリーメーソンの企てが見え隠れする事実は、胃舐めない((C)コモエスタ坂本)だろうところの謀略である。
 う。紙面がつきそうだ。残念ながら、ここで今回のレポートは終わらなければならない。これも謀略かもしれない。だが、ぼくは負けないのだ。かならずや舞い戻るであろう。
 では、また会おう! ふははははは。

 と、書いてから、ゆうに一ケ月は過ぎてしまった。そして、ぼくは舞い戻った。ともかくヒエラルキーな謀略がフリーメーソンである。この三つが葱の謎をとくキーワードである。ゆめゆめ忘れることなかれ。
 その葱の学名を調べるところで、妨害がはいってしまったのであった。さっそく続けよう。なにしろ時間がないのだ。
 ぼくが調べた情報によれば、葱の分類学上の位置づけはこうなる。

 門                  DivisionSpematophyta  種子植物門
  亜門                SubdivisionAngiospermae 被子植物亜門
   網                ClassMonocotyledoneae  短子葉植物網
    亜網              Subclass
     目              OrderLiliaceae     ユリ科
      亜目            Suborder
       科            Family
        亜科          SubfamilyAllioideae   ネギ亜科
         連(族)       Tribe
          亜連(族)     Subtribe
           属        Genus
            亜属      Subgenus
             種      SpeciesA.fistulosum   L.ネギ
              亜種    Subspecies
               変種   Variety
                品種  Form

 A.fistulosum L.――これが葱の正体だ。
 なんの変哲もないような学名であるが。この名前に隠された恐るべき意味を読みとらねばならない。
 注目すべきは、『fistulosum』という種の名前である。ここに陰謀が隠されていた。このスペルをよく見てほしい。FではじまりMで終わる。賢明な読者なら、もうおわかりだろう。FM――すなわち、フリーメーソン(Freemason)の頭文字と一致するのだ! 驚天動地である。
 これはなんらかの偶然とはいいがたい。
 陰謀がむらむらで、ヒエラルキーが謀略の戦慄である。
 さらに葱の名前にまつわる畏怖すべき事実は、学名だけにとどまらないのだ。
 これも調べていくうちにわかった事実であるのだが、まずは、以下の広辞苑第四版の引用をみてもらおう。

ねぎ【葱】
 ユリ科の多年草。栽培上は一年生または二年生葉菜。中央アジア原産で、わが国でも古くから栽培。葉鞘の白色部を食用とする根深葱(ネブカネギ)と緑色部を主として用いる葉葱とに分ける。前者は主に関東、後者は関西で栽培。ねぶか。長ねぎ。一文字(ヒトモジ)。古名、き。季・冬。〈日葡〉。「―白く洗ひたてたる寒さかな」(芭蕉)
ねぎ【禰宜】
 (「祈(ネ)ぐ」の連用形から)
(1)神主の下、祝(ハフリ)の上に位する神職。伊勢神宮では、少宮司の次、宮掌の上位。宮司の命を受け祭祀に奉仕し、事務をつかさどった。
(2)イナゴの異称。

 ネギには、二つの漢字があった。葱と禰宜である。注目すべきは、禰宜のほうだ。
 またまた引用であるが、平凡社百科辞典の神職の項目を見てもらおう。

神職
 しんしょく
神社で神に仕えることを職とする者の総称。神官とも通称する。古くからの専門の神職は禰宜(ネギ)・祝(ハフリ)と呼ばれ,宮司(グウジ)の名は平安時代から使用された。当時は各神社に神主(カンヌシ)・禰宜・祝のいずれか,または3種の職階が同時に置かれた。延喜式ではそれら神職は有位者または老人から採用し,課税を免じると規定する。鎌倉以後⇒神宮寺の僧が社僧として神職同様の役割を果たしたこともあった。江戸時代には,京都の吉田家が神職の編制と統一に当たった。明治維新後神職は官吏または官吏に準ずる待遇を受けたが,戦後は宗教上の身分にすぎなくなった。s

 日本の神社には謎が多い。その謎多い神社に関する仕事のうちで、ネギという名称はかなり古くから用いられている。いまでは宮司が一般的な名称であるが、ネギのほうが断然のぶっちぎりで由緒正しいのだ。
 古の神職――ネギ。
 キーワードは『古(いにしえ)』にありそうだ。神社と古代ユダヤとの結びつきは、もはや公然の事実である。
 ユダヤ――そう、フリーメーソンだ!
 ここまでくると、さらにイルミナティの関与さえもうたがわしくない。ついでに、あのMJ(マジェスティック)−12さえも捜査にのりだしたという、情報も得た。
 さらに、ぼくが極秘裡におこなった調査によれば、日本にはフリーメーソンの支部ともいうべきものがあったらしい。
 政情不安な十九世紀から二十世紀にかけて、ヨーロッパで暗躍したフリーメーソンのエリート集団があった。啓蒙思想をとなえ、人権運動などをおこなったという。その名もローゼンクロイツ。日本語になおせば、薔薇十字団である。読者にはこちらのほうがおなじみかもしれない。
 日本にできたというフリーメーソンの支部は、これにあやかって名づけられたという。いまこそ、その名をあかそう。
 葱十字団――。
 おそろしい名前である。葱がクロスしている。
 ぼくは、たまたま、その葱十字団のビデオを裏ルートで入手したのであるが、儀式の内容は恐ろしくて書けない。これを書いてしまえば、ぼくの命さえ危うくなってしまうからだ。
 読者諸君に注意を促すためにいっておこう。葱十字団は、確実にきみのそばに存在する。そして、日夜、葱をとぎすまし、日本を乗っとろうとしているのである。
 その時期はいつか?
 ひとつだけ、ヒントをあたえておく。
 スーパーに売っている葱の価格が高騰したときである。彼らは、葱をもって武装蜂起するころあいをじっくりうかがっているのだ。おそらく、今世紀末から来世紀初頭にかけて、葱十字団による大規模な葱修羅場が展開されるであろう。
 暗いはなしばかりして、もうしわけないが、事実である。
 これを防ぐには、どうしたらよいか。
 聞け! 光の戦士たちよ!
 昔のひとは良いことをいった。『目には目を。歯には歯を。』。そして――、
『葱には葱を――!』
 葱を食べるのだ。食べて、すこやかな身体をつくる。
 いまのところ、これしか方法がないようである。
(了)
(初出:1996年02月)
登録日:2010年06月22日 18時09分
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