騒人 TOP > コラム > エンターテイメント > トーキョー・テレマカシー(1)
みやしたゆきこ
著者:みやしたゆきこ(みやしたゆきこ)

コラム/エンターテイメント

トーキョー・テレマカシー(1)

[連載 | 連載中 | 全4話] 目次へ
世界一のツッコミ、浜田への提言。イキオイのある日テレのバラエティー番組、不思議な世界観を醸し出すマジカルワールドにもの申す。
01 マジカル千里

 ダウンタウンの2人をキャラクターに使っている「CRダウンタウン劇場」というデジパチがある。ハゲおやじだの女子高生だのパンクスだの、いろんな格好に扮装した浜田と松本が真ん中のデジタルにグルグル回転し、さらにそのデジタルを別の浜田、あるいは松本が止める。その止め方に特徴があって、なんと「ツッコミ」でデジタルを止めるのである。浜田はおなじみのハリセン、松本はピコピコハンマーで殴って止める。
 ある絵柄で揃うと確率変動に突入し、最低もう2回はラッキースタートが来るというオイシイ機種ではあるのだが、これがなかなか揃わないでやんの。「止めたるでー」などと、本人の声が流れるのだが、ちっとも止めやしない。でも、松本が止める時はまだいいのである。私だって「ボケ」の松本にはそれほど期待はしていない。
 だが、問題は浜田である。
 なんといっても浜田といえば、今の日本で最強の「ツッコミ」である。芸能界、政財界、スポーツ選手、先輩後輩を問わず、容赦なくつっこむ。ま、「ツッコミ」という概念は恐らく日本独自のモノだろうから、日本最強のツッコミ、ということは、世界一のツッコミと言っても過言ではない。ホントは「宇宙一のツッコミ」と言いたいところだが、どこかの遠い星でモノすごい勢いでつっこむタコ型の宇宙人がいないとも限らないので、残念ながらここはひとつ控え目に「世界一のツッコミ」ということにしておこう。
 その「世界一のツッコミ」であるところの浜田、こいつがデジタルをなかなか揃えられないのである。
 ちょっと前の「ダウンタウンのごっつええかんじ」(フジテレビ系)で、浜田と坂本龍一が「CRダウンタウン劇場」を打つ、というシーンがあり、その際もなかなか揃わないデジタルに業を煮やした浜田が「松本、ちゃんとつっこめや」「しょーむないな」「つっこむタイミングが遅い」などとパチンコ台の中の松本に「ツッコミ」を入れていたのだが、松本ばかりではなく浜田のキャラクターもなかなかデジタルを揃えられないので「なんや、オレもツッコミの間が悪いやないか」と、ボヤいていた。
 そう、間が悪いのである。
 待望のリーチがかかる。スーパーリーチだ。デジタルがゆっくりと回転する……そこだ、浜田、ツッコめ! ……遅い。そこじゃあないだろう、浜田。腹の中でそう叫び、私はパチンコ台の前で地団駄を踏む。そんなことでは「世界一のツッコミ」の名が泣こうというものである。
 そこで、提言したい。浜田よ、両手にハリセンを持ってつっこむのはやめてはどうか。両手でつっこむ分、スピードが落ちるのではないか。むしろ片手でつっこんだ方がよりよい間でつっこめるのではないかと思う。って、パチンコ台に相手に提言してどうする。
 さて、つまらぬ提言はさておき。
 近頃、日本テレビ系のバラエティ番組が好調だ。イキオイがある。「それって日テレ」などというタワけた自局のCMを流して世の嘲笑を浴びていたけれども、陰ではこっそり健闘していたのである。いや、日本テレビにしてみれば、別にこっそりってわけじゃないんだろうが。自局CMには定評のあるフジテレビが、あいかわらず「フジテレビがいるよ」という割合と出来のいいドラマ仕立てのシリーズを流しながらも、お得意のバラエティ部門ではすっかり寂しい状況になってしまっているのとは対照的だ。
 日本テレビの特色は、一言でいえば「体育会系」であろう。なにしろ「思いこんだら試練の道を行く」というジャイアンツと経営が同じ。ジャイアンツといやあ、プロ野球12球団で唯一「軍」を名乗るワイルドな球団である。体育会系の基本は、「上の者に絶対服従」「体力勝負」「下っ端をイジメるのも愛情のうち」あたりではないかと思うのだが、軍隊と通ずるものを感じる。
 日本テレビ=体育会系を体現しているのが、福沢朗という、尻だのオツムだの胸板だの誠意だの、あらゆるモノがいかにも薄くて軽そうな局アナだ。全日本プロレスの中継で名をあげ、その後、日本テレビの名物クイズ番組「アメリカ縦断ウルトラクイズ」の司会を、留さんこと福留アナから引き継ぎ、決め台詞「ファイアー!」を事あるごとに叫んで、日本中のクイズマニアの「兄貴」として君臨。また、とんねるずの「生ダラ」に出演したことで、さらに日本中のガキどもの信頼まで手中に収めた男である。実際の年齢は幾つだか知らないが、見た目、いかにも「若僧」という感じの福沢、「ウルトラクイズ」では参加者に対してやたらと横暴に振舞い、「生ダラ」ではとんねるず・石橋にへいこらする。強きを助け、弱きをくじく。まさに体育会系。
 この体育会系のノリがどうも苦手で、かつてはほとんど日本テレビ系のバラエティ番組を見なかったのだが、贔屓にしていたフジテレビ系のバラエティが、最近あまりにもつまらないので、たまに日本テレビに浮気をするようになった。「えねせんおーけー」の「特ホウ王国」、マッキントッシュ100台使用が自慢らしい「笑ってヨロシク」、ちょっとどうかと思いつつも他に見るモノがないのでつい見てしまう「熱湯風呂」の「スーパージョッキー」など。どの番組も、泥臭く、垢抜けないのだが、これがイキオイというものだろう、力技、といった感じで最後まで見させられてしまうのが悔しい。
 ある日、「笑ってヨロシク」の中の「クイズ・普通の人々」で「普通の女子高生100人」が登場した時のことである。「女子高生に流行していること」というアンケートを見て、思わず腰が抜けた。なんとポケベルやらケイタイやらに混じって「マジカルバナナ」という回答があったのである。それも1人や2人ではなく。なんだぁ? まじかるばななだぁ? なんだよ、それ。なんでそんなもんが流行するんだよ、女子高生。しかし、マジカルバナナってなんなんだよ。どこからこんな単語をひっぱってきたのか。マジカルの方は番組タイトルからきたとして、バナナたあ一体なんだ。マジカルバナナ、日本語に訳せば「魔法的なバナナ」か。無理に訳すこともないけど、ますますもって意味不明である。
 「マジカルバナナ」といえば、確か、暑苦しいことではテレビ界で5本の指に入るであろう男・坂東英二が司会する「マジカル頭脳パワー」の1コーナーだ。チャンネルを移動する途中でチラリと見たことはあったが、日本テレビのバラエティ番組特有の泥臭い雰囲気に馴染めず、二度と見ることはなかった。しかし、そのマジカルバナナが、それほど面白いモノなのか、女子高生が熱狂するほど愉快なゲームなのか、ここはひとつ確認せねばなるまい。そう思った私はとある木曜の夜、意を決してチャンネルを4に合わせたのだった。
 果たしてものすごいことになっていた。この番組の他にはどこにもないような世界、「マジカルワールド」とでもいうべき独自の世界観が展開されている。案の定、坂東英二は暑苦しかった。想像以上、に暑苦しく図々しくこのマジカルワールドを仕切りまくっていた。しかし、この番組の奇怪な世界観を支えるのは坂東の強引な仕切りだけではなかったのである。そのポイントは別のところにあった。坂東のあの大きな皮の厚そうな顔さえかすんでしまうほどのインパクトを持つ最終兵器を、この番組は装備していたのである。
 マジカルバナナ。ここまで何度も書いてきて今さら何だが、口に出すのも恥ずかしいこの言葉。口に出すのさえ憚られるマジカルバナナなどというヘンテコな言葉を、仕事とはいえ大の大人が寄り集まって楽しげに唱える。しかもヘンテコな拍子をつけてだ。その上、黙って見てりゃあ、ヘンテコな振りまでつけているヤツまでいるじゃないか。
 両手を握り、親指だけ外に出す。そして、その親指を交互に左右に傾ける。その時、肩と首も一緒に左右に揺れ、体全体もクネクネと動く。その動きは、ベースに流れるリズムに乗っているようで乗っていないような微妙なズレがあり、見ていると心底イライラする。
 さて、それが千里である。大江でもなく森高でもない、ましてや海原であるはずもない千里。そう。山咲千里である。
 このマジカルワールドの王様が司会の坂東英二なら、女王は文句なしに山咲であろう。アシスタントの局アナ・永井がいくら偉そうに振舞ったとて、千里のクネクネ踊りの前では圧倒的にパワー不足である。
 この山咲千里というタレントは本当に不思議なタレントである。デビューはNHKの朝の連続小説「鮎のうた」、「スチュワーデス物語」にも、グズでノロマなカメ・松本千秋こと堀ちえみの同僚役で出演していたのではなかったか。記憶に残っていないのできっと大した役じゃなかったんだと思うが、他にも何本もドラマに出ていると思う。さて、このあたりは、ごくごくありふれた女優人生である。しかし、千里がありふれていないところは、ここからである。洋服のデザインをして自分のブランドを持つ。ファッションのみならず生き方全般に渡ってOL相手に説教をたれる(「OH!エルクラブ」)。また、千里の大いなる武器は、その日本人離れしたボディである。「マジカル頭脳パワー」でも彼女はしばしば身体の線を強調するタイトな(でもヘンなデザイン)の服をまとって登場するが、自らプロデュースしたという過激なヌード写真集まで出版しているのである。こうなると、そこらへんの女優とは違う先鋭的なイメージが強く漂う。若い女性のオピニオン・リーダー的存在、簡単に言やあ「イイ女」というわけだ。手元の「日本タレント名鑑」を調べてみると、1962年生まれの33歳、慶大卒。特技は英語と歌らしい。才色兼備、こりゃますますもって「イイ女」感が強まるではないか。
 で、千里の不思議なところは、そんな「イイ女」がなぜ「マジカルなんとか」なんぞと唱えながら、あんなヘンテコな踊りを踊っているのか、いや、そんなことより、まず、なぜ「イイ女」とは対極にあるようなあんなダサダサな番組に出演しているかということである。そういえば、何かの記事で「私は自分の身体、そして生き方を自らコントロールしてきた」といったようなことを彼女が語っているのを読んだことがある。「デビュー当時は割とおとなしくしていたが、段々と自分の意見を出すようにしてきたのだ」と。すると、この「マジカル頭脳パワー」も、事務所の意向で仕方なく出演しているのではなく、自ら選んでクネクネしているのだろうか。それとも、ひょっとしたら「あたし、単にトンガってるだけじゃないの、こういうお笑いっていうのかな、バラエティ的なセンスもちゃんと持ち合わせてるの」とでも考えているのかもしれない。もしそうだとしたら相当にズレているとしか言いようがない。まったく慶応も高い学費払わせて何教えてるのやら、これでは福沢諭吉も墓の下でさぞガッカリしていることだろう。
 ところで余談だが、この「マジカル頭脳パワー」でナレーションを務める森功至、彼は日本テレビの局アナではなく「科学忍者隊ガッチャマン」の健の声などで有名な声優である(十年以上前に起こった声優ブームでは「私は声優ではなく俳優なのである」としきりに主張していたことが思い出されるが)。ちなみに、モリコウジではなくモリカツジと読む。ほら、ひとつリコウになったでしょう。まあ、こんなことを知ったからといって、恐らく世の中では何の役に立ちそうもないんだけどさ。脳味噌のしわを無駄使いさせてすまなかった。
 千里のクネクネ踊りを「ドラクエのどろ人形のごとく見るもののレベルを下げる」と評した知人がいる。けだし名言である。私もアレを見るたびイライラしたあげく、経験値を下げられっぱなしである。このイライラは見た者にしかわかるまい。未見の方は一度ご覧いただきたい。そしてこのイライラをぜひとも共有していただきたいと強く願うものである。
(つづく)
(初出:1996年02月)
   1 2 3 4
登録日:2010年07月03日 13時51分

Facebook Comments

みやしたゆきこの記事 - 新着情報

コラム/エンターテイメントの記事 - 新着情報

あなたへのオススメ