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みやしたゆきこ
著者:みやしたゆきこ(みやしたゆきこ)

コラム/エンターテイメント

トーキョー・テレマカシー(3)

[連載 | 連載中 | 全4話] 目次へ
たとえば伊武雅刀。たとえば内海賢二。たとえば広川太一郎。どのような役柄で声を演じているのか「いい声」の男性を紹介。加えて最強の2大「へんな声」と「へにょへにょ声」も。
 相変わらず、「アクダマンSP」というヘンテコな3回権利のパチンコにハマっている今日この頃なわけだが、いや、勝てない勝てない。この1ケ月でハワイ4泊6日の旅に行けるくらい負けてしまった。情けない。せめて湯河原温泉1泊2日の旅に行けるくらいは勝ちたいものである。

 アクダマンの冷たい仕打ちに耐えかねて、久々に穏やかに羽根モノでも打ってみっか、などと軽い気持ちでトライしたのが「ボンバーキャット」。ところが、あとで調べてみたら、この機種、知ってる人なら思わず笑っちゃうという大爆裂機。射幸性が高いなんてもんじゃあない。簡単にいうと無制限の連チャン機。無制限だよ、無制限。口にするだけで、こう、高揚するじゃん、盛り上がるじゃん、無制限。さて、その爆裂・ボンバーキャットであるが、何も知らずに軽い気持ちで挑んだもののあえなく敗退、西原理恵子氏の漫画でいうところの「大血まみれ」になって帰宅したというお粗末である。これでもう2度とパチンコなんて打たないか、というと、まさかそんなこたぁないわけで、また懲りずに打ってしまうのがギャンブラーの悲しい性、なんてバカなことをアクダマンの声(たぶん水島裕改め水島裕允)を思いだしつつ考えるのであった。

 さて、声といえば、「いい声」である。唐突かつ強引な展開で面目ないが、とにかく「いい声」なんである。TVを見ていると様々な「いい声」が流れてくる。男性でも女性でも「いい声」の持ち主はいるのだが、今回は男性の「いい声」に限定して話を進めたい。


 たとえば、伊武雅刀。ドラマや映画では怪しいキャラクターを演じることが多い伊武だが、声の方は文句なしの「いい声」だ。甘い低音、そして、語尾がすーっと消えるようなソフトな語り口。CMのナレーションや洋画の吹替え、アニメの声優など、その声を耳にする機会は多い。アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統(当時は伊武雅之)の声も伊武だ。
 たとえば、内海賢二。アニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻千兵衛博士の声でもおなじみの内海は、洋画の予告編のナレーションで爆発的なパワーを発揮する。特にタイトルをコールする時、そのパワーは絶頂に達するのである。「凄い男がやってきた! プレデター!」だの「この衝撃に耐えられるのか! ターミネーター2!」だの、アクション物の映画のタイトルをあの太く野性的な声で叫ばれると、それだけでわくわくしてしまう。ソフトな伊武とは違った意味での「いい声」の持ち主といえよう。
 たとえば広川太一郎。洋画ではトニー・カーティスを持ち役にしている広川は、いかにも二枚目の「いい声」の持ち主だが、彼の場合、コミカルな味もプラスされる。CMや洋画の予告編のナレーション、「モンティパイソン」のエリック・アイドルの吹替えや「ムーミン」のスノークなどで、その持ち味が発揮されている。「……言ったりなんかしたりして〜」などという独特な「広川語」は、しばしば物真似のネタにもなる。
 たとえば、野沢那智。アラン・ドロンの声といえばこの人だ。ドロンの他にもジュリアーノ・ジェンマやダスティン・ホフマンなど、彼が吹替えを担当する二枚目俳優は多い。正統派の「いい声」だ。30代以上の人間なら、白石冬美と共にパーソナリティを務めていた深夜放送「パックインミュージック(金パ)」(TBSラジオ)を懐かしく思い出す者も多いかもしれない。老若男女から寄せられる投稿ハガキをそれぞれキャラクターを変えて読み分けていたのは名人技であった。先に挙げた広川太一郎がキザトト君を演じていた「チキチキマシーン猛レース」のナレーションも野沢である。甘い声だが声質は軽い野沢は、広川と同様にコミカルな味を出すのもうまい。だからといって「いじわるばあさん」(フジテレビ)の声をやるこたぁないと思うぞ、野沢。ちなみにニューヨークに行ってしまった野沢直子は実の姪である。
 たとえば、井上真樹夫。最近はガソリンスタンドのCMにも使われているアニメ「巨人の星」の花形満の声でおなじみの「いい声」さんだ。かなり鼻にかかった甘い声。最近はグルメ番組などのナレーションも多い。惜しくも山田康雄さんが亡くなり栗田貫一にルパンの声がバトンタッチされたことで話題をよんだアニメ「ルパン三世」の2代目・石川五エ門(初代は大塚周夫)の声も井上だ。もう15年ほど前になるが、「いとしのオンディーヌ」という詩を朗読するレコードを出していて、井上はその甘くニヒルな声で思う存分囁きまくっていた。その過剰なまでの甘い声加減に当時の声優マニアは嬉しさのあまり鳥肌をたてたものである。
 たとえば、森功至(もり・かつじ)。先々月の「テレマカシ」でも取り上げたが、「マジカル頭脳パワー」のナレーションを担当しているのがこの人。番組中、何度も司会の永井アナに「それでは森さん、お願いします」などと名前を呼ばれているので、森を日本テレビの局アナと思っている人が多いかもしれない。だが、森はれっきとした声優さんだ。「マジカル」のような番組ナレーションも数多くこなしているが、なんといっても代表作は「科学忍者隊ガッチャマン」のG1号・大鷲の健である。ちなみにG2号・コンドルのジョーの声は、「宇宙戦艦ヤマト」など数多くのアニメの主題歌を歌っている和製プレスリーこと佐々木功。佐々木も「いい声」さんの1人に数えてよかろう。関係ないけど、佐々木の妻は声優の上田みゆき。佐々木と上田は双方とも子連れで再婚した、なんてことは、ホントに関係ないっすね。失敬。しかし、どうでもいいけど、この原稿、やたらと「ちなみに」が出てくるな。ま、このようにして私は皆さんに無駄な知識を伝えているわけである。皆さんの脳味噌に無駄なシワが増えれば、私は嬉しい。それはさておき森功至だが、懐かしいところではアニメ「サイボーグ009」の初代・島村ジョー(当時は田中雪弥)の声もそうだ。またしても「ちなみに」で恐縮だが、2代目は井上和彦。井上も、甘い甘い鼻にかかった声で、アニメ「キャンディ・キャンディ」の「丘の上の王子様」の声を演じていた「いい声」さん。「キャンディ、君は笑った顔の方が可愛いよ」の台詞が有名だ。井上真樹夫も井上和彦も「甘くて鼻にかかった声」なのだが、ひょっとして井上っていう名前の特徴か? そんなこたぁないな。
 たとえば、森本レオ。最近では、ダチョウ倶楽部のリーダー・肥後の「腹に力が入らない」物真似でもおなじみの「いい声」である。そのかすかに甘さを含んだ「腹に力が入らない」声は「ポンキッキーズ(元・ポンキッキ)」で放映されている人形アニメ「機関車トーマス」のナレーションで遺憾なく発揮されている。ところで、森本レオと下条アトムって、なんとなく似ているような気がするんだけど、単に「漢字の名字+手塚治虫の作品の主人公の名前」ってところが同じだけだな。森本レオの本名は「森本治行」だけど、下条アトムは本名だ。イカスぜ、アトムのパパ・下条正巳。

 さて、意外に知られていない「いい声」というのもある。
 たとえば、石丸謙二郎。隠れた名番組「世界の車窓から」(テレビ朝日)のナレーションといえば納得されるだろう。「ラッパのマークの正露丸」のCMにも出演しているツルリとした顔の俳優だ。ほんわかとした優しい声、映像の邪魔にならないナレーションにピッタリの声の持ち主である。ご存じの方も多いかと思うが、石丸は元々つかこうへいの芝居に出演していた俳優で、優しい声に似合わぬ筋肉質の肉体を舞台で披露していたものである。つかこうへい原作の映画(「蒲田行進曲」「2代目はクリスチャン」など)には、たいてい顔を出しているので、動く石丸をご覧になりたい方はレンタルビデオ屋を当たってみてはいかがだろうか。ツルリとした顔を紅潮させ、ナレーションのイメージとはまた違った甲高い声を発するテンションの高い石丸に会うことができる。
 たとえば、原田伸郎。今どきの若い人は知らないかもしれないが、「あのねのね」の片割れである。ちなみにもう一方の片割れは清水國明。しまった、また「ちなみに」だ。申し訳ない。「あのねのね」で活躍していた頃は、どちらかというと下品なキャラクターで売っていた原田だが、ナレーションとなるとガラリとイメージがかわる。鼻にかかった野太い声はお世辞にも美声とは言えないのだが、耳障りのいい柔らかい「いい声」である。CMのナレーションなどでよくその声を聞くことができる。原田は関西出身なのでナレーションにも少し関西なまりが入るのだが、それがますます原田の声に柔らかみを加え、かえって魅力になっているように思う。
 いくつかの「いい声」を紹介してきたが、これは「いい声」のほんの一部である。まだまだTVには沢山の「いい声」さんたちが活躍している。それはアナウンサーだったり、俳優だったり、声優だったりとさまざまなのだが、またいつか別の機会に。

 さて、最後に現在最強と思われる「ヘンな声」を挙げておく。
 主にアニメで活躍している肝付兼太(きもつき・かねた)と中尾隆聖(なかお・りゅうせい)である。
 肝付は、「ドラえもん」のツネ夫や「ジャングル黒べえ」の黒べえなど藤子アニメの常連。高目の少々かすれ気味の「ヘンな声」で、いっぺん聞いたら忘れられない不思議な声である。NHKの子供番組「おかあさんといっしょ」に出演していたぬいぐるみ「じゃじゃまる」や「おしらせどり」の声も肝付だ。そして忘れてはならないのが、アニメ「ドカベン」の殿馬。今、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で「ドカベン−プロ野球編−」が連載されているが、もしアニメ化されるのなら、殿馬の声は肝付以外では聞きたくないと強く思う。もちろん岩鬼は玄田哲章、里中は神谷明、最低でもこの3人は譲れないな。
 中尾は「おかあさんといっしょ」のぬいぐるみ・ポロリやレッシー、アニメ「おばけのホーリー」のトレッパー、「アンパンマン」のバイキンマンの声だ。かなりハスキーな声で、肝付同様一度聞いたら忘れられない。「おかあさんといっしょ」「おばけのホーリー」「アンパンマン」とくれば、現在の日本の幼児の3大人気番組である。ということは、とりもなおさず今の日本の幼児が最も身近で聞いている「ヘンな声」が、中尾の声ということである。将来、彼らが大きくなった時、恐らく記憶に強く残っていることだろう。最近、NHKの「みんなのうた」で「GO!GO!コケコッコー」という珍曲を歌っていたが、元々、ライブハウスなどで歌っていた歌手でもあるので、さすがにうまい。洋画ファンには「ツインピークス」や「オン・ジ・エアー」、「刑事コロンボ・だまされたコロンボ」などのキザな奴(イアン・ブキャナン)の吹替えでもおなじみだろう。

 現在最強の2大「ヘンな声」を紹介したついでに、現在最強の2大「へにょへにょ声」を紹介しよう。

 加藤賢崇(かとう・けんそう)と酒井敏也だ。主にCMのナレーションで耳にする彼らの声は、聞く者の腰を直撃し、へにょへにょと砕けさせる。
 加藤は、伝説のユニット「ラジカルガジベリビンバシステム」の舞台や伊丹十三監督の映画「タンポポ」などに出演している個性派俳優。WOWOWでオンエアされていた「バットマン」のロビンの声もへにょへにょと吹替えている。コンピュータにも造詣が深く、マッキントッシュで描いた漫画「いぬちゃん」の著作や最近ではインターネット上でも活躍中だ。ニフティのIDもお持ちのようだ。ここまで読んでも顔が思い浮かばないって?
 そうか、困ったな。もっくんが出演していたサントリー・リザーブのCMなんかにも出てたんだけどな。さ行がTHに聞こえる「へにょへにょ声」の持ち主である。
 もう1人の酒井は、先に挙げた石丸謙二郎と同様につかこうへい劇団の出身。舞台「いつも心に太陽を」で、とあるやんごとなき方の役名で赤フン姿で登場、そのへにょへにょとした台詞回しを初めて聞いた時の衝撃は今も忘れられない。「ウゴウゴ・ルーガ」中で放映されていた怪しいアニメ「みずいろぞうさん」のナレーションの声といえば、思い出されるだろうか。昨年放映されていたNHK教育テレビの「さわやか3組」で、その年齢不詳の「とっちゃん坊や」的なルックスを生かした役を好演していた。また「箱入りも瓶入りも同量である」というカルピスのCMにも出演。なにしろ、森本レオも腹を抱えて裸足で逃げ出すと思われる「腹に力が入らない」声である。非常にインパクトのある「腹に力の入らない」声だ。

 酒井も加藤も、意外とたくさんのCMのナレーションで活躍しているので、ぜひ注意して聞いてみていただきたい。なにかと緊張を強いられる現代社会、彼らの絶妙な「へにょへにょ声」にひととき身をゆだね、思うさま腰砕けになってはいかがだろうか。
(つづく)
(初出:1996年04月)
登録日:2010年07月16日 17時49分
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