騒人 TOP > コラム > 生活・暮らし > この人に注目! 北垣浩三の才気煥発インタビュー(1)
北垣浩三
著者:北垣浩三(きたがきこうぞう)
1961年に兵庫県伊丹市で生まれました。以後、尼崎市ほを経て、小学校の四年生より、これまで神戸市在住です。兵庫県立長田高等学校卒、関西大学社会学部卒。1985年にサンケイリビング新聞社に入社。2013年11月に喉頭癌の治療の長期化のため会社都合により退社しました。2014年に喉頭癌が再発。現在、抗癌剤の点滴治療中です。著書に「フリーペーパーの未来 業界実録リクルートvsサンケイリビング」があります。
コラム/生活・暮らし

この人に注目! 北垣浩三の才気煥発インタビュー(1)

[連載 | 連載中 | 全1話] 目次へ
各界で注目されるパーソンに直撃インタビュー。第一回目はノーベル賞のパーティーに採用されている神戸酒心館の若きリーダー久保田博信氏に聞く日本酒の魅力について。
飲み会の席で、日本酒のちょっとした会話ができるといいかもしれない。

 日本酒について語ること

 少し前に焼酎の大ブームがあって誰もが焼酎好きのような顔をしていたことがありました。高価で希少な焼酎もあり、プレミアみたいになっていたことも。しかし本来、焼酎というお酒は大衆のためのものだったのではないだろうか。その点、製造工程も複雑な日本酒は違う。団塊の世代の人たちは、案外食べ物には恬淡としたとこがあるというか、単に肉嗜好が強かったりする人たちだけれど、その後の十年くらいに生まれた人たちは、かなり舌がこえていたりする。ちょうど今、五十歳くらいの人たちのことだ。彼らは意外に日本酒を飲むように思う。日本酒は語れるお酒なのかもしれないのだ。




 アメリカに日本酒をセールス中

 そこで、ノーベル賞のパーティーに採用されている神戸酒心館(福寿の蔵元)の若きリーダーである久保田博信氏に聞いてみた。氏はちょうどニューヨーク出張中で、アメリカでのセールスの真っ最中。お忙しいところをメールでお伺いした。以下はその内容である。

Q さっそくですが、ご本人が13代目でしょうか。前職はホテルマンとお聞きしていますが、跡を次ぐ、そういうご決心と言うのはどんな感じでしたでしょうか。やはりプレッシャーとかがあったとは思うのですが。

当社は江戸中期の1751年に創業し、現社長の兄で13代目となります。跡を継ぐ決心というのはあまりなく、子供の時からそれとなく継ぐものだというような雰囲気があって洗脳されておりました(笑) 家族経営ですので自分だけ違う道にいくという意識もあまりなかったですね。プレッシャーというのは入社してから強く感じるようになりました。
第二次世界大戦や阪神大震災など壊滅状態になりながらも会社を維持し、酒造りを続けてきたことが自分自身ものすごいプレッシャーだったのですが、今ではプレッシャーというよりも誇りに思えるようになりました。

 神戸の酒処、灘五郷




Q 灘五郷の御影郷なのですね。御影郷には、ほかにどんなメーカーがあるのでしょうか。灘五郷には月桂冠など京都のメーカーも入ってますね。世界一統とかは和歌山ですか。これはどういうことなのでしょう。出荷が灘という風に理解しているのですが。

御影郷には、菊正宗、剣菱、白鶴などの大手蔵とともに大黒正宗や仙介など中小の酒蔵も存在するエリアです。戦後日本酒全盛の時代は、灘という名前がひとつの大きなブランドであったため、京都ほか他の地域の蔵元も灘五郷に酒蔵を構え、灘の名称をつけて出荷していました。そのほうが売りやすかったのでしょう。こうした動きは、良い悪いは別として江戸時代から高品質の酒を造り続けてきた結果のひとつのように思います。

Q 純米酒がラインナップに多いですね。やはり本物思考ということなのでしょうか。輸出と関係あるのかな。取り敢えずお勧めの銘柄を教えて下さい。

そうですね。現在は純米酒が全体の半分以上を占めるようになりました。輸出はほとんどが純米酒ですので、その影響は少しはあるかもしれません。ただ純米酒が本物志向という意識はしていません。大吟醸や日常酒としての本醸造酒などお酒にはそれぞれの個性があり、そのバラエティがあってこそワインとは違う日本酒の凄さというか、その世界を創り出せるものと考えています。地元の米と水を使い、大吟醸から本醸造酒まで品種に関係なく丁寧な手造りの酒造りを続けることが本物志向ではと考えております。


 日本酒の海外進出は



Q 海外に多く輸出されているようですが、特に気になる国とかはおありでしょうか。海外では、どのように飲まれていますか。和食以外にあわせて飲まれることもあると思うのですが。前の質問とだぶりますが、輸出はやはり純米酒でしょうか。ワインと対抗するなら純米酒かなとは思いますが。御社の凍結酒はとても美味しいと思うのですが、これなんか海外でうけませんか。

海外では日本料理店だけで日本酒が提供されるのではなく、フュージョン系の料理店でも扱われるなど少しづつですが飲む場の広がりも出てきたように思います。そこではワインと同じようにワイングラスで飲まれることが多く、二人で一本をお楽しみいただいているような光景も目にします。輸出するお酒は純米酒が多いですね。凍結酒は非常に興味を持たれるのですが、流通の面で問題があり、輸出はしておりません。
今は日本酒が伸びてきたと言われていますが、和食の認知度の高まりがその要因であることは間違いありません。


 ノーベル賞のパーテイーと最近の傾向



Q ノーベル賞のパーテイーに売り込まれた経緯を教えて頂けますか。割合にすんなりいったのでしょうか。ライバルはどうだったのでしょう。

8年ほど前よりスウェーデンにお酒を輸出していた関係で取引先が当社のお酒を推薦してくれたことがきっかけで、2008年、2010年、2012年と日本人の方が受賞されたときにお楽しみいただいております。特にこちらから売り込みなどしたわけではありませんので、選ばれたこと自体、日本酒が世界でも評価されつつあることの表れと素直に喜んでいます。

Q 一時より、日本酒を飲む人は増えましたか。最近は、焼酎ブームも去ったようですね。なんだか焼酎が高くてバカみたいと思ってたんですが。

ここ最近は日本酒に対して興味を持ち始める方も多く、少しずつ見直されてきているのではと思います。ただ今後、国内の飲酒人口が減り続けることはまぎれもない事実でもあるので、国内においてのプロモーションはもちろん、海外での販促活動にも力を入れていきたいと考えております。


 蔵の料亭、さかばやし



Q 飲食店を経営されていますよね。さかばやしですか。何か変わったお料理、お酒とあうものはありますか。

変わった料理というものは別段意識していませんが、地元の米と水を使って酒造りをしている当社としてはできるだけ地元の食材を使った料理を提供したいと考えています。日本酒とチーズの相性はとても良いので、蔵元に併設している日本料理店では神戸の弓削牧場さんのフロマージュ・フレと少し酸度の高いスパークリングの純米酒をお勧めしたりしています。こういった意外性のあるフードペアリングのおもしろさはこれからもっと提案していきたいですね。


 酒心館では、各種イベントも



Q 酒造は文化だとおっしゃっていますが、大手のメーカーさんでは蔵人さんが減ってきてますよね。手作りの伝統は守れますか。これからの日本酒メーカーはどうなっていくのでしょうか。

大量生産が必要な酒蔵はどうしても機械化が必要ですが、中小企業の多いこの業界で手造りの伝統が消えることはないと思います。またこれまでのように大量に酒を造る時代ではないので、少量生産で手造りによる高品質の酒造りにシフトしていく傾向がこれからも続くと思います。

Q 酒心館ホールではイベントをやられていますが、それらはホテルマンの経験からのことと思いますが、参加者はどのような人たちですか。

日本酒にさほど関心のない方にも酒蔵を訪問していただきたいと言う思いから酒心館ホールをつくりイベントを開催しています。お客様がたまたまイベントに参加してみたら会場が酒蔵だったということもしばしばです。自主企画のイベントでは幕間にお酒をお出ししているのですが、そこで飲んだ味が気に入って日本酒を飲み始めたといううれしいお声を聞くこともあります。

Q 最後に、日本酒の良さというのか、なにか日本酒をアピールするようなメッセージを頂けきせんか。

ワインと比べて製造工程が非常に複雑で神秘的なところは日本酒のひとつの特徴です。
また、様々な種類の日本酒があり、冷酒や燗酒など飲み方もいろいろ楽しめる部分も大きな特徴と言えるでしょう。香りや味わいも非常にまとまりがあるので、どのような料理との相性も良いため、これから世界各国で日本酒が評価されることを期待しております。

 和食は世界へ



 和食が、その健康的なことと併せて繊細な調理方法などで、世界に注目されている。食は文化である。そんな文化を世代をこえて楽しむのが、酒を組み合わすことかもしれない。若い人たちは、特に五十代の人たちと飲む機会があるのなら、日本酒と日本文化について肴にできるように、学ぶこともして欲しいものだ。

(注)志らはま寿司は、須磨寺の参詣途上に古くからあるお寿司屋さん。売り切れ御免なので、午前中に行くべし。
(つづく)
(初出:2014年10月16日)
   1   
登録日:2014年10月16日 11時28分

Facebook Comments

コラム/生活・暮らしの記事 - 新着情報