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麻梨
著者:麻梨(あさり)
銀魂と廃墟と三浦しをんさんと箱根駅伝をこよなく愛する性別♀。最近の悩みは仕事帰りに寄ったプールで監視員のおじさんに(真剣に泳いでいたにもかかわらず)「大丈夫? ビート板使う?」と心配され、それをさらに職場で話して笑われたこと。大体毎日幸せに生きています。そう見えないらしいけれど。上記で勘のいい人ならうっすら察せる通り、書くことにおいてド素人です。
エッセイ/エッセイ

吾輩は司書である(11)

[連載 | 連載中 | 全29話] 目次へ
小さな図書館に訪れる常連さんの中にはグレートなおじいちゃん――Gさんがいます。Gさんの肉食エピソードをお披露目。


 規模の小さい分館だからか、お客さんは常連さんが多いです。
 小さい方が安心する、とわざわざウチを選んでくれる方も結構いらっしゃいます。
 近所の方も非常に親切。
「これ朝いっぱいとれたのよー」(きゅうりドサァ!)
「うちじゃ食べきれないから……」(タケノコ煮物ドサァ!)
「商品にならなくなっちゃった」(苺ドサァ!)
「いっぱい作ったので……」(おでんドサァ!)
「釣ったは良いんだけれど、ウチのお父さん食べないのよ」(鮎ぴっちぴっち)
 この後、かき氷とアイスとスイカと瓜と手打ちそばが続きます。私が出勤しているときの、記憶している程度でこれなので、多分もっと貰っている。
 ……距離感、近すぎだろ。
 みなさん自宅で栽培したはいいけれど、食べきれなくなるそうで。野菜は物々交換したりしているらしい。この近辺だけ時間の流れが止まっている気がする。

 さて、うちの図書館常連さんの一人にグレートなじいちゃんがいます。
 私が分館に配属されてから先輩に
「町のことでわからないことが合ったらあの利用者様に聞くといいよ」
 と、紹介されました。どんだけ顔広いんだよオイ。
 気難しい主のような方なのかと思えば、すごく気さくな方です。ただし
「あれ? 麻梨ちゃんマスクなんかして風邪ひいちゃったの? じゃあ僕とちゅーできないね!」
 ナチュラルセクハラ率が高けぇこと高っけぇこと!
 こっちも返すんですけれどね。「やだもう、バイオハザードさせちゃいますよ」と。「やめて! 片足棺桶に足突っ込んでいるの!」切り替えしがノリノリです。腹にナイフ刺さっても死にそうにないっスよ、とよっぽど言いたい。
 そういうわけで仲良しです。
 以下、Gさんと表記しましょうか。

 Gさんはいつも新聞や雑誌を読みに来館されます。
 お気に入りは日本経済新聞。
 同じ記事を比較させながら読むのが好きだそうで、勉強熱心な方です。私はネットニュースを読む程度で、新聞を読む習慣がない。なので面白い記事とか紹介してくれるGさんは先生みたいです。
「今、婚活の情報とかも新聞に掲載されるんだねぇ。僕も行こうかな」
 すげぇな。八十後半。孫もいるのまだ恋愛し足りないのかGさん。
「こういうのも社会勉強だよね!」
 所謂若者の草食系男子はGさんを見習ってほしいものですね。
 ちなみに、Gさんの肉食エピソードはいろんな瞬間に見られます。
 最近うちの図書館で大スズメバチの巣が発見されました。
 人の顔よりでかいサイズで、毛虫駆除の業者の方が見つけてくださったのですが……むしろ、何故今までみんな気が付かなかったんだ。
 その日の内に業者さんに来ていただき、駆除がはじまったのですが、その一部始終をお隣の学童の子たちが楽しそうに見ているわけです。……まぁ、VS大スズメバチ! とか、午後六時のニュース番組でよくやっているもんねぇ。
「すげー! でかい掃除機つかってる!」
「巣でけぇ! はちみつとれるかな!」
 子供たちの中にGさん。混ざります。
「へぇ。殺虫剤使わないんだねぇ。僕の研究されたブレンド殺虫剤使えば一発なのに」
 ……ブレンドってなんだろう。
 一応、おずおずと意見しました。
「スズメバチは相手にしちゃ危険ですよ」
「いやぁ。両手に持てるサイズの巣だったら軍手とキンチョールで戦えるよ」
 戦うなよ!
 そしてそれを子供の前で言うなよ!
 グレートというか、デンジャラスでした。
「自然は怖いよねぇ。でも、あと一〇歳歳若かったら、熊じゃなければ僕は戦えるけれど」
 寧ろGさんが怖いッス。肉食獣捕食しそうじゃねぇか。
 知らぬうちに職場に戦闘民族が混じっていました。
 そんなGさん。正義感が強い。
 今年の夏休み中。駐車場・駐輪場でゴミを散乱させる中学生の被害が続き、私は中学校と交戦していました。詳細を省きますが、水道のいたずらが酷いので止水栓を閉めようという話まで進み、いろいろ悶着があったわけです。
 たまたまその場にいたGさんに経緯をお話ししたところ、無言で立ち上がります。
「よし。シメるか」
 どっちをだ。
 え、止水栓? それとも首か? 中学生の首か?
「で、今いるの?」
 と腕まくりしているGさんは猪と戦えそうでした。止めました。
 古き良き田舎に一人くらいはいてほしい存在だと思います。
 でもやっぱり私がGさんが最も男らしいと思った瞬間は、私が仕事あがりによく近所の風呂屋に行くという話をしたとき
「あの風呂屋の社長と僕友達なんだよね。だからさ、女湯に穴つくって欲しいって頼んだら怒られちゃった!」
 って笑っていた時でしょうか。
 Gさんは多分棺桶に頭突っ込んでも漢です。
 常連さんはみんなこんな感じです。
 基本、本に関係ない珍事件が起こります。
 もう慣れました。ぐすん。
(つづく)
(初出:2015年02月14日)
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登録日:2015年02月14日 11時18分

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