騒人 TOP > エッセイ > エッセイ > 吾輩は司書である(12)
麻梨
著者:麻梨(あさり)
銀魂と廃墟と三浦しをんさんと箱根駅伝をこよなく愛する性別♀。最近の悩みは仕事帰りに寄ったプールで監視員のおじさんに(真剣に泳いでいたにもかかわらず)「大丈夫? ビート板使う?」と心配され、それをさらに職場で話して笑われたこと。大体毎日幸せに生きています。そう見えないらしいけれど。上記で勘のいい人ならうっすら察せる通り、書くことにおいてド素人です。
エッセイ/エッセイ

吾輩は司書である(12)

[連載 | 連載中 | 全29話] 目次へ
大晦日、山手線に乗ると無言で妖怪体操を始めたマルコメ少年。笑いをこらえるのに懸命の筆者をよそにニヤニヤする彼らなのであった。
 ヨーデルヨーデルマルコメヨーデタ

 新年があけました。
 おめでとうございました。
 過去形です。このエッセイを書いているのが二〇一五年になって既に一カ月も経過しているからです(公開する頃にはもっと過ぎている)。
 今年もよろしくお願いします。

 昨年も、その前の年も。
 年末は友人と仕事上がりに夜行バス直行の詰め込み旅行を決行しました。大晦日にギリギリ帰宅パターンなのですが……いやぁ。一年の締めくくりったって、最後の一秒まで何があるかわからんものでした。出会いました。マルコメと。
 えーと。
 前作「吾輩は女子大生である」で公開させていただいています、チョコミントマルコメ少年。あれに似たような感じのくりくり坊主と遭遇しました。山手線で。
 大晦日のせいか、珍しく山手線が空いており、恐らくあまり東京馴れしていない父・息子・娘が大荷物で乗車。その正面に私。
 すいている電車にテンションが上がっている子供二人が何を思ったのか、流行の妖怪的なアレの体操をはじめました。
 なにがすげぇって、電車の中で騒いじゃいけないことをちゃんとわかっているんでしょうね。
 ダンスはキレッキレです。
 だがしかしまさかのサイレント!
 何故かほぼ無表情!
 すっげぇよ。お兄ちゃん(おそらく小学校低学年くらい)と妹(保育園児かそれ以下)息ぴったりだよ。林家ペーパー師匠よりマッチングだよ。どうせならもっと楽しそうに踊れよ! ラッスンゴレライ!
 彼らの視線は窓の外。そこに地縛霊的なにゃんこのポスターが見えたらしいです。それをお父さんに伝えるためのジェスチャーだったらしい。
 彼らの向かい。つまり私の正面。
 まぁ笑いますよね!
 とりあえず顔は伏せるというか、逸らすというか。
 お父さん必死で止めていました。
「うるさくしてないよ!」
 子供は当然のように不満を主張。
 父、反論。
「電車の中で暴れちゃいけません」
 子供、反発。
「暴れてないもん。体操だもん」
「体操もいけません」
「なんで」
「ほら、あのお姉さんも笑っているでしょ!」
 見事な攻防戦かーらーのっ!
 お父さーん!
 注意に私を引き合いに出すなよ!
 完全に他人だよ、無防備だったよ。そう来るかよ、てか指をさすな、完全にピンポイントで巻き込むな!
 言いたいことは山ほどありますが、喉までこみあげたツッコミを我慢した私はわりとよくやったと思う。
 すげーデジャブだぞ。前もこんな感じだったじゃねぇか。
 この妖怪少年、もしやチョコミント……?
 顔は忘れましたが、くりくり坊主と私の相性はよろしくないようです。
 車内で吹き出した私を見て、愛嬌たっぷりの兄妹はしばらくニヤニヤしていました。踊っていた時は無表情のくせに。ちくせう可愛いなオイ。
 その後。親子が下車しているところを見送ったのですが、扉が閉まろうというとき少年だけ走って戻ってきました。
 ――なんだ、忘れものか?
 心配をよそに、少年プラットホームにて両手をあげます。
 かーらーの!
 まさかのリサイタル体操!
 麻梨、生誕二二周年を迎えていますが、生まれて初めて見知らぬ少年にダンスで見送られました。
 少年、お主が愛嬌と度胸を持ち合わせたくりくり勇者なのはよくわかった。
 だがな。
 そなたの行動によって、車内一人取り残された私がいかに声を押し殺し我慢せねばならなかったか。そしてその後いかに不審な眼で見られたか……知る由もなかろう。
 無邪気って兵器なんだろうね。
 子供って罪深いと思います。
 次合ったら隣で一緒に踊ってやろう。
(つづく)
(初出:2015年03月12日)
前へ1 ...... 9 10 11 12 13 14 15
登録日:2015年03月12日 14時10分

Facebook Comments

麻梨の記事 - 新着情報

  • 吾輩は司書である(29) 麻梨 (2017年04月19日 16時47分)
    外面はスペックの高い女子二名。ひとりは腐女子でもうひとりはダブルパンツ。見抜けるモノはそうざらにはおるまい……。人は見かけによらないというお話。(エッセイエッセイ
  • 吾輩は司書である(28) 麻梨 (2016年12月01日 15時57分)
    簡単に答えが得られない問題に対し、考える力を育てようと「図書館を使った調べる学習講座」ワークショップを担当することになり……。(エッセイエッセイ
  • 吾輩は司書である(27) 麻梨 (2016年07月02日 13時54分)
    マニアックスポット「目黒寄生虫館」に突撃。全長8メートルのサナダムシに仰天し、体内から引きずり出されるところを想像して怪しく身もだえする麻梨なのであった。(エッセイエッセイ

麻梨の電子書籍 - 新着情報

  • 吾輩は女子大生である 麻梨 (2014年07月19日 15時04分)
    女子大生、麻梨の日常と就活、就職までを記した悪ノリエッセイ22編。下着ドロにあった友人とその後の行方、理解してもらえない趣味など日常のあれこれに始まり、企業説明会、「お祈りメール」こと不採用通知について、「私服でお越し下さい」という面接などの就活エッセイも。「初めて人にいうんだけどさ」と前置きされて、なぜか性癖をカミングアウトする友人たち、人泣かせの彼女たちを潜りぬけ、見事、内定をつかめるか麻梨!(エッセイエッセイ
  • S――私が失恋(こい)したあなたの話 麻梨 (2014年05月06日 19時21分)
    端書は創立記念式典に出展するため文芸部のリレー小説をまとめることだった。役割を押しつけられることになった藍瑠が文芸部部室だった第四美術室に向かうと、そこにはひとり油絵を描く変わり者ヒナノがいた。部誌を渡す代わりにモデルとなり脱いだ藍瑠。絵の具を水場で落としているとそこに見慣れぬ青年が現れる。二卵性双生児のうら悲しいストーリー、いったんは幽霊となった学生とその案内役のヒミツ、机に書いたメッセージでやり取りする全日制と定時制の生徒とそれぞれの事情、体育倉庫に忍び込んだ小学生と女子高生の会話、二股を噂されるふたりの困惑。同じ高校を舞台に、それぞれの恋と想いがひとつに繋がっていく切ないラブストーリー。(小説現代

エッセイ/エッセイの記事 - 新着情報

エッセイ/エッセイの電子書籍 - 新着情報

  • 吾輩は女子大生である 麻梨 (2014年07月19日 15時04分)
    女子大生、麻梨の日常と就活、就職までを記した悪ノリエッセイ22編。下着ドロにあった友人とその後の行方、理解してもらえない趣味など日常のあれこれに始まり、企業説明会、「お祈りメール」こと不採用通知について、「私服でお越し下さい」という面接などの就活エッセイも。「初めて人にいうんだけどさ」と前置きされて、なぜか性癖をカミングアウトする友人たち、人泣かせの彼女たちを潜りぬけ、見事、内定をつかめるか麻梨!(エッセイエッセイ
  • 作家の日常 阿川大樹 (2014年03月29日 20時06分)
    「D列車でいこう」「フェイク・ゲーム」などの著作で知られる人気作家、阿川大樹氏のエッセイ「作家の日常」。オンラインマガジン騒人で連載されていた当作品に、第0回「小説家の誕生と死」――小説家になる前のエピソードを加えて再編集しました。小説家に必要な資質、仕事場・道具、編集者とのつきあい、印税と原稿料についてなど職業作家の日常を赤裸々に告白。氏のファンだけでなく、小説家を目指している人や作家という職業に興味のある方にもオススメのエッセイです。(エッセイエッセイ
  • ワールドカップは終わらない 阿川大樹 (2010年06月13日 17時23分)
    熱狂と興奮の中で幕を閉じた2002FIFAワールドカップ。日韓同時開催のワールドカップとして記憶にも新しい。ジャーナリスト/エッセイストの阿川大樹が1年半の取材と20日間のボランティア、5試合のスタジアム観戦を通じ、舞台裏、客席、オフィスや街…、多角的な視点で「事件」としてのワールドカップを描く。
    価格:315円(エッセイエッセイ