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麻梨
著者:麻梨(あさり)
銀魂と廃墟と三浦しをんさんと箱根駅伝をこよなく愛する性別♀。最近の悩みは仕事帰りに寄ったプールで監視員のおじさんに(真剣に泳いでいたにもかかわらず)「大丈夫? ビート板使う?」と心配され、それをさらに職場で話して笑われたこと。大体毎日幸せに生きています。そう見えないらしいけれど。上記で勘のいい人ならうっすら察せる通り、書くことにおいてド素人です。
エッセイ/エッセイ

吾輩は司書である(4)

[連載 | 連載中 | 全29話] 目次へ
図書館で購入する本は、シリーズや選書、リクエストを基準にしているが、なかには「なんでこんな本入れたんだよ」と突っ込みたくなることがあります。たとえば…。
 地雷がなくても爆発する

 ウチの職場ですが、「なんでこんな本入れたんだよ」とツッコミどころ満載な資料がたくさんあります。
 何故か分館はホラーとスプラッタ映画が強く、一三日の金曜日シリーズ・SAWシリーズDVDが雁首揃えている始末。はじめてくる利用者様、結構笑ってくれます。まぁ、多分、そのせいで県内でも相互貸借利用が活発で、一人あたりの平均貸出冊数もトップクラスの実績なんでしょうけれど。
 みんなゲテモノが好きだよねぇ……。
 さて、図書館にある資料ですが、基本的には「シリーズを揃えているもの」・「司書の選書」・「利用者様からのリクエスト」これらを基準に購入しております。
 現在はいずれも公共図書館にふさわしい内容であることがクリアの条件。
 ということは数年前の市町村時代によっぽどホラーをごり押しする職員がいたということでしょう。
 イレギュラーなのは、本社の「おすすめ」として自動的に届く資料。出版社と契約して刊行されるたびに購入になる新継続の二つです。
 おすすめ本は主に選書に特化した社員が選定した、図書館にふさわしい内容の資料。ここに芥川や直木、最近では本屋大賞の候補作品が含まれます。
 つまり、ベストセラー本の受け入れミスが未然に防げるというのが大きなメリットです。
 新継続の資料は主に大手が随時刊行する新書等が含まれます。
 絶大に信頼さている御三家といったら「岩波」「講談社」「集英社」でしょうか。ブルーバックスなど自動的に受け入れることになるので、専門分野に特化する職員が不在でも偏りない所蔵になります。
 はい。
 ここで冒頭に戻りますが、タイトル的な意味で「どうして入れた!」という本の一部が新継続で届くものだったりするのです。
 具体的な名前を上げましょう。
「職業としてのAV女優」
「アダルトビデオ革命期」
 わりとお堅い新書の棚のなかにこの二冊があればそりゃ目立つでしょうよ!
 小学生くらいの子供がにやにやしながらこの本を読んでいたのを尻目に、配架のため近寄ると走って逃げて行きました。なんで少年は、集団でこういうものを見たがるのでしょうか。
 念のため紹介しますが、別にエロ本じゃないです。
 写真とかないですからね。そこんとこ期待しないように。
 攻め込んだタイトルと内容があまりに気になったので、私も利用してみることにしたのですが……先輩のいるカウンターに出すのがあまりに気まずいので自動貸し出し機を使用しました。
 職業としてのAV女優ですが、こちらの作者様は「名前のない女たち」を執筆された方。私は名前のないを愛読していたのでノリノリで読了。いろんな意味で深い世界でした。
 問題は、返却するときです。
 自分で返却はできないので必ずスタッフにお願いすることになるのですが……職場での私のポジションがものすごく危うくなる気がします。
「返却お願いしまーす。あ、べつに目指していないんで」
 ナチュラル返却のシュミレーションが全くうまくいきそうにありません。
 そんなもやもやを抱えつつ、仕事場に職場体験の中学生が来ました。
 小学生低学年とはわりと会話できるんですが、高学年・中学生になるとなかなか接点がない。
 無駄に警戒心バリバリのATフィールド全開で、要約すると「後輩」に部類される年代の人が、割と苦手です。
 とりあえず練習ということで、私がお客さん役になり貸出と返却、カウンターの基本業務をやってみます。
「一冊返却と通すと、その利用者様のデータが表示されます。残り何冊とか、タイトルとか。あとは利用期限とか。ちなみにこれが私の」
 私の貸出履歴を見せました。
 ぴしっと……本当の意味で音がなりまして、生徒さんの表情が凍りました。
 思いっきり眼を反らします。
 なんだろうと、私も自分の履歴を見ました。

「職業としてのAV女優」
「アダルトビデオ革命期」
「ずっと死体と生きてきた」
「図解でわかる犯罪心理学」
「完全自殺マニュアル」

 あっ……。
 久々に思いましたね。
 オワタ!
 空気凍るどころじゃねーよ。フリーズドライだよ。凍った後に乾燥だよこの野郎。
 慌てて消しましたけれど、手遅れです。
「べべっべべつに目指しているわけじゃないんだけれどね」
「あ……大丈夫です。気にしていないんで」
 違うっつってんだろうがよおおおおおお!
 せめて「アダルトビデオじゃなくて、アニメビデオだよ★」とか嘘つかせろよ、自殺もしないし人も殺してないと言い訳させろよ!
 ナチュラルを演じようとした時点で、もう自然体でもなんでもないようです。
 その後、普通に授業時間を終わらせましたが、帰り際の視線が痛かったです。わ、私は悪くない……!
 ちなみにこの出来事は職質された翌日なんですよね。
 やっぱり警察のみなさま、眼が肥えていらっしゃる。
 昨日自転車のカゴにこれらの本を入れていたらどうなったのでしょう。すごく気になります。
 普通に生きているつもりですが、私が歩く先々には、数々のトラップが生まれるようです。
 わ、私は悪くな……い、ですよね?
(つづく)
(初出:2014年08月16日)
登録日:2014年08月16日 17時30分
タグ : 図書館 司書 蔵書

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