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麻梨
著者:麻梨(あさり)
銀魂と廃墟と三浦しをんさんと箱根駅伝をこよなく愛する性別♀。最近の悩みは仕事帰りに寄ったプールで監視員のおじさんに(真剣に泳いでいたにもかかわらず)「大丈夫? ビート板使う?」と心配され、それをさらに職場で話して笑われたこと。大体毎日幸せに生きています。そう見えないらしいけれど。上記で勘のいい人ならうっすら察せる通り、書くことにおいてド素人です。
エッセイ/エッセイ

吾輩は司書である(7)

[連載 | 連載中 | 全29話] 目次へ
宇宙と交信していそうな友人トム。短大を卒業し、暑くて寒いとある地方で一人暮らしを始めたトムから手紙が届く。なんだかよくわからないトムの生態について。
トムる

 強烈な出来事はありませんが、強烈な友人がいます。

 ある日。
 と、いいましても、短大一年の頃なんですが、友人から手紙が届きました。
 奴を説明するなら、そうですね。
 自転車に五寸釘がぶっ刺さっていたことすら日常と捉え、怒るより先に悟りを開く女史です。ちなみに脚とケツにも刺さったことあるらしいッス。ネイルハンマーを持った殺し屋に追われているんでしょうか。
 もっと詳しく。
 山形に行ってもアメリカンチェリーを買う人です。
 漁師が群馬に刺身を食べに行っているというイメージをして頂ければわかりやすいかと。
 んで、例の手紙の冒頭ですが。

「拝啓。お元気ですか。なんか手紙書くと「拝啓」って使ってみたくなるね? 使い方わからないけど」

 もうお分かりかと思いますけれど、トムについて私が解説できる言葉は「考えるな。感じろ」です。
 そういうわけで、今回はいつもに増してカオスの祭典。
 宇宙と交信してそうな友人、トムの話をしたいと思います。

 日本のとある寒くて暑い地域で一人暮らしを始めたトム。手紙によると、虫がよく出る地域にいるそうです。

「二週間前に謎の虫が風呂に出ました。
 排水溝に流しました。
 一週間前はゴキブリが鍋の中でお亡くなりになっていました。
 命を投げ出したくなるほど私の作ったトマトスープがお口に合わなかったのかしら。
 とりあえず排水溝に流しました」

 ……なんだろう。なんなんだろう、この気持ち。
 排水溝に対する絶大の信頼はどこからきたのか。
 あ、いや、別に生活レベルが低いとか、家をゴミ屋敷にするタイプじゃないんだけれど……なんだろう、一人暮らしってそういう感じなの?
 手紙をじっくり読んでいたら、いろんな意味を含んだ雫が私の頬を伝いました。排水溝に流しました。
 デリカシーがないことに、トムは流した謎の虫の絵を描きやがります。
 絵が恐ろしく上手いことに加え、妙なセンスとこだわりを見せつけやがるものだからありがた迷惑です。
 フォローにまわるつもりはありませんが、トムには良心的な一面もあります。

「遊びに来た時に迷わないように地図を書きました」

 すげぇ、全部手書きの地図なんて小学生以来だ。
 ちなみにその情報をもとにグーグル先生で検索かけました。
 ぜんぜんわかりませんでした。本当に日本にいるのでしょうか?
 地図に書かれている施設の大半に「謎の」と注釈をつけているんですけれど、私にはトム本人が一番謎です。
 こんな奴ですが、かわいいところもあります。
 ナメクジとカタツムリが弱点です。
 見つけると、その周りを円で囲むように塩を撒くそうです。……前言撤回。えげつないだけでした。
 また、この弱点を克服しようとしたトムは樹脂粘土とデコスイーツジェルという、食玩をきらきらさせるモノを使って蛇口からナメクジとカタツムリがずるりと這い出る像(?)を作り上げました。
 リアルになればなるほど泣きたくなったそうです。
 なんていうか、私はその話を聞きながら、完成した水道ナメクジを見て、もう二度と私の人生に同じような人類は現れないだろうな、と思いました。いや、そもそもトムが人類なのかどうかはなはだ疑問なのですけれど。
 人の将来に勝手に期待するのは趣味が良いとはいえませんが、私はどうかトムだけは大物になってほしいと心底願ってます。
 手紙の最後は、

「ホテルリゾートトムへ遊びに来てください。朝食はトーストバイキングだよ。ディナーは麻梨特製チャーハンだよ。大丈夫、食材は用意しておく。大丈夫、食材は用意しておく。ばいばーい」

 こんな締めくくり。
 友人代表として、このチャーハン事件簿を被害者ヅラして世間に公表したい。ぜひとも。
(つづく)
(初出:2014年10月21日)
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登録日:2014年10月21日 21時22分
タグ : 友人 手紙

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