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山口眞人
著者:山口眞人(やまぐちまこと)
射手座のB型という壊滅的性格。出生・来歴は秘密。現在はエロゲーのノベライズを職業としている。根っからのエロライターであるが、本人の性的嗜好はいたってノーマル。ペンネームは秘密。
エッセイ/エッセイ

西中島南方の夜

[読切]
結婚式のため、やってきた西中島南方。夜、熱があるというのに、はりきって歓楽街に出かける著者。一往復して、好みのねーちゃんに声をかけ……。山口“女子高生ネタならまかせておけ”眞人氏のこだわり。
 明日は、友人の結婚式だ。遠方より来る俺のため、ホテルをとってくれた。式場からはちと遠いが、同じとるなら西中島南方にしてくれるよう頼んだ。
 というわけで、俺は『西中島南方』にいる。このやたらと長い名前は、大阪の地下鉄御堂筋線にある駅名だ。地理的には、JRの新大阪駅に近い。『ニシナカジマミナミカタ』と読むらしい。もう少しなんとかならんのか、この名前。地元の人がなんと略して呼んでいるのか、気にかかるところだ。
 それにしても熱っぽい。数日前から微熱が続いている。とはいえ、わざわざここまで来たのだから、出歩かない手はない。俺は疲れた身体をふらふらさせながら、街をぶらぶらすることにした。発熱のため伸びきったキン○マもぶらぶらだ。
 とある場所を目指して一直線。と、きらびやかな通りに出た。うひひ、とうとうやってきた。
 そこでは、ねーちゃんが通りの両脇にずらっと並んでいる。
「よろしくぅ」
「来ない?」
「ちょっとだけ寄ってこうよ」
 どうやら、風俗のねーちゃんのようだ。見ると、それらしき店――イメクラやヘルスの看板が怒涛のように掲げられている。キラキラギラギラギンギンチカチカ。派手なネオンで目が眩みそうだ。
 が、それよりも何よりも俺の目を眩ませたのは、ねーちゃん達の服装であった。ノースリーブのミニのワンピース、胸元が大きく開いている。そんな格好のねーちゃんが、それこそ鈴なりになっているのだ。いやあ、壮観、壮観。
 そいでもって、頭を下げながら割引券だの優待券を渡そうとするから、胸の谷間が丸見えだ。思わず覗き込む俺。うーん、ノーブラっぽいが、惜しいところで乳首は見えない。あまり、じろじろと見入るわけにもいかない。でも、ひとりひとりの胸元を覗いて回る。めったに出来ないことだ。
 それにしても、好感の持てる呼び込みだ。しつこく付きまとったりしない。もっとも、いろんな店のねーちゃんが、それこそひしめきあって並んでいるのだから、それができないということもあるのだろうけど。咥えて、もとい、加えて、ねーちゃん達に、そこはことなく恥じらいがあり、初々しいところも良い。
 某街の繁華街のねーちゃんとは、大違いだ。そこでは、「にいちゃん、一発抜いてかへん?」だった。なんちゅう、露骨な。それで、断ろうものなら、「けちっ!」である。これは、まだいい方だ。声をかけてくるのが女の子ならまだしも、野郎の呼び込みにしつこくされた日にゃあ、丸一日、気分は最悪になる。
 通りを一往復してから、好みのねーちゃんに声をかけてしまう。背中まで届くストレートヘアのその娘は、好奇心旺盛そうな大きな瞳がくるくるとよく動く。その様は、まだ、あどけなくらいだ。なのに、唇がぽってりしていて、なんとも艶っぽい。そのギャップにかえってそそられる。洋服越しにみる限り、乳房は大きすぎず小さすぎず、掌に少し余るくらいか。うん、これも俺の好みだ。俺は、熱があることなど、すでに忘れている。
「わたし、真理。お客さんのことなんて呼べばいい?」
「じゃあ、眞人でいいよ」
 真理ちゃんと店内へ。その店では、なんとコスチュームプレイが出来るという。実に様々な制服が取り揃えてある。しかも、料金全額前払い制の明朗会計で、オプション一切なしってのがうれしい。
 コースを選び、指名料とプレイ料を払う。次は、コスチューム選びだ。
「ねえ、どれにする?」
 なあんて言いながら、真理ちゃんがしなだれかかってくる。俺、もう、めろめろ。
 看護婦だのスッチーは、除外。当然、女子高生ものしかない。
 そうなのだ! 俺は知る人ぞ知る女子校生マニアなのだ!
 某有名官能作家の先生から、山口“女子高生ネタならまかせておけ”眞人、などというありがたいミドルネームまで頂戴したくらいである。
 制服か体操服かスクール水着か。制服はいくつかあり、ブレザーとセーラーがある。うーん、迷う。極めて難問だ。俺の人生の中で五本の指に入るであろう、超難問だ。
 まず、セーラーのファスナーがサイドかフロントか聞いてみる。全部フロントだという。まず、除外。問題外!
 そもそも、俺が観察した限りでは、フロントファスナーのセーラーを採用している学校は少ないぞ(もっとも、セーラー自体が減ってきているけど。セーラー服を絶滅危険種に指定して、国家的に保護すべきだ!)。少なくとも、俺が中高生だった時の学区では、フロントファスナーは皆無だった。フロントファスナーのセーラーは、俺的にはリアリティに欠けるのだ。その辺の所を真理ちゃんに聞いてみる。
「どうかなあ? 脱がせにくいからじゃない? そこまで、こだわる人はじめてだよ」
 しくしくしく。俺は哀しいぞ。わざわざ、こういう所にまで来て、女の子に女子高生の格好させるんだから、みんなこだわれよ!
 さんざん迷ったすえ、結局、体操服にする。
「準備できたら呼ぶからね」
 真理ちゃんは個室に消えていく。随分、時間がかかるなあ。
「眞人さん、いいよぉ」
 ふと、時計を見ると五分した経ってない。アインシュタインは物理的時間だけでなく、精神的時間も研究するべきだった、などと筋違いのことを考えながら個室に消える俺。
 個室内では……。へへへへへ。
 何をしたか……ふふふ。教えてあげないもーん。ひ・み・つ。
 とにかく、事が終わり、俺は店外へ。すると、なんと、真理ちゃんがドアの外まで見送りに来る。
「最高のお客さんだったよ、眞人。また、来てね」
(ここで、名前が呼び捨てになっているところに、要注意)
 後ろ手にドアを閉め、俺にキス(!)。これが、この店の方針なのだろうか。それとも……いひひひ……。
 この手の店では、イソジン消毒を事の前後に行い、プレイ時間中以外は、たとえキス程度でも、まず、させてはくれないのが普通だ。
 うへへへ、やっぱり真理ちゃん……。
 なんだ、文句あっか? 俺は、自分に都合が良いようにしか考えないことにしてるんだ!
 かくして、西中島南方の夜は更けていくのであった。
 来月、また行くからね、真理ちゃん。
 え? 翌日の結婚式はって?
 うははははは、笑って誤魔化しておこう。
(了)
(初出:2000年03月)
登録日:2010年08月25日 15時11分
タグ : 歓楽街 体操服

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