おおみち礼治
著者:おおみち礼治(おおみちれいじ)
1968年生まれ。16歳のとき、尿検査でたんぱく尿が出ていると言われ検査入院。小康状態を保っていたが、25歳で人工透析を導入。現在は、フリーランスとしてホームページを作成したり、PHPやDBをいじっている。ほとんど趣味かも。
エッセイ/エッセイ

宣う躰(1)

[連載 | 連載中 | 全8話] 目次へ
学校の尿検査でタンパク尿が出ているといわれ、検査入院することになった著者。特に印象的だったのは「膀胱尿道造影検査」だった。男としては珍しい経験、という検査はどのようなものかというと……。
■はじめに

 タイトルは「のたまうからだ」と読みます。
 体が申されているという意味です。はじまりは1985年夏。高校一年生でした。その後、1994年には人工透析を導入。もともと体は弱く、三歳のときに入院してからずっと毎月一回、病院に行き、おしりに注射を打っていたことを覚えています。

 現代医学は進歩したとはいえ、ますます病人は増えています。なぜ、病気は存在するのでしょう。お腹が痛くなったことのない人に腹痛を説明してもわかりませんし、他人事をわかってくれといっても無理があります。「宣う躰」では、病気からみえてくる事柄を、体験を通して提示できたらと思います。

■検査入院 - 1985.07

 医師は「三日ですみますよ」といった。あわただしく準備をすませて、学校近くの総合病院に入院したのは、高校一年の夏休み初日だった。
 学校の尿検査でたんぱく尿が出ているといわれ、検査入院とあいなったのである。単位はわからないが、値は12だという。高校の友人に「おまえ、(検査の)前の日、しこったんじゃねえの?」といわれたが、それが本当に検査に影響するのかどうかはわからない。
 いや、実際どうだったかは別にして。

 高校は男子校で、かつては「ヤ○ザ養成所」といわれたほど荒っぽい学校だった。入学したてのころ、モヒカン頭を金色に染めた上級生が、廊下で「おらおら〜!」などと大きな声を出して、野球をしていたのを見て、なんというところに入ってしまったのだろう、と後悔したが後の祭り。

 ま、そこしか入れなかったんだけど。

 三歳のころ、腎盂腎炎で入院していたことがあるらしいが、もちろん記憶にはない。記憶上では、人生初の入院だ。入院とはどのようなものか、観察してやろうなどという余裕もなく、病室に入って病衣は右前でとめればいいのか左前なのかもわからず、ごたごたした。

 検査は身長、体重測定から血圧、血液検査、胸部X線検査、心電図検査、肺機能検査、尿検査、便検査、CT検査、腹部超音波検査、骨量検査、PSP試験、尿量、腎盂造影検査、膀胱尿道造影検査など、毎日、目が回るくらいたくさん行った。

 特に印象に残っているのは膀胱尿道造影検査だ。……あ、読み飛ばしましたね。「ぼうこうにょうどうぞうえいけんさ」である。その名前から、だいたいどのような検査かわかるだろう。これは、腎臓で作られた尿を膀胱に送るための尿管が正常かどうかみるもので、方法はこうだ。

 まず、下着を脱いで病衣だけになる。
 金属むき出しのベッドに横たわり、M字開脚して足首を固定具に乗せる。もちろん、医師に丸見えだ。自分がどういうことになっているのか、すごい光景を想像し「いやん」などと両手で顔を隠したくなるが、顔を隠したってしょうがない。もちろん、肝心なところを隠したら検査ができぬ。

 はじめてのことで、何をされるのかまったくわからない。事前に、なにをどうするのか説明はなかったように思う。いまはどうか知らないが、もう25年も前の話だから、そんなものかもしれない。その場でいわれたとおりにするしかなく、頭上にクエッションマークを出して混乱するばかりだった。

 あそこに局部麻酔をされ――これが痛いのだが、医師は麻酔が効いてきたことを確認して、笑顔で点滴のカテーテルを先っぽから挿入する。先っぽって、アナタあそこのことである。ある意味、男としては珍しい経験だ。
 カテーテルが膀胱に達すると、造影剤の点滴がはじまる。「トイレに行きたくなったらいってくださいね」と、ニッコリ微笑む看護師さん。

 静かな検査室で、点滴はゆっくりと落ちてゆく。医師も看護師も検査室から退出していない。ひとり、小さなベッドの上でM字開脚し、あそこにカテーテルを挿入されてじっとしている姿は、想像してみると、けっこうシュールだ。
 ブザーのボタンを持たされていたかもしれない。20分か30分すると次第に点滴の落ちる速度が遅くなる。膀胱に造影剤がたまったのだ。トイレに行きたいことを告げると、医師が入ってきて、「いやはやいやはや」などとつぶやきながら、ゆっくりとカテーテルを引き抜く。

 尿器が装着され、「合図でオシッコしてくださいね」といわれる。小便をしているタイミングでレントゲン写真を撮るのだ。

「はい、どうぞー」

 カシャ、と音がして出し切ると検査終了。
 尿が尿管を逆流しないかどうかを見る検査なのであった。ベッドから降りて、下着をつけたら、とぼとぼと病室に帰る。しばらくは、カテーテルの妙な感覚が残っていた。

 この検査結果は大きく人生を揺り動かすことになった。
(つづく)
(初出:2010年07月)
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登録日:2010年07月25日 15時08分
タグ : 入院 検査

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