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いちばゆみ
著者:いちばゆみ(いちばゆみ)
携帯電話やスマートフォンなどのモバイルツール、オークション、SNSなどのネットサービスを中心に執筆するITライター。主な著書に「オオカミなんかコワくない!〜出会いサイト安全利用マニュアル」(ソフトバンクパブリッシング)、「ぜったいデキます!これからはじめるYahoo!オークション」(技術評論社)などがある。横浜市在住。
エッセイ/エッセイ

ゆうきゃんの人生迷走案内(5)

[連載 | 連載中 | 全6話] 目次へ
15年ぶりに会う会社の同期3人組。20代のOLだった私たちも今や立派なおばさんだ。…で、今は幸せ? 分かれ道で選んだ道と選ばなかった道。そうしていたらどうなっていただろう?
選ばなかったほうの道

 待ち合わせ場所についたとたん、そこに立っている小柄な女性がマコだってすぐにわかった。
 会うのは10年ぶり、ううん…記憶をたぐって考えてみれば15年ぶりだというのに。

 15年…その時の流れの早さに驚くけれど、マコはちっとも変わっていないどころか前よりも若々しくなっているから、そっちのほうに驚きだ。

 私たちは、以前勤めていた会社の同期3人組。
 お互い同じ頃に結婚して退職し、ほぼ同年代の子どもがいる。
 うちの子が今年成人式だったから、たしかひとつ上のマコの息子さんはそろそろ就職活動を開始する頃だろう。
 最後に会った時、まだあどけない小学生だった息子さんが、就職活動か…。
 私たちも年を取るはずよね…苦笑いがもれる。

 同じ社内の男性と婚約後、相手のお父様が倒れてUターン転職することになり、悩んだ挙句結局彼について静岡に行ってしまったマコと、最初の相手と離婚して数年後に子連れ再婚し、その相手との間に3人の子どもを産んで大家族の“お母ちゃん”をしているカヨコと、バツイチ・シングルマザーの私と。

 3人で会うのは本当に久しぶりだ。私とカヨコは今もその会社があったのと同じ市内に住んでいるのだけど、お互いバタバタしていて、最後に会ったのは…こないだ? あれっていつだったっけ? と数えてみたら、こちらも5年ぶりくらいだった。

 この頃、3年とか5年とかってあっというまだよねぇ、とお互い軽くため息をつく。

 つい、こないだ…と思っていることが、数えてみるとびっくりするくらい以前のことだったりするのは、やはり私たちがアラフィフに近くなってきている証拠だろうか。
 日々に追われているうちに、時がどんどん速さを増して、目の前をあっというまに流れ過ぎてゆく。20代のOLだった私たちも、今や立派なオバサンだ。


 食べ放題のイタリアンのお店に落ち着いて、さっそく会わなかった間を埋めるかのようなおしゃべりが始まる。
 とはいっても、お互いmixiやfacebookで相手の近況を読んでいるから、そんなにブランクは感じさせない。

 マコのダンナさんが「仕事、仕事」で全く家庭を顧みないことも、私の長男が大学入学後に体調を崩してしばらく大変だったことも、カヨコの娘さんたちが習い事のダンスをがんばっていてこの間結構大きなコンテストに出たことも、みんな知っている。

 長年会っていないのにお互いの近況を知っているっていうのも不思議だけど、なんだか今風だね、と笑い合う。

 それでも、ネットではできない女だけの楽しい話は続く。

 いろいろ話しているうち、誰からともなく

 「…で、今は幸せ?」と、いう話になった。

 見知らぬ土地に引っ越して、今は相手の親と二世帯同居までしているのに、全く家庭を顧みない「まるで単なる下宿人だよ」というダンナさんを持つマコ。

 再婚して、3人の子どもを産んで、ダンナさんの連れ子、自分の連れ子…計6人もの子どもの母をしながら、毎日がんばっているカヨコ。
 一時期はダンナさんの連れ子とうまくいかずにずいぶん大変だったことも、SNSの近況を読んで知っていた。

 そして、長男が中学生に入る時に付き合っていた相手と、どうしても「再婚」には踏み切れずに別れ、それからずっと一人の私と。

 一人息子のカナメも、大学に入ってからは友だちとの飲み会だ、バイトだ…と忙しく、家になんてめったにいやしない。まさに「巣立って行く時期」ってことなんだろう。
 ほっとした気分でもあり、さみしくもある。
 カナメが社会人になって家を出ちゃったら、この先、私は一人でどうするのかな…。


「今から振り返ってみてさ、思えばあの時が【人生の分かれ道】だった、っていう出来事ってあるじゃない?」とマコがいう。

「たとえばあの時、故郷にUターン転職するっていうダンナとの結婚は止めておいて、他の人を選んでいたら…? とかさ」

 それぞれ、ふっと真顔になって、自分自身の「分かれ道」を思い返す。

 あの時、選ばなかったほうの、道…。

 あの時、勇気を出して彼の胸に飛び込んでいたら、今頃はもっと違ったところを歩いていたのかしら…?
 老後独りぼっちかも…なんて寂しさや不安は、持たずに済んでいたかしら。

 でも、まだ小学校低学年の子どもと介護が必要な母親を抱えた彼との再婚には、どうしても踏み切る勇気がなかった。結婚したら、介護要員・育児要員になるのは分かり切っていたから。
 仕事がちょうど乗っていた時期の私には、いくら彼の事が好きでも、彼の背景を丸ごと受け入れて一緒に背負っていくだけの覚悟はやはり持てなかった。
 彼は、私と別れたその後、どうしているだろう…。


「でもさ、そっちを選ばなかったから、今があるんだよね」とカヨコが笑う。

 美人なのに、全くメイクをしないカヨコ。

「子どもがいるとメンドクサっくってさ」と笑うその顔は、年齢相応にシミやしわはあるけれど、とってもキュートだ。彼女が歩んできた人生が、キレイに表れている笑顔だ。

「いろいろ大変だったし、あの時あっちにしとけばよかったってのはもちろん思うんだけどさ。こっちを選んだのは自分だしね」

 うん、そうだね、たしかに。

 選ばなかったほうの道は、自分が選ばなかった道だ。

 今さら、時間を巻き戻して、戻って歩くことはできない道。

 「…そうだよね、自分がこっちを選んだんだよね」と笑い合い、なんとなく3人でまた「カンパーイ」と、グラスを合わせた。
(つづく)
(初出:2013年07月14日)
登録日:2013年07月14日 19時34分
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