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宇佐美ダイ
著者:宇佐美ダイ(うさみだい)
2011年夏、東京から宮崎に戻ってきました。格闘技をやってます。元カメラマンですけど、今は正義の味方の仕事をしています。いつの間にか人の心も読めるようになりました。そして趣味で浮遊しているような写真を三脚+セルフタイマーで撮ってます。林ナツミさんの写真を見て撮り始めました。反原発、反TPPです。今の殺伐とした仕事をテーマにいつか書きたいなあ、と思ってます。
小説/ファンタジー

加速するリビドー

[読切]
射精した瞬間、オカズにしていた沙織本人がベットに落ちてきた。彼女に覆い被さったところで何故かAV女優森高あすかを思い出し、またも放ってしまう。すると今度は森高あすかがベットの上に落ちてきたのである。超能力を手に入れた主人公は、その能力を自由自在に扱えるようになるために鍛錬し……。
「うっ!」
 沙織の幼い顔立ちや、まだ見た事もない制服の中のあんなトコやこんなトコを空想しながらオナニーにはげみ、勢いよく発射した瞬間、なんと、その沙織本人がどすんとベットの上に落ちてきた。
 まったく不条理でアンビリバボーな出来事ではあるが、そんなコトなんかどうでもいいのだ。
「うきっー!」
 社内での地味な雰囲気からはとても想像もできない沙織のピンクのネグリジェ姿に、俺はたちまち興奮してしまった。
 したたかに放ってしまったばかりのはずなのに、もうすっかり戦闘態勢完了、波動エネルギー充填120パーセントなのだ。
 めくれあがった裾を直す余裕すらないほどに動転した沙織は、『リビドー君』を握りしめた素っ裸の俺を見つけると、「あへ!」と、一声叫ぶと、白目をむいてぶったおれてしまった。
「ひひひひひひひひひひひ」
 俺は、とりあえず笑った。
 目の前には、白い太股をがばっと広げて、ちっちゃなピンクのパンティをまる出しにした沙織がいるのだ。
 しかも微かにハミ毛までしてくれちゃっている。
 これが笑わずにいられようか。
 俺は、にたにたしながら、ベットの上の沙織に覆い被さっていった。
 ところが、『リビドー君』を揺すりつつ、沙織のパンティに指をかけた瞬間、俺は何故かAV女優森高あすかの最新作『悶絶ぐっちょりセーラー服』を思い出してしまい、不覚にも沙織のパンティの上にたっぷり放出してしまったのだ。

 どすん

 な、なんと今度はベットの横の床に白いセーラー服を着た森高あすかが落ちてきたではないか。
「あいたたたたたた」
 森高あすかは、腰をさすりながら起きあがった。
 裸の俺を見つけ、かなきり声でも上げるかと思いきや、さすが、AV女優である。堂々としている。
「なあによ、あんたっ」
 森高あすかはセーラー服からこぼれ出た乳房を揺すりつつ、俺の大量の精液でスケパン状態になってしまった沙織を芝居ががったしぐさで指さすと、テーブルの上のキャラメルコーンをつまみながら言った。
「あのね。わたしはね、撮影中なのよ。もぐもぐ。どこの女優さんか知らないけどね、もぐもぐ、ベットからおりてくれないかな? もぐもぐ」
 おつむが弱いという噂は、本当だった。
 世にも不思議なこの状況を少しも理解しちゃいないのだ。
「そうか!」
 俺は突然ひらめき、手を打った。
 俺のオナニーがふたりを呼び込んでしまったのだ。
 つまり、俺は超能力を手に入れたというワケだ。
 この愛しき右手によって射精する瞬間、俺が強く空想した人間が、時空間を越えて俺のそばにすっ飛んで来るのだ。
 大好きなオナペット、森高あすかと沙織があらわれて、両手両足を振り回し部屋中を駆け回りたいほどに大喜び中の俺だけど、少し冷静になってふたりを部屋から追い出した。
「使えるぜ……。けけけけけ……」
 俺は直属の上司、安岡力子の事を思い浮かべていた。
 実は、力子に執拗に迫られているのである。
 しかたなく、一度吉野家で一緒に牛丼を食べたら、もうすっかり夫婦気取りなのだ。牛丼をワリカンで食べただけで、もう結婚する義務があるとは、いったいどゆう恋愛観なのだ。
 次の日、電話のむこうで「今夜の約束はどうなるのよ!」と、わめく力子に具合が悪いからと告げ会社を休んだ俺は、目黒のラブホテルに飛び込み、ワンフロアーすべての部屋を借りた。誰を登場させるかわからないオナニーを、のんきに自宅で連発するわけにはいかない。
 俺は、雑誌から切り取ったグラビア写真を大量に鞄に詰め込んできた。もちろん、この素晴らしい能力を自由自在に扱えるようになるための特訓である。任意に選んだグラビアの中の女の子を、放出の瞬間に呼び出せるようにするのだ。
 最初は失敗もあった。人気アイドル歌手宮沢るるを呼び出すつもりが、宮沢元首相を呼びだしてしまい、その禿頭に俺の精液をぶちまけてしまったのだ。
 産毛が若干残る禿頭から、どろりとしたたる白い精液を掌ですくうと、くんくんとその匂いをかぎ、恍惚の世界に落ちていく猿顔の元首相は、なんとも不気味であった。
 ズボンの前をつっぱらせながら、「待ちなさい、まあ待ちなさい」と、じりじり迫ってくる元首相をすんでのところでかわして、俺は隣の部屋に飛び込んだ。
 畑田美紀子外務大臣を呼び込んだら、靖国神社参拝問題で犬猿の仲になっているとウワサの相手、大泉純二郎首相までが一緒に落ちてきた。
 白いパンツの前をしたたかに湿らせた大泉首相は、鎖のついた首輪をつけていて、その先を黒い網タイツ姿の畑田外務大臣が握っていた。
「あいや!」
 大泉首相は、おれを見つけると、鎖を激しく鳴らしながら後ろにいた女王様姿の畑田外務大臣にしがみついた。
「触らないでください! 私、あなたの事知りません!」
 畑田外務大臣は、大泉首相をハイヒールで蹴飛ばした。
「ぎゃ!」
 大泉首相は飛び上がり、尻をさすりながら、俺ににじり寄ってきた。
「これは、改革に必要なものであって、君が今想像していることなどではない! 大泉、嘘つかない!」
 インディアン的口調で迫ってくる大泉首相に、「はいはい、わかりました。まあ、ごゆっくりお楽しみください」と、手を振り、俺は次の部屋に入った。
 あたりが暗くなる頃には、俺は狙ったオナペットを自由自在に瞬間移動させる事ができるようになり、ホテルは有名人でいっぱいになってしまった。
 俺はホテルを出て、混雑した山手線に乗った。
 窓に映る俺の目の下にはくまができ、頬もこけていた。
 俺はコートのポケットの内側に作った切れ目から、『リビドー君』を握りしめ、胸ポケットからオールドミスの安岡力子の写真を取りだした。
 写真の中の力子は、三白眼で、まゆがこく、なんと髭さえうっすらと生えている。そんな力子のゴリラのような身体に興奮しなくてはいけないというのは、なかなかヘビーだ。 
 俺は、腕時計を見た。退社前に、力子は必ず……。
 ねばりけのある汗が、目の脇を流れて落ちていく。
 俺は歯を食いしばって、『リビドー君』を激しくしごいた。
「うっ!」
 ついに、俺は射精した。
 その瞬間、天井から垂れ下がった広告をぽかんと見ていた男も携帯電話を弄んでいた女も、まだ剥けていないがきもエロ驀進中のじじいも、とにかく皆が一斉に息を飲んだ。
 安岡力子が網棚に突然出現したのだ。
 両手に週刊誌を持った力子は、下半身むきだしで網棚に座っていた。
 そして、めりめりと異様な音をたてて、力子の尻からひりだされた巨大な糞が網の間から溢れ出て、下の座席でウォークマンを聞きながら身体を揺すっていた青年の金髪とさか頭に、たまらない悪臭をはなちながら落下していったのである。
 阿鼻叫喚の世界の幕開けであった。
(了)
(初出:2001年08月)
登録日:2010年06月09日 13時44分
タグ : リビドー

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