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城本朔夜
著者:城本朔夜(しろもとさくや)
自称「心のカメラマン」。被写体は、見えなくて、水のようにいつも動いているもの。究極に目指すのは、世にも美しい芸術作品。でも好きなのは、なんの変哲もない「スナップ写真」。撮ったあと、ちょっと変わっているのが撮れていたりすると、嬉しくなって、誰かとシェアしてみたくなります。
小説/ファンタジー

雪の中の探し物

[読切]
雪の中に置き忘れたお気に入りのロボット。すぐに諦めてしまうぼくが座り込むと、小さなモグラがやはり雪の中、探し物をしていた。一生懸命、根気よく探すトガリネズミのトットが探す「本当のもの」とは? 心温まる感動の児童文学。
「やあ、ひどい降りだ。吹雪いてきたよ。まいったまいった」
 父さんが、頭や肩にたくさんの雪を積もらせて帰ってきた。
 昼間はあんなにいい天気だったのに。いつの間に降ってきたんだ?
 ぼくはカーテンの中にもぐりこみ、頭を窓にくっつけて外を見てみる。細かい雪がスワースワーと、真横に降っている。時々風が、ビヨウと巻き上がる音がする。
「ホントだ、すごい雪だねぇ」
「明日は雪かきが大変だな、早起きしてやらないと」
 父さんがそう言ったので思い出した。しまった。昼間外で遊んだ、おもちゃをしまい忘れていた。
 バケツやスコップ、そり、全部出しっぱなしだ。そして大事なロボット。誕生日に買ってもらった、今、一番のお気に入りのロボットだ。庭に持ち出してそりに乗せて遊んで、そのまま置いてきてしまった。
 だって、急におしっこがしたくなって家に入ったら、ちょうどいつも見ているアニメが始まるところだったから、そのままになってしまったんだ。どうしよう。風でどこかに飛ばされたりしないかな?
「ねぇ、お母さん、おもちゃ外に置きっぱなしだ。どうしよう」
 こんなときの母さんはすごく冷たい。
「いつも言ってることでしょう。自分の責任よ。明日になったら探しなさい」
 すごく気になった。今ちょっと外に出て、見に行ってみようか? もう一度窓に顔をくっつけて、外の様子をうかがってみる。
 ビヨウッとものすごい風が雪を巻き上げている。
「ちょっと見に行ってみようかなあ?」
 その気もないのに、母さんに言ってみた。
「やめときなさい、凍えた上に、吹き飛ばされるわよ」
 そうだよなあ。ぼくは明日、探してみることにした。


 朝になると、あの大雪はもう、おさまっていた。窓からは日が差している。
「冬休みだからって、朝はちゃんと起きてちょうだい。もう九時よ」
 母さんにそう言われながら、顔を洗う。急に目が覚めて思い出した。
「あ、ロボット!」
 そう叫んでパジャマを着替え、ぼくは外に転がり出た。
 キン、と張りつめた空気がぼくの顔を刺す。大雪が降った後なのに、結構今朝は冷えこんだ。
 それにしてもすごい。隣の家の車が、ほとんど埋もれて見えなくなっている。四十センチは積もっただろうか? 昨日遊んでいた場所に行ってみる。おもちゃはすっかり雪に埋もれてどこにあるのかわからなくなっていた。
 手当たりしだいに手で雪を掘って、おもちゃを探し始めた。スコップはすぐに見つかった。そのスコップを使って、よいしょ、よいしょと雪を掘っていく。しばらくすると、青いものが顔を出しバケツが見つかった。そして、飛ばされてしまったのか、そりはとんでもない所で見つかった。そのころにはもう汗だくになっていた。後は肝心なロボットだけだ。
 だけどロボットは見つからなかった。腕は疲れたし、息がハアハアしていた。もういやだ。十五センチくらいの小さなロボットだ。だからなのか、なかなか見つからなかった。
 お腹がすいた。そういえば何も食べていなかった。一度うちに帰って出直しだ。
「ねえお母さん、ロボットが見つからない」
 ご飯を食べながらぼくは言う。
「ねえ、一緒に探して」
「自分で探しなさい。あんた、一緒に探してと言って、一緒に探した試しがないじゃない。なんか別のことやり始めて、結局いつもお母さんが探すはめになるんだから。それにお母さん、おうちのことで忙しいのよ」
 母さんはきっぱりと言った。
「だって、すごい雪なんだよ。一人じゃ見つかりっこないよ。ねえお願い」
 ぼくは、なおも母さんに食いさがる。
「そんなにイヤなら、探すのをやめたらいいでしょう。春になればどこかから出てくるわよ」
 なんだよ、母さんのけちんぼ。しかたがない。母さんに頼むのを諦めて、ぼくはまた外へ出た。
 一人でロボットを探し始めた。荒っぽい手つきでスコップを雪に差し、雪をあたりかまわずあちこちへ散らばせていった。
 けれど、ロボットはなかなか見つからなかった。もう三十分も掘っているのに見つからない。
 ぼくはとうとうスコップを投げ出してしまった。もういやだ。こんなたくさんの雪の中から、あの小さいロボットを見つけ出すのなんて無理だ。その場にズデンと座りこむと雪の壁にもたれて、目をつぶった。目の裏に、いろんな形の光の残像が浮かぶ。
「よいしょ、よいしょ」
 なんだ? とても小さい声が聞こえる。ぼくは自分の周りをぐるりと見わたして、声の主を探した。
 気のせいか?
「よいしょ、よいしょ」
 まただ。もう一度、あたりを見回してみる。と、自分が座っているところから二、三歩離れたところに、茶色い小さな生き物がいるのに気がついた。近づいてよく見るとその生き物は、モグラみたいな顔をしている。おまけに赤い毛糸の帽子までかぶっている。
前足の爪が伸びて、いかにも丈夫そうだ。その前足を使って雪を掘っているのだ。
「よいしょ、よいしょ」
 人間の言葉を話している。ぼくの大きな影がモグラの上にかぶさった。そのとたんに、モグラはびくっとした。
「そ、そこにいるのは誰ですか?」
 周りを見わたすが、ここにいるのはぼくしかいない。
 ぼくに話しかけているのか? そう思って、おそるおそる返事をした。
「ぼくだよ、に、人間の子供、あきら」
「ああ」
 モグラは納得したようにうなずいた。
「そうでしたか。ここの家の子供さんでしたよね」
「何で知っているの?」
 小さいモグラはそれには答えないでこう言った。
「このたびはお庭にお邪魔させていただいて、どうもすみません。わたしはトガリネズミのトットといいます」
「ここで何をしてるの?」
「探し物です」
 探し物? そう聞いてぼくもこう言った。
「奇遇だね。ぼくもだよ。で何を探してるの?」
「雪です」
「雪って、雪ならここに、腐るほどあるじゃないか」
「ただの雪じゃないのです」
「ただの雪じゃないって、じゃあ、どんな雪?」
「そ、それは……」
 トットは声をひそめてささやいた。
「だれにも言わないって約束してくれますか?」
「うん。誰にも言わない」
 ぼくは安うけ合いをした。
「約束ですよ。それじゃあ言いますけど、魔法の雪なのです。その雪を集めると欲しい物が手に入るのです」
「欲しい物が?」
 ぼくはびっくりした。だけどうれしくなった。
 そんな雪があるなら、ぼくも見つけてお願いしたいことが山ほどある。ロボットのシリーズ全部のことが頭に浮かぶ。
「へえ、すごいな、それってどんなのなの?」
「五角形。そして、金色をしているんだそうです」
 金色。それはちょっと目立ちそうだ。
「それは、どこかにまとめて落ちてるのかな?」
「いいえ、ほら、雪ってみんな六角形をしているでしょう」
「ああそういえば」
 いつもは気にしてないけど、雪ってそんな形してたっけ。ぼくは試しにその辺の雪をちょっとすくって目をこらしてみる。いろんな模様の六角形だ。ひとつとして同じ形はないように見えた。雪はぼくの手の上でスウッと融けた。
「そういう風に、その雪の結晶は五角形なのです。それを一個一個集めるのです。そしてその雪を使って、欲しい物の形に固めるのです。大きさもみんなそのとおりにね」
 結晶を一個一個集めるのか。一面にどっかりと積もった雪を見てぼくは思った。なんだか、途方もない話になってきた。
「それっていっぱいあるものなの?」
「それがなかなか見つからないんです。今年わたしが見つけたのは、まだ十個。そうですね、このお庭全部の雪を探しても、わたしの欲しい物の形を作ることができるかどうか」
 ぼくはトットの体を見て思った。
 トットが欲しい物って、その体で使う物なんだろうから、よっぽど小さい物だろう。それでも足りないかもしれないなんて。それならぼくの欲しい物なんて到底作れるはずがなかった。そう思ったら、急にどうでもいいものに思えてきた。
「ねえ、トットの欲しい物って何?」
「そ、それは……秘密です」
 ちょっと考えてから、トットは頭を振った。
 教えてくれないんだ。つまらない。そしてぼくは思った。
 いくら欲しい物があるからって、この小さい体で、一個一個、雪の結晶を調べていくだなんて、このトガリネズミはバカだ。そしてこの執念。よっぽどの欲張りネズミにちがいない。せいぜい頑張ってくれ。
「いっけない。そんなことでわたし、忙しいので失礼します。しばらくお宅のお庭、探させてもらいますけどよろしいでしょうか?」
「あ、うん」
 その後ぼくは十分くらい、自分のロボットを探してみたが、やっぱり見つからなかった。疲れたし、今日は探すのをあきらめた。
 次の日からも、毎日、一応ロボット探しをするものの、見つからないのですぐにいやになった。何日かすると、ぼくはロボットのことなんか、もうどうでもよくなっていた。母さんが言うように春になれば、出てくるだろう。
「誕生日のときはあんなに騒いで欲しがったのに、やっぱりたいしたことなかったのね」とお母さんが皮肉を言った。
「うるさいな」
 ぼくは顔をそむけたまま、ひとり言のようにつぶやいた。


 トガリネズミのトットは、あれから毎日、飽きもせず、魔法の雪の結晶を探しているようだった。見ているとなんだかしゃくにさわった。
 あの欲張りネズミめ、一度雪をぶっかけてやろうか。
 知らん顔して後ろを向きながら、一度は本当にそうしてしまったこともあった。
 いけすかないなら、ほっとけばいい。頭の中ではわかってるのに、なぜか、それができない。
 雪の日も、晴れの日も、風が強い日も、トットは毎日、庭で雪にまみれて頑張っていた。ぼくは家の中から、それを見ていた。遠くから見ると、赤い帽子がナナカマドの実のように鮮やかに見えた。
 そんなある日、うちでひまつぶしに本をめくっていて思いついた。あのネズミ、トガリネズミとかいったっけ、ぼくは動物図鑑を調べてみた。あった、あった。トガリネズミ。ぼくは説明文を読んだ。
「トガリネズミは、土にもぐるモグラの仲間で、ほとんど目が見えません」
 え、それじゃあ、あいつ、どうやって、魔法の雪を他の雪と区別してるんだ? 結晶の形? 一個一個手で調べて? そんなバカな。ここの庭全部調べる前に春が来ちゃうよ。ホント、バカネズミだな。そんなにまでして、あいつにどんな欲しい物があるって言うのだろう。
 その日は、この間と同じ吹雪だった。窓から見える庭は白く霞んで、雪が煙のように始終舞い上がる。トットは今ごろ何してるんだろう。こんな日くらいは、巣穴で休んでいるだろうか。それともやっぱり探し続けてるのだろうか? ぼくは、トットのことが気になって気になって、仕方がなかった。


 次の日は、とてもいい天気になった。その分、冷えこみは格別だ。この日の最低気温は、十八度。もちろんマイナス。それでも一月にしたら、まあまあといったところか。この時期には、マイナス二十度を超える日も珍しくはない。だけどこんなに冷え込む日には、風がまったくないのが特徴で、外に出ても、思うほどには寒さを感じない。
 トットのことが気になって庭に出てみると、そこにはやっぱりトットがいた。相変わらず、赤い帽子をかぶっている。この間と同じように魔法の雪を探しているようだった。
「そこにいるのは、あきらくんですか?」
 やっぱりだ。こっちを向いているのにぼくだってことがはっきりとわからない。トットの目は見えないんだ。
「うん、ぼくだよ。ねえトット。君の目はもしかして見えないの?」
 よせばいいのに失礼なことを言ってしまった。言ったとたん、後悔した。
「ああそんなこと」
 意外な答えが返ってきた。
「生まれつきですから。なんとも思ってません。その代わりに鼻や手先の感覚はすごいんですよ」
「だけど、手先で一つ一つ、雪の形を調べなくちゃいけないんじゃ、仕事がなかなか進まないだろう?」
「そうなんですか? 見えるってことはそんなに便利なんですか? いえね、見えたことがないから、よくわからないの」
 そういうものなのか? そう言われるとよくわからなくなってくる。
「そういえば、昨日は、すごい吹雪だっただろう? 昨日も魔法の雪を探してたの?」
 とぼくは話題を変えた。
「そうですね。だから昨日は雪の中にトンネルを掘って、その中で作業してました。だけど古い雪はだめです。すっかり結晶が崩れてしまって」
 そうだったんだ、トットも色々考えながらやってるんだな。
「それにしても、あきら君の庭はすごいですね。あたし気に入りました」
「え? 何が?」
「あれから魔法の雪がずいぶん見つかったんです。この分でいけば、欲しい物の形にできるかも」
「え、そうなの?」
「それから、重くて引き出せなかったんだけど、なんか変わったものを見つけました。もしかしてあきら君がこの間探してたものかな? と思って印をつけておいたんだけど」
「ホント? どこなのそれ」
「こっちです」
 トットについていくとそこには、木の枝が刺してあった。
「ここです。掘ってみてください」
 ぼくはトットが指し示すところを掘ってみた。すると、あった。ぼくのロボットだ。こんなところにあったんだ。ぼくが探していたのとは全く別の所にあった。結構奥まで入りこんでいたんだ。ぼくは、正直恐れ入った。こんな小さい体をしているのに、ぼくのロボットを見つけちゃうなんて。バカネズミなんて言って悪いことをした。
「ど、どうもありがとう。もう、春まで出てこないと諦めてたんだ」
「そうですか、じゃあよかった」
 ぼくはすっかり気をよくしてしまった。あんなにけちょんけちょんに言っていたのに、現金なものだ。いつの間にか、何かトットの手伝いをしてあげたい気分になっていた。
「前にもきいたけど、いったいトットの欲しい物って何なの?」
 ロボットを見つけてくれたお礼に、くだらないものでなければちょっと手伝ってやろう。ぼくはそう思って、きいた。
 と、近くで、「キュウ」という音がした。
 思うやいなや、トットがきびすを返して走り出した。庭の隅のほうに穴があった。トットはそこに向かった。けれどぼくのほうが体は断然大きいので、トットよりも先にその声の主のもとに着いた。
 トットの巣穴らしい穴の前には何か茶色くて丸いものが動いている。毛虫? 何だろう。ぼくは目をこらした。が、よく見る前に、トットはその茶色い毛玉を巣の中に押しこめてしまった。そうしてしばらくしてまた、外に出てきた。
「トット、あれは何?」
 ぼくは、きいていいものかどうか迷ったけど言ってみた。
「巣穴です。ここが気に入ったもので、ついこの間、ここに引越ししてきたんです。いけなかったですか?」
「いや、そうじゃなくて、丸くて茶色いもの」
「いいじゃないですか。あきらくんには関係のないことです」
 おだやかでひとなつっこい、トットの表情がすっと変わった。これ以上、一歩も踏みこめない、きっぱりとした態度が、ぼくを圧倒する。
「ふうん」
 ぼくは決まり悪そうに、その辺の雪玉を足でもてあそぶ。
「ごめんなさい。でも、今は聞かないで」
 トットの表情はやわらぎ、慌てたように、トットがぼくとの間に生まれた緊張した空気をかきまわした。
「ま、いいや。君とは知り合ったばかりだしね」
 ぼくは気を取り直すとこう言った。
「ロボットを見つけてくれたお礼に、ぼくもちょっと手伝うよ」


 一通り、探し方のコツなんかを教えてもらうと、ぼくはトットの隣にならんで、魔法の雪の結晶探しにとりかかった。
 作業は思ったより大変だった。大きいスコップでは見のがしてしまうので、手で雪を少しずつかきわけながら、金色に光るものを探すのだ。体を縮こまらせてじっとしたままなので、寒くて仕方なかった。どんなに疲れても、スコップでザクザクやってたほうが、百倍楽だ。
「トットはよくやるなあ。寒くて仕方ないよ」
 思わず弱音を吐いてしまう。
「あきら君にとっては、結晶はあまりにも小さいから。無理もないです」
 トットはぼくにとてもやさしい。
 最初の勢いはよかったがやっぱりぼくは寒くて寒くて仕方がなかった。金色の結晶はちっとも見つからないし、早くもぼくはいやになってきていた。
 ぼくはいつだってそうなんだ。何一つとして、長続きしたためしがない。やっぱり謝って、ロボットのお礼を言って、激励をして、それで終わりにしようかな。そう思っていたとき、トットが声をあげた。
「あった。ありました。見てください。これ!」
 金色に光る雪の結晶だ。五角形でその角一つ一つが伸びていて、ギザギザがついている。
「わあ! きれいだなあ」
 ぼくは思わず手に取ろうと手を伸ばす。
「触らないで!」
 トットは、いつもの調子とはまったくちがう、厳しい声で、ぼくを制止した。
「あきら君の温かい手で触ったら、結晶が融けてしまいます。もし魔法の雪の結晶を見つけたら、私に教えてください」
 そう言うと、トットはトットが考案した氷でできた特別のスプーンですくって、これまたトットが作った氷のそりの上に乗せた。これで金庫まで運ぶのだそうだ。
 金庫もまたトットが作った氷の部屋らしい。ぼくは体が大きすぎるので、雪のトンネルの先にある氷の金庫を見ることはできなかった。
 この一件で、ぼくは作業を辞退する機会を失ってしまった。
 作業をしながらなにげなく、ぼくはたずねた。
「ねえトット、どうしてトットはこんなに大変な仕事、毎日できるの? ぼくのあのロボット、すごく大切なものだったのに、雪の中を探すのが大変で、イヤになってやめちゃったんだ。ぼくっていつもそうなんだ。大変なことにぶつかると簡単に諦める。そんな自分いやなんだ。……トットにはわからないかな? いつも一生懸命だもんね」
 ぼくはひとり言のようにつぶやいた。
「あきら君だけじゃないと思います。わたしだって、毎朝大変なんですよ。疲れがたまっちゃってて。でももし、あきら君と私が違うとすれば、本当のものに出会っていない、それだけだと思います」
 本当のものって何だ? そうききたかったけど、なぜだか、それだけは教えてくれない気がして、ぼくは口をつぐんだ。
 結局、ぼくはその日、日が暮れるまで、トットの手伝いをした。
 玄関に向かって歩き始めたぼくに、トットが言った。
「あの、今日はどうもありがとうございました。今まで一人で魔法の雪を探してたんですけど、……あの、なんていったらいいか……二人で探すのってとっても心強かったです。とってもうれしかった。寒くて大変な思いさせちゃってごめんなさい。明日からはまた一人で頑張りますから」
 ポッと、あったかい気持ちが生まれた。手伝ってよかったな。ぼくは素直にそう思った。トットに対してぼくはただうなずくと、じゃあね、と言って家に入った。


 その晩、ベッドに入って眠るまでの間、ぼくは考えていた。今までのぼくについて。
 習ったおけいこごと数知れず。
 幼稚園の頃に音楽教室に通ったのが初めてだ。姉ちゃんが習っていたので、ぼくもやるとごねたらしい。一年でやめた。両手で弾くことにつまずいたからだ。
 小学校に入ると、そのころ一番の仲良しだったダイスケが習っていたので、空手を始めた。先生がおっかなくていつも泣かされた。だからやめた。
 習字も、水泳も、ボーイスカウトもみんな初めは面白かったけど、いつもどこかで大変だったり、つまんなかったりってことにぶち当たる。そのときにぼくは、いつも諦めて逃げてきた。
 やめるときは深く考えない。けれどこうして振り返ると、ぼくの足あとはどれも、ぷっつりと途切れていて、これがぼくだ、といえるものは何も残っていない。そして今回のロボットのこと……。
 ぼくはふとんの中で大きなため息をついた。
 母さんに言われてることももっともなんだ。だけど、どうしたら根気強くなれるのかわからない。
 トットが言っていたことが気になっていた。「本当のもの」って一体なんだろう? 


 それから何日かがたった。トットはあいかわらず、魔法の結晶探しを続けているようだった。トットのことは気になった。けれど手伝う気には、なれなかった。大変だし、退屈な仕事だからだ。かといって、トットが仕事をしている横で、お気楽にそり遊びもできない。ぼくは困っていた。その日もぼくは、そりをかかえて、トットからは見えないで遊べる場所を探して、庭の中を歩いていた。
 と、目の前に不思議なものを見つけて、ぼくは目をこらした。
「あっ」
 短くさけんで、思い当たった。あのときの毛玉だ。トットが必死に隠そうとしていたあの毛玉。
 茶色い毛玉は、全体をくねらせるようにして動いている。ぼくはその場にしゃがみこみ、おそるおそる、その物体に顔を寄せる。動いてるってことは、生き物にちがいない。さわっても大丈夫かな? 手袋をはめた上から、それをそっとすくいあげてみる。ぼくはもう一度、あっ、という声を出した。
 鼻がある。トットにそっくりの細長い鼻だ。けれど、特徴的なするどい前足も、後ろ足も見当たらない。けれどこれはまぎれもなくトガリネズミだ。トットよりも小さいところから見て、まだ子供なのだろう。
 ぼくはどうしたものか考えた。こうやって手に持ったまま、トットのところへ持って行こうか? トットはどんな顔をするだろうか? それとも、トットの巣穴にそっと返しておこうか。
 ぼくは、巣穴に返すことを選んで静かに歩き出した。その間も、小さなトガリネズミはぼくの手の中でもぞもぞと動いている。
 巣穴のそばへ行くと、トットはさっきとは様子がちがっていた。ひどく慌てた様子で、巣の周りをちょこまかと走り回っている。ぼくは、ピンときた。
「トット?」
 思わずぼくが声をかけると、トットは
「あきらくん? あの、えーと、わたし、ちょっと大変なことになってまして、今はちょっと……」
 明らかに平静を失っている。
「これのこと?」
 そっと返しておくつもりだったけど、そうもいかない。
 トットはぼくの両手の中にいるものに気づくと、驚いた顔をした。が、すぐに安堵した表情に変わり、こう言った。
「あきら君、ありがとう。……この子はわたしの子供、チッチです」
 ぼくは、トットの目の前に、チッチを降ろしてやった。
「この子、時々家出するんです」
 トットは巣穴の中に、チッチを押し込んでから、観念したかのように、すべてを話し始めた。
「生まれつき、あの子は手も足もないんです。それで、体をくねらせて動くんです。あきら君も見たでしょう? 穴も掘れないし、えさも自分でとれない……一人では生きられない。だからずうっと私がめんどうを見てやるしかないんです」
「でも、なんで家出なんか」
 トットは涙ぐんでしまってすぐに返事ができないようだ。しばらく押し黙ってから、やっと言葉が出てきた。
「自分がめいわくな子供だと思っているんです。そうじゃないって言って聞かせるのに。それがかわいそうで」
 ここまで聞いてぼくはやっと理解した。あんなにまでしてトットが欲しい物、それはひとつしかなかった。わが子の手足なのだ。
 ショックを受けていた。そしてなんだかすごく恥ずかしくなった。トットが欲しがっているものが、ぼくの想像も及ばないものだったからだ。そして、魔法の雪の話を聞いたとき、ぼくは何を思い浮かべたか。
 穴があったら入りたい。今ここで本当に雪を掘って、その中に隠れてしまいたい、そんな気持ちだ。
 何か言わなくちゃ、と焦るが、ぼくは言葉を失ったままだった。
「ぼく今から、手伝うよ」
 そう言うのが精一杯で、ぼくはただ雪を掘り始めた。
「あきら君もやさしいから。わたしが、欲しい物のこと話すと、きっとこうなると思って、言わなかったんですよ」
 トットはすごく申し訳なさそうに言った。ぼくのこと、ひどくかいかぶっている。
 ぼくは、とにかく雪をほった。自分の恥ずかしさをうめあわせるために。本当に自分が入る穴を掘っているのだと思うくらい、ぼくは、黙々と雪を掘り続けた。
 そのうちに、トットが言っていた「本当のもの」ってチッチのことなんだと、ぼくは気づいた。


「何ぼんやりとしてるの? 洗い物片付かないから、早く食べちゃってよ」
 ぼんやりと考えごとをしていることに気づき、ぼくは、止まっていた箸をにわかに動かす。姉ちゃんは、もうとっくに自分の部屋に引き上げていたし、父さんは夕飯がいらないほど、今日は帰りが遅い。
 蛇口から流れる水の音がやんだ。ぼくは母さんを見た。
「ねえ、お母さん」
 まるで、そのときを見はからったかのように、口を開いた。
「なに?」
 母さんは、エプロンで手をふきながら、カウンターから食卓の方へ出てくる。
「もしもぼくに、手や足がなかったらどうする?」
 母さんは、目を丸くした。そして大げさな笑顔をつくった。
「何をいきなり?」
 けれどぼくの目は真剣だった。それがわかったのか、母さんも口元をひきしめた。
「そうね……あんたがお腹の中にいて、まだ生まれる前には、ちょっと心配したこともあったけど……今急に言われても、想像つかないわねえ。だけど、たとえそうであっても、あきらはあきらでしょうね。変わらず大切な子供だと思うけど」
「もしも、手や足が生える魔法があったら?」
 母さんは、どうして今日は、そんな突拍子もないことを言いだすのか、とでも言いたそうなまなざしでぼくを見た。
「どんなことをしてでも手に入れる?」
「……たぶんね」
 母さんは、いきなりのことで少し照れているのか、ぶっきらぼうにそう言った。けど、もしものときには、母さんは本当に魔法を手に入れるだろう。何だか、あたたかい気持ちが、ぼくに流れた。
「ぼくにもできるかな?」
「え?」
 ぼくが、もし大人になって子供ができて、それでその子供に手足がなかったら、どんなことをしても手に入れようとできるだろうか?
 そう言おうと思った。けれど何だか、そこまでのことは母さんには言えなかった。
「ううん、なんでもない……ごちそうさま」
 いすを後ろに引き立ち上がると、ぼくは居間を出た。
「ああ、もう! 食器、下げていってよね!」
 扉越しに母さんの声が追いかけてきた。ぼくはそのまま、階段を上がった。
 親にとっての子供。子供のぼくには、それがどれほどのものなのか全然わからない。だけど、それはすごく大きいもののような気がして、今のぼくには到底、トットの「本当のもの」にかなうものは、見つけられそうになかった。
 だけど、トットの「本当のもの」はぼくの心まで動かそうとしている。その気持ちはまだほんの小指の先みたいに小さいけれど、トットの役に立ちたいという気持ちが、いつの間にか、ぼくの中に生まれていた。それは単なる、手足のないチッチへの同情に過ぎないのかもしれない。
 それでも、ぼくの中の何かが変わる、そんな予感があった。それをつかみたい、とそのときぼくは、確かに思った。


 次の日の朝になった。温かいふとんの中で、ぼくは戦っていた。
 トットの手伝いをしようかしまいか。
 体は外に行きたくないって言っている。トットもあえて手伝ってほしいとは言っていなかった。それに、ぼくが手伝ったところでなんの役に立つのか。この間もひとつとして結晶は見つけられなかったじゃないか。やめとけやめとけ。寒いだけ損するのはおまえだ。
 ぼくの四分の三が、外へ行くことに反対していた。だけど、もし今このままトットの手伝いをやめてしまったら、ぼくは大事なものをなくしてしまう。昨日、ぼくの中にやっと芽生えた小さな気持ちだ。その四分の一の思いがふとんの中から、ぼくを引きずり出した。
 いったんふとんを出てしまえば、あとは楽だった。防寒を完璧にして、ぼくはトットのもとへ急いだ。トットはもうすでに、庭に出て作業をしていた。
「ぼく、やっぱり手伝うから」とだけ言うと、ぼくはトットのとなりで作業をはじめた。
「あきらくん、いいんですか? あきらくんには、何の関わりもないことなのに。やっぱりあきら君はやさしいんですね」
 トットがそう言った。そんなんじゃない、ぼくは自分のために何かを探しているんだ。
 しばらく、ぼくたちは無言で作業を続けた。なかなか金色の結晶は見つからない。やっぱりぼくはちょっと疲れてきた。その様子が伝わったのかトットが言った。
「わたしは、ちょっと疲れたなーっていうときは、自分にこう言ってあげます。『あと十回だけこの腕をかいてみよう。そしたら今日はおしまいにしよう』そしてそれができたときには、もう一回自分に聞いてみるんです。『ほらできた。あともう一回だけ同じことやってみる?』てね。そうやって続けていくと、案外たくさんの時間が経っているものです。はじめから大きな目標を見ちゃだめなんです」
 ぼくは、へえ、と感心した。そう言われてやってみると、本当にあれこれと大変なことばかり考えなくてもすむような気がした。トットが教えてくれたコツにしたがって、その日は何とか、最後までトットの手伝いができた。ぼくは少しうれしかった。
 トットの助言どおり、ぼくは、自分に小さな目標を立てることにした。とりあえず、自分の力で、金色に光る魔法の結晶を見つけられるまで、トットの仕事を手伝おう。


 まもなく冬休みが終わり、学校が始まったが、ぼくは毎日トットの探し物の手伝いをした。
 ぼくは、ぼくのためにトットを手伝った。一日でも手伝うのをやめたら、そのときにパリンと割れてしまう薄氷みたいな何かを探すために。
 はじめのうちはトットの方が雪をさばくのは早かった。けれど一週間もすると、ぼくもトットに負けないくらい手ぎわがよくなっていた。
 はじめに立てた目標はいまだ達成できていなかった。ぼくは焦った。目標は高すぎたんだろうか? せめて一個ぐらい、と思うのだが、やっぱりトットにくらべると、雪のさばきかたが雑なのかもしれない。


 そうして、トットの手伝いを始めてから二週間が経っていた。トットが次々見つけるのに、ぼくはひとつも見つけることができないで、ぼくは完全にくさっていた。自分が毎日やってることの意味がないように思えて、手伝いに行く身支度をしているときがつらかった。
 今日もまた意味も無い、雪堀りの作業か……
 放課後、家に帰るぼくの足取りはいつもより増して重かった。校門にさしかかった、そこへ、クラスメイトの克也がぼくに声をかけてきたのだ。
「新しいゲームソフトを買ってもらったんだ。うちに来ないか?」
 ぼくの目が輝いた。克也はぼくの目を見て当然、答えは「イエス」だと思ったらしい。
 返事もしていないのに、ぼくの前に立って、ぼくの家とはまったく反対側にある自分の家へ向かって歩き始めた。
 どうしよう、克也のことだ、きっと最近しきりにテレビのコマーシャルでやってるあのソフトを買ってもらったに違いない。ぼくもやってみたいなぁ……。
 一日ぐらい、手伝わなくたって、トットは何にも言わない。どうせぼくはまだ一個も見つけてないんだし、初めから役になんか立っちゃいないんだ。ぼくの足は、自然と克也の後をついていく。その一方で、小さな声がぼくを呼び止めていた。
 いいのか? 本当にいいのか? 
 ひとつ角を曲がるたび、その声は、だんだん小さくなっていく。
 いいのか? いいのか? 
 そして克也の家の中に入ったとき、最後のあきらめの一言が頭にひびいた。
 やっぱりおまえは、いつもそうだな。
 克也は、ほかにも何人か誘っていたようで、克也の家にはすでに涼太と信二が座って、克也が来るのを待っていた。
「ゴメン、ゴメン」
 克也が慌てて二人のもとへ行く。ぼくも靴を脱いで克也の後に続いた。克也はテレビゲームのスイッチを入れると、みんなにゲームのやり方を説明しだした。
「じゃあ、まず、オレがデモでやってみるね」
 克也がコントローラーを握ると、他の二人は画面にくぎづけになった。ぼくもすでにゲームに心が奪われて、トットのことなど、彼方へと忘れてしまっていた。
 しばらくするとコントローラーは涼太の手に、それからまたしばらくすると今度は信二の手に渡り、信二は慣れない手つきでゲームを進めていた。
「まだ初めのほうだけど、ここは結構むずかしいんだ」
 克也がアドバイスする。見ると、主人公がトンカチを手に持って土の中から現れるモグラをたたきながらダンジョンを進んでいく。時々金色のモグラが現れて、それをやっつけるとレアアイテムが出てくるらしい。
 何頭ものモグラが、トンカチにたたかれて消えていく。おまけにモグラには大人モグラと子供モグラの二種類がいて、動くスピードが違うらしい。ぼくは、トットたちのことを思い出し、いい気持ちがしなかった。画面のモグラがトットに見えてくる。トットは、たたかれるたび、「キュウ」と悲しい音を立てた。
「ゴメン、オレやっぱ用事、思い出した」
 ぼくは急に立ち上がった。ぼくの言葉が聞こえているのか、いないのか、
「ああ? ああ」
 と生返事をして、依然画面に吸い込まれている三人に、あいさつもしないで飛び出した。
 ぼくは走った。途中の道が、氷でテカテカになっていたので、何度も転びそうになった。冷たい空気が一気にのどに入って、ぜえぜえした。


 家に着くと、一目散に二階へかけ上がった。部屋に入り、一度スキーウエアを脱いでからさらにセーターを一枚かぶり、首元にマフラーを巻いた。走ってきたせいで、かなり暑い。でも、すぐに寒くなるのはわかっていた。
 その上からスキーウエアを着ているところへ、母さんが来た。ぼくを見るなり、
「あんた毎日、庭でロボット探してるの? まだ見つかんないのね。あんたにしては根気続くじゃない」と、珍しく誉めてくれたが、ぼくは説明するのがめんどうくさかったので、「そう?」とだけ返事をして外に出た。
 外に出ると、昨日の続きの場所で、トットが目をキラキラさせながら(目はほとんどないけれど、ぼくにはそういう風に思えた)ぼくをむかえてくれた。
「今日は学校、終わるの少しおそかったんですね。」
 少しどころじゃない。もうすっかり、日が暮れかかってるじゃないか。それなのに、ぼくのことをみじんも疑っていないのだ。ぼくは後ろめたかった。
「うん、まあ」
 ぼくはあいまいに、言葉をにごして、作業にとりかかった。トットもぼくの隣で黙って作業を再開した。
 黙っているのはいつものことなのに、ぼくには永遠の沈黙のように思われた。ぼくはこの沈黙に耐えられなかった。
「ねえ、トット。ぼく本当は、今日友達の家に行ったんだ。つい遊びたくなっちゃって。もう少しでトットの手伝い、しないところだったんだ」
 胸につかえていたものを吐きだした。
「そうですか」
 トットは動じない。
「怒らないの?」
「怒るわけ、ないじゃないですか。もともとこれは私だけの問題です。あきら君も、自分のやりたいことをやればいいに決まってます」
 それはそうかもしれない。それにしても、本当にやさしくておだやかな口調だ。
「ぼく、だけど、なぜかこれだけはやりとげなきゃいけない気がして……」
 自分の気持ちがうまく言い表せない。言葉を探して四苦八苦していると、急にトットがこう言った。
「……わかりました。じゃあ、これから毎日、私の手伝いをしてください。約束ですよ。わたし、あきら君に期待していますから」
 何なんだろう? さっきまでのえんりょがちなトットとは違う。言ってることも百八十度度違うじゃないか。
「う、うんわかった。ぼくがんばるから」
 ぼくはそんなトットにとまどいながらも、約束に応じることにした。
 そしてぼくらは、作業にもどった。
 ぼくはプラスチックのプリンのカップに少し雪をすくって、金色に光るものはないか調べていた。いろんな方法を試してみて、結局この方法に落ち着いた。トットのアドバイスに従って、なるべく上の、まだ結晶がつぶれていないようなところを中心に探している。もうそろそろ、五時になるころだろう。あたりは、雪だけを白く残して、ぐんじょう色に染まりつつあった。夕日が山陰に隠れると、急に冷えこんできた。
 あと一回これですくったら終わりにしよう。自然にたれてくる鼻水をすすって、プリンのカップに新しい雪をすくった、そのときだった。
 あれ? 次の瞬間、ぼくは悟った。
「あった!」
 ついに見つけた。金色の結晶だ。キラキラと輝いている。 
 短く叫んだきり、ぼくは言葉が出なかった。プリンのカップの中につかまえた金色の粒に見とれている。ぼくの声を聞きつけて、トットが走ってくる。
「とうとう、やりましたね!」
「うん!」
 ぼくは力を込めてうなずいた。トットがうれしそうに微笑んでいる。
「もし、良ければなんだけど……」
 金の結晶にひとしきり見入ってから、ぼくはおずおずと口を開いた。
「しばらくぼくが持っていてもいいかな? このまま家の冷凍庫に入れておきたいんだ。もちろん、願いをかなえるときは、トットに返すよ。だめかな?」
「いいですよ。いいに決まってるじゃないですか」
 トットは二つ返事でオーケーしてくれた。
 ぼくはさっそく、家の土間においてある、大型の食品保存用冷凍庫のところへ駆けこんだ。これなら大丈夫だ。普通のとは違って強力フリーザーだから、結晶がくずれてしまうことはない。何重にも袋をかけて、「あきらの宝物! 絶対さわるな!」という紙を張りつけた。カップが逆さまにならないように、丁寧にしまった。
 あの時、克也の家から帰って来て本当によかった。手を動かしながらぼくは思った。ぼくの中にぼくを導いてくれた今までとは違うぼくが確かにいる。まだ小さくて、すぐにこわれてしまいそうだけど、いつの間にか住みついてくれていたんだ。
 ぼくは、両手を重ねるようにしてにぎり、心臓のところにおいた。小さな自信みたいなものが、じんわりとぼくの心に広がった。


 それからは、毎日、迷うことなく、放課後はまっすぐに家に帰ることができた。当然の仕事があるように、ぼくはランドセルを置くと庭に出た。庭に出ると、
「ありがとう。今日も来てくれたんですね」
 とトットがいつもぼくを迎えてくれる。ぼくにはそれがうれしかった。
 ぼくはトットにひとつの提案していた。それはチッチのことだった。
「暗い穴の中で、一人でいるから家出なんか考えるんだよ。それなら、天気のいい日は外でぼくがいっしょに遊んでやるよ」
 やっぱりぼくには、同じことばかりは、耐えられない。本当を言えば反則になるのかもしれないけど、チッチと遊べば、気分転換になると思ったのだ。
 ぼくとチッチは、気が合った。はじめは、目が見えなくて手足が使えないチッチと何をして遊べばいいのか見当もつかなかったけれど、いろいろ試しているうちに、チッチは歌を歌ったり、そりに乗ったりするのが好きだということがわかった。ぼくも、歌やそりが好きだった。
 三日もしないうちにぼくらは仲良しになった。自殺ばかり考えるじめじめしたやつなのかと思えば、そんなことはなかった。
「おにいちゃん、ぼくと競争しようよ」
 と言われたときには面食らった。思わず、どうやって? ときいたら、
「ここの坂で、お兄ちゃんはそりに乗って、ぼくは転がって。どっちが遠くまで行かれるか、ね、いいでしょ?」
 見れば、この付近の家々が除雪して、うずたかく積み上げられた結構急な斜面だ。
 ぼくは受けて立った。チッチは猛然としたスピードで転がった。身体が壊れてしまうのではないかと思って心配した。だけど、ピンピンしていた。
 結果、ぼくが数センチ遠くまで滑って勝ってしまった。チッチはものすごく、悔しそうに、
「もう一回。ね、三回勝負にしよう!」
 と食い下がった。身体が心配でぼくはどうしようかと思ったけど、結局ぼくらはチッチが勝つまで何度もすべった。もちろん真剣勝負だ。手をゆるめたら、それこそチッチがかわいそうだ。
 チッチはもぞもぞ動いて、一生懸命ぼくについてくる。こんなこと言ったらチッチは気を悪くするかもしれないけど、ぼくはチッチが動く姿がかわいらしくて、とても好きだった。
 チッチと仲良くなった分、本来の仕事ははかどらなかった。だけど、トットは息子が明るくなったのでうれしそうだった。


 それに気づいたのは、もう日も暮れかかったし急に風が出てきたので、今日はもうおしまいにして、家に入りかけようとしていたときだった。トットが巣穴に入ったかと思うと、あわてて転がり出てきた。
「チッチがいないんです!」
「え、何だって?」
 ぼくもあわてて、トットの巣穴にかけよった。さっきまで、ぼくのそばで、もぞもぞやっていたのは覚えている。あっちへ行ったから、てっきり寒くなって巣に入ったんだとばかり思っていた。
「あの体だからそんなに遠くヘは行けないと思うんですけど。どこへ行ったんだろう」
トットはいつもの冷静さを失っている。
「とにかく捜そう」
 あたりは雪の白一色だから、あの茶色い毛虫みたいな姿は、目立つはずだ。捜しにくいということはない。けれど、もう日は暮れかかっていた。目の見えないトットには関係のないことだが、ぼくには重要なことだった。家に戻って懐中電灯をとってくると、ぼくはトットとは別の方向を捜し始めた。トットが泣きべそをかいて、鼻をすする音が聞こえる。トットはもう半狂乱だ。
 日が落ちて、急に寒さが増してくる。北風が強くなってきた。ブオッと雪を巻き上げて、一瞬、あたりが白くかすんだ。早く見つけないと、チッチは凍え死んでしまう。けれど、なかなかその姿を見つけることはできなかった。
 一時間ほども捜したころだっただろうか。まさかね、と思いながらも、ぼくの家の敷地の反対側を走っている道路へ出てみた。ここは車通りが案外激しいので、時々怖い思いをする。道へ出たとたん、目の前を結構なスピードで車が走りぬけていく。
 ぺちゃんこにされた雪が道にぴっちりと張り付いて、白くてらてらと光っている。その道のあらゆるところに視線を走らせ、茶色い違和感がないかと探っていく。
 道の真ん中に茶色いもの。あっ、と思ったのと、次の車がそこを通るのとが同時だった。
 ぼくは、とっさに手で顔をおおった。瞬間、ぼくの心臓はつぶれた。だけど、丈夫だったときのために、すぐに行動を起こさなくちゃならない。すぐに茶色いものにかけよって、無事を確かめる。
 つぶれてはいない。タイヤとタイヤの間にいたようだ。すぐにすくい上げて、道のわきへどいた。
「チッチ、チッチ!」
 ぼくは手袋を脱いで、チッチの身体にじかに触れた。冷たくなっている。だけど大丈夫だ。ぶるぶると、ぼくの手のひらに生きている振動が伝わってきた。
 トットよりもふたまわりも小さい茶色い身体。手足がなくてまるでボールだ。でも生きている。ぼくの大事な友達だ。マフラーをとり、小さくたたんでチッチをくるんだ。それを胸に抱いて、ぼくは叫んだ。
「見つけた。トットー! チッチがいたよう!」
 ぼくは走った。顔に冷たい風がびしびしと当たって痛い。だからなのか、もっと別の理由があるのか、ぼくの目から涙が出てきた。
 巣穴の前まで来ると、ぼくは立ちどまった。
「君がいなくなったら、おかあさんが……ぼくだって、本当に困るんだよっ!」
 トットがハアハア言ってぼくにかけ寄ってきた。さかんにぼくに飛びついてくる。まだ落ち着きを取りもどしていない。
 ぼくはトットの目の前に、マフラーを下ろし、チッチがよく見えるようにしてやった。
 トットが涙を流している。
「チッチ! 何度言ったらわかるの! このバカ息子」
 トットはチッチを抱きしめた。ぼくは、どうしてチッチあんなところにいたのか、まだわからないままだった。ぼくと友達になって、あんなに楽しそうだったのに。それでもやっぱり、お母さんであるトットに申し訳ない、とか考えていたんだろうか? 
 しばらく呆然と二人を見ていたが、急に思いついて、
「ちょっと待ってて」
 と言い残し、急いで家の中にもどった。そしてハサミとあるものを手に握り締めて、またトットたちのいるところへ行く。あるものとは、手袋だった。秋、まだ雪が降らないうちに使っていた毛糸の手ぶくろだ。ぼくはチッチの体の長さにあわせて手袋の親指のところを切ると、チッチの身体にかぶせた。
「あきら君、今日は本当にありがとうございました」
 トットがバカ丁寧に言うので、ぼくはちょっと照れくさかった。
「ううん、ちっとも。でも、見つかって良かった。本当に」
 ぼくは、本当に、ってところに心を込めて、そう言った。


 二月半ばを過ぎたころ、ぼくたちは結構な数の結晶を集めていた。あれからぼくは、もっとまじめに、金の結晶探しに取り組むようになっていた。チッチに手足をプレゼントできる日はもうすぐだ。
 寒い日を選んで、トットは、集めた結晶全部を大きいそりに乗せたまま、ぼくに見せてくれた。本当にきれいだ。ピーターパンのお話に出てくる妖精の粉っていうのはこんな風に違いないと、ぼくは思った。結晶もこの雪景色も空の青もみんな、トットやチッチに見せてあげたい。ぼくなら、この結晶で二人の目を作ってやるのに。
 三月に入ると、気温が上がる日が多くなる。だからその前に結晶を集めてしまいたい。ぼくらはラストスパートをかけた。


 その数日後のことだった。朝の天気予報を見ておどろいた。今朝の最低気温がプラスの一度なのだ。
 窓からは、快晴の空からまっすぐに日が差している。
「さっき外に出たけど、春みたいな陽気よ。二月でこの気温は珍しいんじゃない?」
 と母さんが、ぼくに話しかけた。
「やばい!」
 ぼくは思わずさけんだ。
「どうしたの朝からあわてて。今日は日曜日よ」
 トンチンカンなことを言っている母さんの声を後ろに、パジャマ姿のまま、ジャンパーをはおって外に飛び出た。
 外に出ると、屋根からたれるツララ、車に積もった雪、あらゆる所が、ピチャピチャと雪融けの音を立てている。
 まだ二月だというのに、こんなこと。わかっていれば、家の冷凍庫に移しておいたのに。
 急げ。見ると、トットが金庫へのトンネル付近でおろおろとしている。ぼくは走りながら叫んだ。
「トット! 何してるんだ、早く作れ! 雪がとけちまう」
 その声を聞いて決心できたのか、トットはトンネルの中へ入っていった。
 ぼくは、自分でも何を思ったのか、玄関にもどり、雨傘を持って外に踊り出た。そして、結晶がしまってある金庫のあるあたりの雪に傘を広げた。けど、何の役にも立ちそうもない。
 トットは、なかなか出てこない。足にいくらか足りないのか? この際、多少小さめでもいい。それらしきものが作れれば、チッチは歩ける。早く、早く出てこい。こんなとき何にもできない自分がもどかしい。
 と、そのときドサッという音がした。金庫のあるあたりの雪が陥没したのだ。しまった。ぼくは夢中で雪をかき分ける。それでも遺跡発掘調査のような手つきで、慎重さは忘れない。この一月半で培った技術だ。
 トットの体も、金の結晶もなかなか出てこない。雪は、シャーベットのようにたくさんの水を含んでいる。グシャグシャだ。やっとトットの茶色い背中が見えてきた。トットは動かない。
「トット!」
 突然、トンネルが崩れてきたので、不意をつかれて雪を飲み、息ができなくなってしまったらしい。慌ててすくいあげると、ガアッと息を吸う音がして、口に入った雪をペッペと吐き出した。
 雪の結晶は? トットが作りかけの手足の上にかぶさり、つぶれてしまった。あっという間に金色の水は、ジュワジュワと白い雪に吸い込まれて、その輝きを失っていく。
 トットの見えない目には涙があふれていた。ぼくの目からも涙は止まらなかった。


 その後も、春めいた陽気は何日か続き、このまま春がくるのではないかと思うほど、雪は融けていった。その間に暦も二月から三月へと移った。
 けれど、春は行きつ、もどりつやってくるものだ。
 今日は一転、真冬並みの寒波がやってきていた。ニュースでは大雪警報の発令を報じている。
 夜になって、ぼくは外に出た。
 あんなに大変な思いをして頑張ったのに、トットの欲しかったものは結局手に入らなかった。トットはあれからふさぎ込んで、巣穴に閉じこもったきりだ。ぼくはトットがかわいそうで仕方がなかった。
 このままずっと手足がなくたって、チッチはチッチだ。大事な友達であることに変わらない。だから、魔法の雪がなくたってそんなに悲しむことはないって思うけど、トットはあんなに頑張っていた。もう目の前にゴールは見えていた。それが急にだめになったなら、誰だって落ち込む。
 トットに出会ってぼくは、大切なものを手に入れた。何かをやり続ける力だ。ぼくにとって本当のものはまだわからないけど、もしいつか、それが見つかったときは、それを手に入れるために頑張ることができるだろう。絶対だ。寒い中、最後までトットの手伝いができた。そのことがぼくの自信になったんだ。トットへの感謝の気持ちがふつふつと湧いてくる。
 この一ヶ月半の間にこの庭であった毎日のことを思い、ぼくは庭を眺める。窓からもれている家の明かりが、庭全体をほんのりと明るく照らし出している。風のない空を、音もなくたくさんの雪が、あとからあとからぼくの上に降り積もる。暗い空もみんな、白一色に染めてしまうのではないかと思うほどだ。
 と、ぼくは自分の目を疑った。目の前を金色の雪がはらはらと舞い降りてくるのだ。やっぱりこれは、ピーターパンに出てきた妖精の粉みたいだ、とぼくは思った。
 急にぼくは、この雪の結晶が意味しているものを悟った。ぼくは雪が下に落ちるのを待って、その場所を確認して家にもどった。すぐに出てきて、手に持ったプリンのカップで金の結晶を周りの雪ごと注意深くすくいとる。ついこの間まで、ぼくの必需品だったプリンカップにはまた、金の結晶がひとつ閉じこめられた。そしてもうひとつ、同じプリンのカップがもう一方の手の中にあった。ぼくが最初に見つけた宝物だ。その二つを持って、ゆっくりとトットの巣穴へと足を運ぶ。
「トットォ、チッチィ」
 ぼくが声をかけると、ふたりは巣穴からピョコリと顔を出した。
「あきら君?」
 と言うのと、
「少しは自分の心配もしな……よ!」
 ぼくがまわりの雪ごとトットの左目に金色の結晶をぶつけるのとが、ほぼ同時だった。
「あきら君、ひどい! なにするん……」
 トットの目が見えますように。とぼくは祈った。雪は、ぼくの願いを聞いてくれたんだ。また来年も頑張れよって。そして、友情がもっと深まりますようにって。
「あれ、雪だ。雪がこんなにたくさん降って……。これが白い色なんですね。とてもきれい」
 作戦は成功だ。トットにはこの白い雪が見えている。
 続いて、チッチにも。
 チッチにも光が訪れたみたいだ。二人は上を見上げ、はじめて見る不思議なものに心を奪われている。
 あれ以来、ぼくはトットをどう元気づけたらいいのかわかんなくて、ただ見守るだけだった。トットに今、何を言おうか。少し考えた。
「また来年も」
 ぼくは切り出した。
「また来年もよろしく。ぼくのかよわい意思も、ちょっとパワーアップした。トットもこれでパワーアップした。だからきっと来年はもっと早く集まるよ、金色の結晶」
 ちょっとかっこ、つけすぎた。トットが瞳をキラキラさせて、真顔でぼくを見つめている。これじゃ、笑われるより照れくさい。
 ぼくは「なーんちゃって」とつけ加え、
「白い雪もきれいだけど、金色の結晶もすごくきれいなんだ。ぼく、どうしても二人と一緒に金の結晶を見てみたかったんだ。本当は、ただそれだけなんだ」と笑ってみた。今度は、トットとチッチもつられて笑った。
「来年は、わたし、あきらくんにビシビシといきますよ」
「ぼくはもう、家出しない」
 三人は、また来年も金色の結晶探しをすることを決心するように、互いを見合った。
 トットとチッチはそれからまた、空を見上げ、雪に見入っている。
 ぼくはただ、トットの赤い帽子が白く染まっていくのを、いつまでもいつまでも見つめていた。
(了)
(初出:2010年12月)
登録日:2010年12月07日 15時47分
タグ : 児童文学

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