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浅川こうすけ
著者:浅川こうすけ(あさかわこうすけ)
猫が好き。毛がつやつやの黒猫が特に好き。自分で飼ってるわけではなくて人様の猫相手に猫じゃらしを振ったりしています。でも本心では、自分自身が猫じゃらしにじゃれつきたいのです。時間やしがらみを忘れて一心不乱にじゃれつきたいのです。猫じゃらしを振っているのが美しい奥方ならなお嬉しい。――と、こんなことを真顔でいう30代の未婚男子でございます。
小説/ホラー

きみのことが知りたい

[読切]
ある日、目を覚ますとベットの上に見覚えのない鍵があった。使ったことはなかったが、自室の鍵かと思い、差し込もうとして――ダメだった。はずだった。入るはずのない鍵穴に、ずぶりともぐり込んだ鍵は不思議な現象を起こしたのだった。善行にこそ使う鍵。小川尚哉は、その鍵に「ゼン」と名付けた。
 だれかに呼ばれたような気がして、小川尚哉《おがわなおや》は目を覚ました。眠い目をしばたたきながら、勉強部屋兼寝室の六畳間を見まわしてみる。だれもいなかった。虫一匹すらいない。
 夢でも見たかと頭をかいたあと、小川は困惑に眉根をよせた。
 窓から射しこむ朝の陽光が、ベッドのシーツを白く輝かせている。その上に、見覚えのない鍵が置かれていたのだ。
 この家には三人しかいないのだから、父か母に訊けば、なんの鍵かはわかるだろう。困惑したのは、寝ているあいだにベッドにいれられたということだった。親子のあいだとはいえ、感心できない。意味も不明だ。
 高校の制服に着がえ、階下へおりた。リビングにいる両親に鍵をしめす。
 小川は先ほどよりも深く、眉根をよせることになった。両親の答えは「知らない」だったのだ。


「珍しいよね、小川くんがぼぉ〜としてるなんて」
 といって、泉谷静《いずみたにしずか》が横の席からイスごと体をよせてきた。肩で切りそろえられた髪がゆれ、かすかにリンスの香りがただよってくる。
 さきほどの授業のことだろう。英文の和訳をするよう指名されたが、どこのページなのかわからなかった。彼女に助けてもらえなければ、まったく聞いていなかったことが、ばれてしまっただろう。
「いつもとのギャップがおかしいよね〜」
 泉谷がおおきな目をほそめ、ほんとうにおかしそうに口をほころばせた。
 小川尚哉はほおを赤らめ、何事かいいわけをしたが、自分でもなにをいっているのかわからなかった。気持ちが落ちつかず、ズボンのポケットに手をつっこんだ。指が先客にふれる。例の鍵だった。保存場所に困って持ってきたのだが、気になってしょうがなかった。授業に身がはいらないのは、この鍵のせいだった。両親がウソをつくわけがない。いったいこの鍵はなんなのだろうか。
「またぼぉ〜っとしてる」
 泉谷がおもしろそうに、喉の奥で笑った。


 小川が鍵の異常性に気づいたのは、その日の夜だった。
 学校から戻り、自室に入ろうとして、ドアの前で動きがとまった。今まで使ったことがなかったので、すっかり忘れていたが、自室のドアにも鍵がかけられるのだった。
 さっそく鍵穴に鍵を挿し――こめなかった。先っぽすら入らない。
 ここしかないと確信をもったあとだけに、肩がおおきく落ちた。その動きが二の腕を伝わり、手首を動かす。
 ズブリ、と手ごたえがあった。
 穴の形状を無視し、ドアノブに鍵が刺さったのだ。調理実習でハンバーグを作ったとき、あやまって指をめりこませたことがあったが、その感触に酷似していた。
 小川が手首を左にひねったのは、鍵を挿したときの条件反射だったろう。
 次の瞬間、信じられないことがおこった。ドアを中心にして、壁に長方形のスジが走った。ドアの輪郭よりもひとまわり大きなそのスジは、まるでもうひとつのドアが出現したようだった。
 否。ドアそのものだと、小川は直感した。
 新たなドアは、手前にむかって自動的にひらいた。
 小川は驚愕に目をむき、一歩あとずさった。廊下の壁に、背中がぶつかる。開いた壁のむこうには、自室が見えた。頭がくらくらした。
 とにかくこの開いた壁をなんとかしなければと、小川はまず鍵をぬいた。そのあとは考えてなかった。
 考える必要はなかった。音もなく壁がうごき、自然に閉まっていく。ついには、元とまったく同じ状態になった。スジもなくなっている。
 小川は恐る恐る歩をすすめ、昔からあるドアを開けてみた。ごく普通にあいてしまった。なめるようにドアノブも観察してみたか、鍵が刺さったあとはなかった。


 小川尚哉は教室の窓際で、ぼんやりと雲を見ていた。
 小さなころは、あのふわふわのうえで遊んだりしたら、きっと楽しいだろうと空想していた。
 高校ももうじき卒業だといういま、雲のうえで遊ぶのではなく、雲そのものになりたくなった。大学にいき、そして就職、結婚もするだろう。人生のレールにそって歩くなら、そうならざるおえない。考えさせられる。いままではそれがあたりまえだと信じていたのに、考えさせられる。
 ポケットのなかで弄んでいる鍵のせいだった。普通じゃない。早めに学校にきて、体育館の壁でもためしてみた。鍵を刺すとドアができ、左にまわすとドアであるかのようにひらくのだ。厚さや材質はおかまいなしだ。
 よからぬ考えが閃かなかったといえば、ウソになる。そんなよこしまな思考は、しかし頭を何回かふって追いだした。この鍵は異常で奇妙だが、特別であることにちがいはない。善いおこないにこそ使うべきだった。
「今日も、ぼお〜っとしてる」
 隣席の泉谷静が、おかしそうに目をほそめて、くすくすと笑った。
 小川は彼女としどろもどろにしゃべりながら、ポケットのなかで鍵をにぎりしめた。
 善行にこそ使うべき鍵。
 小川はこの不思議な鍵に、「ゼン」という名をつけた。


 泉谷静が手をふりながら、
「またね〜」
 と、笑顔で見送ってくれた。傾いた太陽が、彼女の住むマンションを茜色に染める。バイトさえなければ、もっとゆっくりできたのだが、仕送りだけではいかんともしがたかった。
 春からはじまった大学での生活では、親元にいるときとはちがっている。自己管理をいままでよりもしっかりしなくてはならない。
 小川尚哉は収入と支出を計算しながら、バイト先へと急いだ。角を曲がると、踏み切りが見えた。すでに遮断機が下り、警報はカンカンうるさい。
 薄暮であたりが見えにくかったが、小川の目ははっきりと子犬をとらえた。踏みきりの溝に足がはさまって、身動きとれずに首をあげさげしている。
 視界の端に、カーブを曲がった列車のライトがうつった。いまからでは、緊急用ボタンを押しても間に合わないだろう。
 小川は遮断機をくぐった。ポケットから、不思議な鍵「ゼン」を取りだす。
 落ちついた動作なのも、むべなるかな。ゼンと出会ってから今日まで、いくどとなく善行をくりかえしてきたのだ。命にかかわる場面に出くわしたのも、はじめてではなかった。
 小川は犬の足に近よった。そのすぐそばの地面に、ゼンを突き刺す。ひき肉に指をつっこむような、おなじみの感触がかえってくる。
 地面にスジがはいった。犬の足がはさまった溝とスジがつながり、ドアの形となる。
 ゼンを左に回した。
 刹那、地面がひらく。
 線路を構成するコンクリ基盤が、月光の下にさらされた。
 足が自由になった子犬を抱きかかえると、小川はふたたびゼンにふれた。
 その手の上で、列車のライトが反射する。
 ぬいた。
 ドアが閉じるのもたしかめず、遮断機をくぐる。
 数秒と間をおかず、列車が通過していった。
 ドアが閉じきるのが遅ければ、大惨事になっていただろう。小川はため息といっしょに、額の汗をぬぐった。


 かかえていた子犬を地面に下ろす。
 自分を助けけてくれたのがわかったのだろう。犬が尻尾をふりふり、濡れた鼻先をすりよせてくる。小川はしゃがんで、子犬の頭をなでてやった。
 あれ、と思った。そのなでている手に、ゼンをにぎっていたはずなのに。
 慌てふためいて、あたりを見回す。
 ゼンは、子犬の背中に突き刺さっていた。すでにスジがはいり、小さなドアができている。
 一気に背中が冷えた。いままで生物にゼンを刺したことはなかった。いったいどうなるのか、まさか内臓が流れだしてくるなどということは……。
 なにかが起こる前に、小川は行動した。ゼンをぬこうと、手をのばす。
 ゼンがまわった。
 ふれてもいないのに。
 小川は愕然と目をむきながら、頭の片隅で違和感を感じていた。どうして手に持っていたはずのゼンが、子犬の背に刺さっていたのか。まさか、ゼンが意思を持って行動したのだろうか。
 ドアがあいた。
「ワン、ダフル〜!」
 犬の背にできたドアから、同じ犬の顔がでてきて叫んだ。
「ありがとう! もう、ほんと一時はどうなるかと思ったよ〜。う〜れしいよ〜。ついでに、エサもくれると……」
 しかも、人間の言葉をしゃべっているときた。
 小川の心は、しかし動揺しなかった。春の闇夜の湖面のように、思考の細波がかすかに立っただけだった。
「とにかく、とっても、ワン、ダフ……」
 みなまで言わさず、小川は脊椎反射でゼンをぬいた。背中からでていた頭がひっこみ、ドアが閉まる。
「ワン、ワン、ワン!」
 普通のほえ声を背に、小川は歩きだした。いままで以上に大事に、ゼンをにぎりしめて。


 小川尚哉は、枕もとの電気スタンドに、ゼンをかざした。昨日の夕方に起きたできごとが、思い浮かぶ。子犬の背中にできたドア。でてきたもうひとつの顔。あれは、きっと本心に相当するものにちがいない。ゼンは、心の壁にもドアをつくれるのだ。
「う〜ん」
 となりで小さな声がした。照明がまぶしかったのか、泉谷静が寝返りをうつ。ふとんがはだけ、白くなめらかな肩が、薄闇におぼろに浮かんだ。ふとんをかけなおしてやりながら、小川は思考の海に沈んだ。
 泉谷と彼氏彼女の関係になったのは、ごく最近だった。告白したあの日のことは、生涯わすれないだろう。でも、考えてみれば、つきあうとはいってくれたが、好きとも嫌いとも聞いてなかった。いまさら訊くに訊けないし、訊くのも怖い。しかし、それは、昨日までのことだった。
 いま、小川の手にはゼンがあった。あとは、彼女の心の中を無断でのぞく、その覚悟を偽善の海からすくい上げるだけだった。
「きみのことが知りたい」
 小川は決意を声にのせ、彼女の背中にゼンを突き刺した。長方形のスジがはいったのをたしかめてまわす。
 ドアがひらいた。にょき、っと白い手がでくる。ゆっくりと上昇して、肘まで見えた。もうすく顔がでてくるだろう。
 さあ、これで本心が聞けると、小川は唾液をのみこんだ。
 白い腕は、二の腕まで出てきた。さらに上昇して、肘が見えた。
 小川の背中を冷たい汗がなめた。
 どうして肘がふたつある?
 危険の二文字が脳裏をかすめたときには、すでに頭をつかまれたあとだった。万力のように、五本の指がしめつけてくる。
 小川は痛みに歯をくいしばり、白い手をつかんだ。ひっぱって外そうとするが、それに倍する力で、さらに頭をつかまれる。理解できない出来事に、理性は爆発していた。本能は慌てふためくだけ。
 魂だけが、冷静に対処した。ドアを閉めようと、手探りでゼンを探す。冷たい感触が、手先にふれた。つかもうと、指をひろげる。
 ぐい、と引かれた。指はゼンから離れ、虚空をつかむ。UFOキャッチャーのアームのように白い手が動き、小川の顔はドアのすぐ前まで強制移動された。
「ふぇ」
 ドア内の暗闇から、奇妙な声がもれた。果実の腐ったような匂いが吹きつけられ、小川の鼻腔を刺激する。
 闇のコールタールから、白い顔が浮上してきた。
「ふぇ〜」
 と、その泉谷静にそっくりな顔が奇声をはっした。
「ふぇ〜、ふぇ〜、ふぇ〜、ふぇ〜」
 奇声をあげるたびに、口をあけていく。限界までたっすると、唇のはしが裂けた。それでも、まだひらくことをやめなかった。
 小川の魂がふたたび、冷静に現状を把握した。
 食われる、と。
 無意識に左手が動いていた。
 静の顔めがけて、のばした指が直線をひく。
 狙いは目だった。
 あたったと思った瞬間、静がまぶたを閉じた。
 それだけで十分だった。ダメージは、はなから期待していない。
 静の意識が、まぶたにいったせいだろう。頭をつかんでいた手の力がゆるんだ。
 いましかない、と小川は右手をゼンにのばした。
 今度こそつかんだ。
 怒りにそまった静の顔がのびてきたのと、ゼンをぬいたのは同時だった。
 静のぬるい息に顔面をおおわれ、小川はベッドから転がり落ちた。
「ふぇ〜、ふぇ〜」
 という奇声が小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。
 小川は安堵のため息を、おおきくついた。


「なにしてるの、そんなところで」
 泉谷静の声に、小川はウトウトしていた浅い眠りから覚めた。目をあけると、ベッドのうえから泉谷が見おろしていた。窓から差しこむ朝日に、肌が白く透けている。
 ああ朝か、と小川はぼんやりまぶたをこすった。体中に鳥肌がたったのは、その直後だった。昨夜のことを思い出したのであった。背中のドア、そこからでてきた彼女の本性のことを。
 小川は上体を起こした。床に寝ていた理由を適当にでっちあげ、泉谷から目をそらす。
「ねえ」
 ベッドの上で四つんばいになっている泉谷が、右手をのばしてきた。
 小川は、ふと、ゼンを手にもっていないことに気づいた。どこにいったと探す間もなく、
「これ、なに?」
 と、泉谷が首のうしろに手をまわしてきた。
「鍵?」
 ガチャリと音がした。小川の首に小さなドアがひらき、白いもやのようなものがでてくる。見るものが見れば、それが雲だということがわかっただろう。だが、泉谷には見えていないようだった。
 小川だったものの体から力がぬけ、床にうずくまる。
 ゼンは泉谷がもったままなので、当然、首からぬけた。ドアが閉まっても、雲は空中に浮いたままだった。
「尚哉?」
 ベッドから下りた泉谷が、恐る恐る小川の体をゆすった。まったく反応がないことに、顔面を蒼白に染める。
「きゅ、救急車!」
 泉谷が電話へと飛びついた。
 放り投げられたゼンが、壁にあたって床に落ちる。と、側面から昆虫のような足が六本のびた。鍵の頭の部分から、触覚も突出する。
 その触覚を、ゼンが中空の雲にむかって数回ふるわした。それで気がすんだのか、ゴキブリを連想させる動きで、玄関のほうへと去っていく。ドアは閉まっているが、そんなことゼンには無意味だ。
 ああやって移動してオレのベッドにもぐりこんだんだなあ、と雲になった小川はぼんやりと考えた。
(了)
(初出:2003年04月)
登録日:2010年06月14日 22時56分

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