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青島龍鳴
著者:青島龍鳴(あおしまりょうめい)
青島龍鳴と申します。メタ化されたものしか受け入れられないこの時代で、黴の生えたような古臭いものばかり書いている時代錯誤作家です。既刊本「But the world is beautiful」。
小説/ホラー
【電子書籍】初冬の狂想曲 眠太郎懺悔録(その四)
帝家を地震が襲った。いや、強烈な悪意と破壊に満ちた邪悪な気が屋敷を揺らしたのだ。東の帝家に対し、西のカンパニーから送られた、十二柱に抜擢されたと宣う三名の刺客――百々目鬼の土留、犬神の魔胤、鎌鼬の頭領の子・斬児。腕試しを求められ、百戦錬磨の眠太郎が名乗りを上げるが、予想を遙かに超える強敵に苦戦を強いられる。一方、帝家に嫁いだ円の妹である葵とナオミ、そして香苗は高校生活を満喫していた。ひとりになった香苗の前に眠太郎と闘い傷ついた斬児が現れ、何も知らない彼女は……。恐ろしいカンパニーの「実験」が明らかとなり、複雑な人間模様が描き出される。闇に巣くう邪鬼を祓う退魔師の闘いを描いた眠太郎懺悔録第四弾!

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初冬の狂想曲 眠太郎懺悔録(その四)


前章


 あれは今年の八月だっけ。
 オレの車で夜中に四人でドライブに行ったんや。
 勿論、男二人と女の子二人な。
 ド田舎のことやから遊ぶスポットもないし。
 いわゆる肝試しってヤツや。
 山ん中にどっかの企業の研究所があるんけどさ。
 そこに通勤しとう人って誰も見たことないんよ。

 近くを通った人が、ようわからん動物を見たって話があってな。
 頭が牛で体が人間だったとか
 羽が四本ある雉だとか
 やたら太くて短い蛇とか。

 みんな怪しいって言いながら、誰も確認とかしないんよ。
 これ若いモンの出番でしょ。
 遊びついでにオレらが確かめに行こうってことになったんや。

 付き合い初めのカップル二組の、楽しいドライブだったわ。
 研究所の近くまではな。

 研究所の近くまで来ると、山道に進入禁止の看板が立てかけてあるんよ。
 おまけに鉄網で出来た門が閉じられてるんや。
 地元のジジババが確認もしないのはこれが理由なわけ。
 禁止って書いてあるから本当にダメなん思っとん。

 視界が開けたところにあるからわかるんけど
 看板と門から研究所らしきチッコい施設まで何百メートルもあるんよ。
 ここから研究所まで全部が私道ってことはまず無いんや。
 だとしたら、とんでもない大企業ってことになるやん。
 こんなド田舎にでっかい企業なんて誘致できるわけないんや。
 つまり、進入禁止なんていっとるけど、法的根拠ゼロってことや。

 オレと連れの男がいったん車を降りて門を開けたんよ。
 ボロボロの鍵やった。
 レンチでぶん殴ったら簡単にぶっ壊れてやんの。
 ちょい気になったんは、鍵がボロ過ぎるって点や。
 まるで何年も誰も触ってないような、そんなボロさだったんや。
 一応、施錠してるんよ?
 こちとらチェーン切るハサミまで用意してたんに。
 そりゃねえわって感じだったわ。

 再び車を出したオレらだったけど
 さっきとは何かが違ってたんや。
 ついさっきまではアホみたいに喋くってたんよ。
 でも、そうはいかなくなってもうた。
 何か空気がおかしかったんよ。
 真夏の夜だっちゅうに、寒気が止まらなかったんや。
 念のためにもう一回言うけど、今年の夏やぞ?
 毎日のように熱帯夜ばっかだった、今年の八月の話やぞ?
 なのに、真冬みたいな寒さだったんぞ?
 クーラー入れてたけど消して、暖房入れて、ようやっと耐えられるレベルだったんやぞ?
 オレの彼女、冷え性持ちやったから暖房入れても寒い寒い言うとったんやぞ?
 あれ絶対おかしいて。

 オレらもアホやった。
 ヤバいってわかった時点で回れ右して帰れば良かったんや。
 でも、オレら男やん?
 女の子いるわけやん?
 いいとこ見せんとやん?
 オレがいれば何でも安心って思わせたいやん?

 ……勇気ある撤退のできる男っていうんも、後から思うとアリっちゃアリやったんけどな。

 まあそんな賢明な判断もできんから、意地張って突っ走ってもうたんや。

 正味な話、おかしい場所だったわ。
 道の脇に、お札を貼った石がたくさん置かれてたんや。
 何のために置かれてんのかわからんかったけど、めっちゃ不気味やった。
 なんのために置かれてんのかわからんから不気味やったのかもしんないけど。

 で、研究所に近付いてみてわかったんやけど。
 近くの地盤がめっちゃ広範囲に掘り返したのがわかるんや。
 そこら一帯、何百メートルも掘り返しまくって、埋め直したのがわかるんや。
 オレ、ピーンと来ちゃったわ。
 表面に出てたん、アレ氷山の一角ってやつなんや。
 あそこにはでっかいビルが、いや町一個分くらいの施設が地下に埋まってたんや。
 オレらが研究所だと思ってた、町の工場サイズの建物は入り口に過ぎなかったんや。

 こりゃアカンやつ発見したと思ったわ。
 巨大組織の陰謀や。
 オレたちの町は、知らんうちに悪の組織に支配されてたんや!

 オレが悪の陰謀に気付いた瞬間のことや。
 後ろに座ってた友達が
 なんか来よる!
 って言うたんや。
 研究所の方から車が向かって来てたんや。

 オレらの車と鉢合わせる寸前で、車は止まったんや。
 そいで、人が降りてきたんや。
 ほっそいナリした男と
 生っ白い顔した女と
 痩せっぽちのガキやった。

 男が近付いてきて
 窓越しに何か言ったんや
 いつもならオレ
 人がどこを走ろうとオレの勝手や!
 とか、かましたるんけど
 そのときはアカンかった。

 そいつ、白目がないんや

 真っ黒な瞳だけで、白目がなかったんや。
 それ、隣にいた女とガキも一緒やった。

 オレら全員
 ウワアアアア!
 ってなって
 オレは車をバックさせたんや。

 でも、車は動かんかった。
 ギアをRに入れてアクセル全開にしたんけど
 ピクリとも動かんのや。

 オレ、パニクりかけたけど気付いたんや。
 エンジンもタイヤも動いとる。
 エンジンはブンブンいわしてタイヤもギュルギュルかましてんのに動かんのや。

 どういうことなんかはすぐわかった。
 車のそばにいる男、すんごいキバっとったんや。
 その野郎、車が動こうとすんのを腕ずくで止めてたんや。
 左手でドアの取っ手押さえて、右手でボンネット押さえて、無理矢理止めてたんや。

 こいつ、マジモンのバケモノや。

 とあれ
 極限状態に陥ったときこそ、最善の方法が取れんのがオレのビッグなとこや。
 オレは素早くギアをFに変えて、右側つまりは野郎のいる方向にハンドルを向けた。

 相手は人間やない。
 バケモノなんや。
 ひき殺したらアカンとか、気ぃ使うことないんや。

 オレの判断はビンゴに大正解やった。
 野郎、急に車の動きが変わったんで対応できねえでやんの。
 車と木の間に挟まって手を離しよった。

 横にいた女、爆笑してやった。
 目ん玉真っ黒なまま笑ってやがった。
 ホンマ不気味でしゃあなかったわ。

 オレはバック全開でトンズラここうとしたんけど
 ガキが血相変えて追ってきたんや。
 目ん玉真っ黒なのが、正面からものっそい速さで追って来るんや。
 おかしいやろ。
 オレの車、バックでも五十キロ出るんやぞ。
 いったいどんな足してん?

 まあ機械とイキモノの勝負やから
 どうにかバックのまんま振り切れたんけどな。

 みんな帰るまでガクブルやった。

 翌朝になって車見てみたんけど。
 ボンネットが傷だらけなんや。
 しかも、擦り傷とかいうんやなくて
 チェーンソーでやられたみたいに鉄板がズタボロやった。

 まだローン残ってんとか、そういうレベルの話やない。
 車が持ちこたえてくれんかったら、オレら全員切り刻まれとった。
 あのガキ、何も刃物とか持ってなかったんに。

 いったい何がどうなっとんや?
(続きは電子書籍で!)
登録日:2014年04月01日 18時04分
タグ : 眠太郎懺悔録

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