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キラーメガネ
著者:キラーメガネ(きらーめがね)
1976年生。愛知県在住。かつては大手SNSサイトにて短編小説を公表。第7回星の砂賞・超短編部門にて『灰色の告白』で審査員特別賞。Pixiv×講談社BOX-AiR&ITANショートストーリー大賞では『極・人生ゲーム』にて大賞受賞。騒人ではユーモア短編集である『笑撃波シリーズ』をメインに発表している。また初のホラー短編集である『お呪い申し上げます』もマイカ出版より発売中。
小説/現代
【電子書籍】お呪い申し上げます
ホラーアンソロジーなどに寄稿しているキラーメガネ氏のホラー短編集。定番の怪談から都市伝説、トラウマ、呪いなど身の毛もよだつ怖い話が満載。「みなきゃよかった」では、観たら呪われる動画を見た中にひとりだけ有り得ないものを観た友人が。「ここにいてはいけない」は、彼女と同棲することになった部屋で恐ろしい経験をする男。しかし、さらなる恐怖が突きつけられる。「ハル」ではSNSでやり取りしていた女性と会う約束を取り付けた美紀だったがすっぽかされてしまう。その理由に恐れおののくことに。upppiホラー小説コンテスト優秀作品を掲載。心臓の弱い方はご注意ください……。

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立ち読み

お呪い申し上げます


 みなきゃよかった

「すげぇヤバい動画があるんだよ。観たら呪われるってやつ」
 Aからそんな話を聞いても俺は眉一つ動かさなかった。だって、あのさ、俺ももうハタチ越えてるの。そんな動画は実際にゃ存在しないっての、知ってる訳。
「ちげーんだって! これはマジ! マジのやつ! 観た奴らが実際、おかしくなったり死んだりしてるんだって!」
 Aが言うには、その動画は、インターネットをしている人達の99%が知っていると推測される例の巨大動画投稿サイトにアップされている動画らしい。
 おいおい、あの動画サイトにある時点で嘘くさいんですけど? だって、その動画、めちゃめちゃ色んな国の人に観られてるって話じゃねーかよ。だったら一体、何人呪われて何人おかしくなって死んでる訳よ。こんなの事実だったら国際問題だよ。
 てかなAよ、お前もハタチ越えてるだろ。そんなだから彼女できねェんだよ。
「恋愛は関係ねーだろ! 大体、嘘くさいとか文句言ったりよ、じゃあアレだよな、つまりお前、その動画観ても全然平気ってことだよな!?」
 ああ、平気の平気、余裕綽々よゆうしゃくしゃくよ、なんてバカにされてご立腹の様子のAに返す。
 ところでAよ、当然、お前はその動画を観てるんだよな? 観てるからそんなに「バカにすんじゃねぇ」とばかり、興奮して怒ってるんだよな?
「あ? バッカ、お前! 観てねェよ! 観てたらお前、俺、今頃呪われて大変なことになってるだろ! ははは、本当、バッカだな、お前!」
 バカはお前だ、とAには言わなかったが「お前は呪われてないが大変なことになっている、ガチで彼女できそーにない」とは言っておいた。

 ……あのさ、今これ読んでる読者の皆さん。ココだけの話よ? 現実に呪いとか幽霊とかある訳ねーって。そういうのは10代のお子ちゃまはまだしもハタチ越えたら自ずと悟らなくちゃならねーのさ。
 つまり、世の中には2種類いるってことを。
 もうちっと詳しく言うと『操作する奴』と『操作される奴』。
 何が言いたいかって言うと、要はインターネット上に溢れる全ての怪談やら都市伝説やらは『操作する奴』の創作って訳よ。小説家志望なんかに多いタイプだな。腕試しに、さも現実にあったような恐い話を作って、人に聞かせて怖がらせて自分の文章スキルを磨くっていう。
 世の中、そんなので溢れてるのさ。超能力もUFOも霊も呪いも、世に氾濫する逸話のほとんど全てがそんな感じだろーよ。『操作する奴』が普通の話を曲げて伝えてるか、完全に創作してるか、どっちかだ。
 今、「あ、俺、『操作される奴』の方かも」って思った奴、気をつけなきゃいけねーぜ。そんなんじゃ出世も出来ねーし、今時オレオレ詐欺にだって引っかかっちまうぞ。『操作する奴』の方になりな。
 ……おっと。コレ、余談だったな。悪い。話を戻そう。

 その後、Aは俺にこう言った訳。
「その動画、一緒に観ようぜ!」
 Aよ、おかしくねぇか? だって観たら死ぬんだろ? その動画が本物だって信じてるんだろ? ならどうしてお前は死のうとするんだ?
「いやだって、なんか観たいじゃん、そういうの。それに一人で観ると呪われるかも知れないけど、そういうのって皆で観ると危険が分散されそーじゃない?」
 その『リスク分散理論』の根拠は何処にあるのだ。てか、お前、今、「皆で観る」って言った? 
 は? 二人だけだと怖いから更にBとCとDを呼ぶ?
 この……腰抜け野郎!!

 てことでA、B、C、D、そして俺の5人がAのアパートに集まって、その動画を観ることになった。ちなみにDは女ね。D子にしよう。余談だが皆ハタチ過ぎだ。いい大人だぞ。コレを読んでる10代の皆。笑ってくれ。
 それでAのパソコンを使ってその動画を観るんだが、まぁBもCもお調子者だから電気消したり、雰囲気出したりして。
 実際、イヤがってたのはD子よりもやっぱりAだったな。D子は「アタシ、怖いのキライー」とか言ってたけど顔は全然普通だったし。
 けどAは「やっぱりやめようかな」とかマジの顔で言ってた。D子は分かるがA! お前! 自分で呼んどいて、お前!

 ……ま、ちょっと書くのが面倒になってきたので、もう簡単にその動画を観た後の説明をするな。
 省いた訳じゃねーんだ。いや実際省いてるけど、そうじゃなくて、ホントそれほどありがちな動画だったんだって。
 その動画ってのが、深夜のコンビニの監視カメラに映った映像でさ。雑誌コーナーに突然、白い衣装で黒い髪の女――まぁ簡単に言うと例の映画で井戸から現れるあの女みたいな――が現れて、スーッと画面を横切んの。
 その瞬間、D子は「ヤダァ!」ってちょっとガチな声出して、BとCは「オッ! キター!」なんて嬉しそうだった。
 それで肝心のAは、可哀想になんか一言も喋らず顔面蒼白で画面を見詰めていた。『本当にビビってる時ってあんまり叫んだりせずに人間固まる』っていう見本だな、って俺は思って一人ほくそ笑んでた。

 俺? 俺は全然怖くなかったよ。いや、強がりじゃなくて。俺、結構、映画とか観る方なんだよ。それで大体、特撮かどうかの違いとかって分かる方なんだわ。
 もうね、あの動画、明らかにフィクションだったよ。霊がなんかクッキリ映りすぎてる。不自然。
 実際、俺だけじゃなくてBもCも作り物だって言って笑い飛ばしてた。
 
俺のそんなプチ眼力を図らずも証明できたのは、数日後だった。結構、巷で話題になってたあの動画を『創作した奴』ってのが出てきたの。「俺らがつくりました。てへぺろ!」みたいな感じで。で、はい! 賑やかし終了―! ってなったのね。

 ……読者の皆さん。結局そうなんだよ。
 世の中には二種類。『操作する奴』と『操作される奴』。
 今回の呪いの動画もそんな『操作する奴』の仕業だったってことだ。
 だけどね。
 実は本題はここからなんだよ。

 先日、Aが死んだ。死因は交通事故。
 Aの葬式が終わった後、Cと話をした。すると、Cが「聞いて欲しい話がある」って言い出した。
 それは、あの動画を観た後の話だった。俺とB、D子はあの後、家に戻ったがCはAの家に泊まった。その時、今考えると妙な話を聞いていたという。
 Cが酒を飲みながら、
「いやぁ全く暇人だよなー。こんな動画作る暇あったら仕事に精だしたらいーのにな」
 って言うと、Aはオドオドと聞いてきた。
「だ、だよな? これ、やっぱ誰かが作ったんだよな?」
「見終わった後、皆で作り物って言って盛り上がっただろ。当たり前じゃん。こんなの作り物だって」
 Cに念を押され、遂にAはホッとした表情を浮かべ、こう言った。
「そーだよな。しかしあの白髪の老婆、怖かったな。ずっとカメラの方、にらみつけてるんだもん」
 Cはその時、「アレ?」って思ったらしいんだ。そりゃそうだよな。俺だって聞いたらそう思うわ。だって例の動画ってさ、白装束に黒髪の女が画面を横切るだけの動画だったんだ。白髪の老婆?なんて出てこないし、にらみつけてなんかもしないんだ。
 その時は酒を飲んでたから特に気にせず聞き流したCだったけど、翌日、思い出してちょっと不気味に思ったらしいんだ。それで一番仲の良いBに電話して聞いた。
「なぁ、昨日観た動画って黒髪の女が出てくるやつだったよな?」
「は? そうだよ? 何言ってんだ。アホかお前」
 そんな感じで笑われたんだけど、じゃあ、やっぱりAだけ『違う動画』を観ていたってことになって、そう考えたらやっぱり怖くなって、でも怖がりのAに言うと気を病むかも知れないと思い、そのことは自分の中に仕舞い込んだらしいんだ。

 Cは俺に言った。
「皆で集まって同じ動画を観た筈だろ? Aの観た白髪の老婆ってなんなんだよ? なんでAだけ皆と違う動画を観てたんだよ?」
 知らねェよ、って俺は返した。
 俺は信じない。信じたくない。
 世の中には2種類いる。『操作する奴』と『操作される奴』。それで世の中の不可思議な現象は全て解決できる……。
 それでいいじゃねぇかよ。
 なんでAが死ぬんだよ。
 あいつバカだけど良い奴だったんだよ。
 交通事故って言ってもあんな見通しの良い交差点で、なんでだよ。

 ……みなきゃよかった、あんな動画。
(続きは電子書籍で!)
登録日:2014年03月29日 20時20分

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