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キラーメガネ
著者:キラーメガネ(きらーめがね)
1976年生。愛知県在住。かつては大手SNSサイトにて短編小説を公表。第7回星の砂賞・超短編部門にて『灰色の告白』で審査員特別賞。Pixiv×講談社BOX-AiR&ITANショートストーリー大賞では『極・人生ゲーム』にて大賞受賞。騒人ではユーモア短編集である『笑撃波シリーズ』をメインに発表している。また初のホラー短編集である『お呪い申し上げます』もマイカ出版より発売中。
小説/現代
【電子書籍】キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 猿の尻笑い編
爆笑間違いなし! SNSで小説を発表し人気を博したキラーメガネ氏のユーモア短編集第二弾。「てきとうな辞書」は、電子辞書作りに携わる男がテキトーな単語を入力し始める。完成の暁に男は?「とっても甘い☆スウィーツメール」は、無作為にメールの文章を改編するウイルスに感染したパソコンから送信された恋文が、とんでもない内容に……。電車の中で読んで笑い声を上げ、変な目で見られても責任持ちませんのでご注意を……。

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キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 猿の尻笑い編


 てきとうな辞書

 前田省吾(まえだ しょうご)が電子辞書作りに携わってからおよそ3年が経つ。
 辞書というものは、かつては1冊作るのに10年以上かかったというが、既刊の辞書も多数出版されている現在では、それらを参考にすれば良いし、またパソコンなどを用いれば、幾分簡略化して作れるようにはなっている。
 それでもやはり、何人もの人の力を集め、歳月をかけて行う地道で大変な作業には変わりなく、前田が現在担当する『国語辞書部門』では数人のチームを組んで、辞書の編纂をしていた。
 そして、前田はちょうど今、『生首』という単語の文章を入力していた。

 生首【なまくび】(名詞)
 意味:切り落としたばかりの生々しい首。

 ……ところで、誰しも長く仕事をしていると、慣れや慢心が出たりするものである。特に『3年目』というのはある種の節目であり、『3年目の浮気』などと言われるように、恋愛や結婚に於いても『慣れ』が出始める時期である。
 御多分にもれず、前田も自身の仕事について『慣れ』が出始めていた。
 だから、前田は『生首』の説明の次に、ついうっかりこんな文を作ってしまった。

 生首Z【なまくびぜっと】(名詞)
 意味:生首の最終形態。すごく生々しい。その生々しさは通常の生首の百万倍。

 はっ、と気づき、前田は辺りを見渡す。辞書編集チームの面々は自分達の作業に夢中らしく、黙々とパソコンを叩いていた。誰も前田が『生首Z』などというふざけた単語を開発していたことに気付いてはいない。
 ここで直ぐに消せば良かったのだが、前田の頭の中で悪魔が囁いていた。
『いいぞ! 地道な作業なんだから、これくらいの遊び心が必要だ! なあに、10万以上単語があるんだから、ちょっとくらいふざけたって誰も気付かねえって! もっと、いけいけ!』
 そして、前田は『ニューロン』の次にこんな単語を開発した。

 にゅるにゅるオジサン【にゅるにゅるおじさん】(名詞)
 意味:全身が油で覆われているおじさん。馬鹿にすると時速80キロで追いかけてくる。捕まると全身油まみれにされる。あぶらとり紙が弱点で、付けるとくたばる。

 そんな都市伝説を作った後、前田は少し前に作成した文章を見てみた。

 空気【くうき】(名詞)
 意味:窒素と炭素を主に含み、また2酸化炭素なども含む、無色透明の混合気体。

 前田は眉間にシワを寄せた。
 なんと退屈な文章であろう。
 なので、前田は『空気』の文章を以下のように書き直した。

 空気【くうき】(名詞)
 意味:お前が今、吸ってるやつ。

 これでよい。大体、空気の説明なんか言わなくても分かる。そんなものを辞書でわざわざ引く奴はいないに違いない。
 前田は更に改変していく。

 火【ひ】(名詞)
 意味:触ると熱い。

 食べる【たべる】(動詞)
 意味:モグモグすること。

 幽霊【ゆうれい】(名詞)
 意味:こわい。

 楽しい【たのしい】(形容詞)
 意味:ヒャッホイ。

 女【おんな】(名詞)
 意味:やりてえ。

 それからも前田は、いろんな単語を自分流にアレンジして編集をした。
 前田の仕事振りは日を追うごとに、どんどんいい加減になっていき、最後の方は、他人の悪口なども辞書の内容に入れていた。

 そして――。
 月日は流れ、遂に電子辞書の完成となった。
 チームリーダーである斉藤チーフは、集まった皆にこう言った。
「皆さん、大変なお仕事、本当にご苦労様でした。ようやく当社の電子辞書が完成となりました。そこで、今回サプライズプレゼントがあります。電子辞書内の国語辞書よりジャンル『食べ物』を設定して、私が適当に引きます。それで出た食べ物をなんと皆に奢(おご)ります!」
 斉藤チーフの提案に皆は沸き立った。
「カニがいいなあ!」
「ケーキがいいわ!」
「トリュフなんて出たりして! もしキャビアとか出ても、チーフ、奢ってくれるんですか?」
「ああ、いいよ! どんとこい、だ!」
 斉藤チーフは満面の笑顔でそう言った。
「では、引くぞ」
 今までの騒々しさは水を打ったように静まり返り、皆、斉藤チーフの言葉を待った。
「ん? ふ、えな……ワカ……? なんだこりゃ?」
 途端、前田は「お疲れ様でした!」と叫び、荷物を持って弾丸のようにその場を退出した。
 ……電子辞書の画面に映っている単語は以下の通りであった。

 増えないワカメちゃん【ふえないわかめちゃん】(名詞)
 意味:斉藤チーフの頭のこと。っていうかマジ最近薄くなったよね。なんか頭の上にワカメちょっとだけ、まぶしたみたい。少ないワカメ。かわいそうなワカメ。あんなワカメ絶対に食べたくないよね。臭そう。
(続きは電子書籍で!)
登録日:2013年09月13日 19時48分

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