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キラーメガネ
著者:キラーメガネ(きらーめがね)
1976年生。愛知県在住。かつては大手SNSサイトにて短編小説を公表。第7回星の砂賞・超短編部門にて『灰色の告白』で審査員特別賞。Pixiv×講談社BOX-AiR&ITANショートストーリー大賞では『極・人生ゲーム』にて大賞受賞。騒人ではユーモア短編集である『笑撃波シリーズ』をメインに発表している。また初のホラー短編集である『お呪い申し上げます』もマイカ出版より発売中。
小説/現代
【電子書籍】キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 笑う門には福来たる編
爆笑間違いなし! SNSで小説を発表し人気を博したキラーメガネ氏のユーモア短編集第三弾。「でかすぎるからじゃない?」は、人類の行く末を決める戦いに挑む戦士たちなのだが、盛り上がらないのは何故か? 「名探偵 高峰亮」は、高峰は推理を邪魔する女のKYさにぶち切れ……。「ブラインドタッチ岩倉」は、仕事が出来ず閑職に追いやられ馬鹿にされる岩倉の意外な活躍。いちばんのオススメはユニークなだけでなくホロリとする短編「父さんのアドバイスファイル」。亡くなった父が残した事細かなアドバイスファイルを巡る娘の人生を描きます。電車の中で読んで笑い声を上げ、変な目で見られても責任持ちませんのでご注意を……。

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キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 笑う門には福来たる編


 でかすぎるからじゃない?

「遂にこの時が来たな」
 勇者アバロンが振り返ると、屈強な戦士ガイルと、紅一点の魔法使いカトレアは静かに頷(うなず)いた。
 今、幾多の困難を乗り越え、勇者の一行は大魔王ギガントデスの目の前に立っていた。
「覚悟しろ! 大魔王ギガントデス!」
 そう叫び、勇者アバロンは大魔王を見上げるが、その顔は遙か上空。どんな顔をしているのか良く分からなかった。
「それにしても、なんという大きさだ……!」
「ええ……大きすぎるわ……!」
 戦士ガイルと魔法使いカトレアが歯を食いしばる。
 確かに大魔王ギガントデスの巨大さは想像を絶していた。
 顔が見えないどころか、かろうじて見えるのは赤黒い足の甲から膝の部分まで。それより先は雲の上に霞んで見えない。
 だが、ここまで来てひるむ訳にはいかない。

「大魔王ギガントデス! 正義の鉄槌を受けろ!」
 そうして戦士ガイルは『グレイトアックス』を構えて、足の甲に突っ込んでいく。
 ゴブリン族の村クルトムで、秘石イジアを加工して作られた強力な斧――それが『グレイトアックス』である。その重量と大きさにより『グレイトアックス』は戦士ガイルにしか使いこなせない。
「これが貴様に虐(しいた)げられた人々の怒りだ!!」
 怒号と共に振り下ろされるガイル渾身の一撃は、しかし、大魔王の足の甲の部分に当たると鈍い音を立てた。
「な、何だと!?」
 まるで鉄扉に向けて攻撃したような手応えのない感触に、戦士ガイルの顔が歪む。無論、ギガントデスの足の甲には傷一つ付いていない。
「物理攻撃は効かないのかも知れないわ」
 そう呟いた刹那、魔法使いカトレアは呪文を唱える。
「聖なる守護天使ミカエイルの御名の下、汚れた魂を浄化せしめよ……」
 大魔王を打ち破る為、人間には立ち入ることすら不可能と言われた精霊界アスクラウムに数多の困難を乗り越え辿り着き、精霊王エミナスに伝授された禁呪『アルティメッドホーリー』の詠唱である。
「滅せよ! 大魔王ギガントデス!」
 詠唱後、カトレアの両手より繰り出された目の眩むような光線は、だが、大魔王の足の甲の部分に当たると、屈曲し、跳ね返された。
「そんな? 嘘よ!」
 まるで鏡に向けて攻撃したような手応えのない感触に、魔法使いカトレアの顔が歪む。無論、ギガントデスの足の甲には傷一つ付いていない。
「俺に任せろ!」
 勇者アバロンは叫ぶと、腰の鞘から光り輝く剣を抜く。
 世界中に散らばった『赤と青と緑のグリフィスの鍵』。恐ろしく強い守護者達が守っていたその三つの鍵を手にした後、聖府ディボアに赴き、天使長サンドリアスと戦い、認められて後、ようやく手に入れた伝説の剣『エクスカリバーヌ』。
 その伝説の剣を上段に構えて勇者アバロンは、足の甲の部分に突っ込んでいく。
 血の滲(にじ)むような鍛錬で得た腕力と伝説の剣が組み合わさった最強の一撃は、しかし、大魔王の足の甲の部分に当たると変な音を立てた。
「馬鹿な!?」
 まるでコンニャクに向けて攻撃したような手応えのない感触に、勇者アバロンの顔が歪む。無論、ギガントデスの足の甲には傷一つ付いていない。
「……無理よ。やっぱり大魔王には勝てないんだわ」
 カトレアが呟く。ガイルの顔にも焦燥が滲み出ている。
 だが、アバロンは叫ぶ。
「まだだ! 三人の力を結集するんだ! そうすればきっと奇跡が起きる筈だ!」
 勇者の一声で、二人の顔に希望の火が灯った。
「そうね。諦めるのはまだ早いわ」
「そうだな。俺達にはまだ究極の合体技『グレイトアックス・アルティメッドホーリー・エクスカリバーヌアタック』があるものな」
「そうさ! 行くぞ! 『グレイトアックス(以下略)』発動だ!」
 そしてカトレアが呪文の詠唱している時、勇者アバロンは、ふと思うところがあって隣の戦士ガイルに尋ねてみた。
「なぁ。ちょっと聞いていいか?」
「何だ?」
「俺は、いや俺達は今、一体、何と戦っているんだ?」
「なにって……足の甲だろ」
「そうか。そうだよな。足の甲だよな」
 その時。カトレアが叫ぶ。
「いくわよ! 受け取って!」
 カトレアの魔法『アルティメッドホーリー』が、ガイルの斧に向かい発射される。その光線を受けて、ガイルの『グレイトアックス』は美しくも優雅かつ七色に光り輝いた。
 その美しくも優雅かつ七色に光り輝く様子を見て、心が清まり落ち着くのを感じながら、勇者アバロンはそれはそれとして『エクスカリバーヌ』をただ上段に構え、先程と同じように足の甲に突っ込んでいく。
 そして、叫ぶ。
「喰らえ!! 足の甲!!」
 だが、またしても全く手応えのない感触と聞いたこともないような珍妙な音を耳にしつつ、勇者アバロンは考える。
 武器が効かない恐ろしい強敵。
 それでも果敢に立ち向かう三人。
 そう。これは人類の行く末を決める、大事などという言葉では語り尽くせない程に重要な決戦なのだ。
 ……なのに、どうしてこんなに盛り上がらないのだろうか。
(続きは電子書籍で!)
登録日:2013年10月12日 13時16分

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