
著者:井上真花(いのうえみか)
有限会社マイカ代表取締役。日本冒険作家クラブ会員。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都文京区に在住。1995年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「オフィスマイカ」を設立。
小説/現代

【電子書籍】ショートラブストーリー
誰でも一度は味わったことのある「ちょっとした恋心」を、とても短いお話にまとめてみました。全18話、きっとあっという間に読めてしまいます。通学や通勤のお供としてお楽しみ下さい。
価格:210円
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ショートラブストーリー
■もうちょっとだけ
「あいつと付き合うことにしたん?」
校門の前でばったり会った永沢くんは、長い長い沈黙の後、独り言のように言った。
「ん? なに?」
私は、永沢くんの突然の台詞に慌てながら返事をした。
「なんかゆうてたやん。ゆかりに、昨日話しとったやん。バスケット部のなんたらと付き合うとかなんとか」
「ああ、佐藤くんね」
「そんな名前やったっけか。そんで、どないしたん」
「あ、うん。つきあってっていわれたから」
「つきあうんか」
「ん〜。どうしようかな…」
ちらっと永沢くんの顔を見た。ぶすっとしてる。ちょっと笑っちゃう。
「なんや、迷ってるんか。ま、ええんちゃう」
永沢君は、そっぽをむいたままで言った。
「けど、そいつもたいがい物好きやな。なにも安田なんか選ばんかて」
けけっと笑って、ひらりと自転車に飛び乗った。
「大原とか、山下とか、バスケ部にはかわいい子、ぎょーさんおるのにな。ま、ふられんようにな。おまえなんか、もう二度とモテへんやろうし」
手をひらひらっと振ってみせた後、永沢くんは校門の前の長い坂を一気に駆け降りていった。黄色いシャツの背中が、どんどん小さくなっていく。地平線に沈みかけた夕陽がまぶしくて、目を細めないとよく見えない。私は目の上に手をかざし、どこまでもどこまでも永沢くんの背中を追いかけた。
「…アホやな。私のこと、好きなくせに」
見えなくなりそうな永沢くんの背中に向かって、私は大声で怒鳴った。
「正直にならんと、あかんよ。私かて、もうずっと、ずうっと待ってたんやからね。もう待ったらへんのやからね。あんたなんか、もう二度と誰にもモテへんよ」
豆つぶくらいに小さくなった永沢くんは、振り返りながら大声で怒鳴り返した。
「アホはそっちやん。そーや、どうせおれはモテへん。だからな、どうせやったら、もうちょっと待ったれや」
「あいつと付き合うことにしたん?」
校門の前でばったり会った永沢くんは、長い長い沈黙の後、独り言のように言った。
「ん? なに?」
私は、永沢くんの突然の台詞に慌てながら返事をした。
「なんかゆうてたやん。ゆかりに、昨日話しとったやん。バスケット部のなんたらと付き合うとかなんとか」
「ああ、佐藤くんね」
「そんな名前やったっけか。そんで、どないしたん」
「あ、うん。つきあってっていわれたから」
「つきあうんか」
「ん〜。どうしようかな…」
ちらっと永沢くんの顔を見た。ぶすっとしてる。ちょっと笑っちゃう。
「なんや、迷ってるんか。ま、ええんちゃう」
永沢君は、そっぽをむいたままで言った。
「けど、そいつもたいがい物好きやな。なにも安田なんか選ばんかて」
けけっと笑って、ひらりと自転車に飛び乗った。
「大原とか、山下とか、バスケ部にはかわいい子、ぎょーさんおるのにな。ま、ふられんようにな。おまえなんか、もう二度とモテへんやろうし」
手をひらひらっと振ってみせた後、永沢くんは校門の前の長い坂を一気に駆け降りていった。黄色いシャツの背中が、どんどん小さくなっていく。地平線に沈みかけた夕陽がまぶしくて、目を細めないとよく見えない。私は目の上に手をかざし、どこまでもどこまでも永沢くんの背中を追いかけた。
「…アホやな。私のこと、好きなくせに」
見えなくなりそうな永沢くんの背中に向かって、私は大声で怒鳴った。
「正直にならんと、あかんよ。私かて、もうずっと、ずうっと待ってたんやからね。もう待ったらへんのやからね。あんたなんか、もう二度と誰にもモテへんよ」
豆つぶくらいに小さくなった永沢くんは、振り返りながら大声で怒鳴り返した。
「アホはそっちやん。そーや、どうせおれはモテへん。だからな、どうせやったら、もうちょっと待ったれや」
(続きは電子書籍で!)
登録日:2010年08月17日 19時56分
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