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キラーメガネ
著者:キラーメガネ(きらーめがね)
1976年生。愛知県在住。かつては大手SNSサイトにて短編小説を公表。第7回星の砂賞・超短編部門にて『灰色の告白』で審査員特別賞。Pixiv×講談社BOX-AiR&ITANショートストーリー大賞では『極・人生ゲーム』にて大賞受賞。騒人ではユーモア短編集である『笑撃波シリーズ』をメインに発表している。また初のホラー短編集である『お呪い申し上げます』もマイカ出版より発売中。
小説/現代
【電子書籍】キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 嘲ら笑い編
爆笑間違いなし! SNSで小説を発表し人気を博したキラーメガネ氏のユーモア短編集第六弾。「めっちゃマッチョ☆筋肉メール」は、恋人と別れた順子。やり直したい熱い思いをメールにしたためたが文章改編ウイルスに感染していたため、とてつもなくマッチョなメールに……。「武士SNS」では、武士が集うSNSで煽りを受け激高する更級門左衛門。純粋な武士のリアクションが面白い。「見たら死ぬ」は、女の霊に取り憑かれたパソコンの除霊方法に吹き出すこと必然。「○フレ」。夢枕に立った神様に真っ先にお願いしたのは、○フレが欲しい! だった。しかし、噛んでしまった哲平の前に現れたのは……。笑えて泣けるショートショート集です。

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立ち読み

キラーメガネのユーモア短編集 笑撃波 嘲ら笑い編


 黒ずんだ血液


 ヴィジュアル系バンド『Black Blood』は、今年で結成60年を迎えた。
 ヴォーカルの鏡夜キョウヤは、齢82歳となり、ギターの憐レンも、ベースの哀歌アイカも、共に80歳を超えた。
 だが、彼らはバンドをやめなかった。
 バンド結成当時、鏡夜は皆に言ったものだ。
「俺達は猛スピードで走るTrainなのさ。そう、途中駅などないTrain。ひたすらに突き進むTrain。終着駅に辿り着くまで決して止まらないTrainなのさ」
 ギターをいじりながら憐は思う。

『とは言っても、いくらなんでもそろそろ引退すべきでは』と。

 当時のバンド仲間も、とうに引退し、穏やかな余生を過ごしている。
 どうして自分達だけ、いまだに化粧をし、カラコンを付け、薄くなった毛髪を染め続けなくてはならないのか。
「そろそろ引退せんかね?」
 先日、憐は鏡夜にそう尋ねた。
 すると、鏡夜はこう言った。
「ワシらはの、猛スピードで走るTrain電車なんじゃ。途中駅などないTrain電車。ひたすらに突き進むTrain電車。終着駅に辿り着くまで決して止まらぬTrain電車なんじゃ……プップー、発車します」
 「プップー」とか最後の方、ちょっとボケてきてるのかな、とも思った。あと「Train電車」ってなんなんだ、とも思った憐だったが、よく考えるとこれは凄いことであると考え直した。
 鏡夜は数十年経った今でも、あの頃の意志を保ち続けているのだ。
 ならば自分も走り続けるしかあるまい。
 そう、鏡夜の言う終着駅に辿りつくまで……。


 ライブ当日。楽屋にてバンド唯一の紅一点、哀歌はニコニコと微笑みながら昆布茶をすすっていた。
 哀歌は70を過ぎた頃から、何も喋らなくなり、ただニコニコと微笑んでいるだけの置物のようになってしまった。それでも演奏が始まると、どうにかこうにかベースを弾きこなすところが哀歌のすごいところだと思う。
 隣の鏡夜を見ると、彼も昆布茶をすすっていた。『皆どれだけ昆布茶が好きなのだろう』と思いながら、憐はため息を吐いた。
 すると、
「レンサン! キョウモ、ガンバリマショウネ!!」
 ドラムの『アボリジニー』がそう言った。
 鏡夜、憐、哀歌、そして『アボリジニー』……この4人は結成当初から変わっていない『Black Blood』のオリジナルメンバーだ。
「ふざけんなよ! どうして一人だけオーストラリア人で、カナ文字なんだよ!! 俺は認めねぇ! アボリジニーだけは認めねぇぞ!!」
 若い時、憐はそう憤ったこともあったが、それも遠い昔の話。今は『アボリジニー』もかけがえのない大事なメンバーである。ちなみにアボリジニーは90歳で一番年上であり、メンバーで一番体を壊している。
「……そろそろ、いくべえか」
 やがて四人はヨボヨボとステージに向かう。
 準備には若い頃の数十倍の時間が掛かったが、ようやくヴォーカルの鏡夜が震える手でステージ上、マイクを握った。
 そして観客席に向かい、ゆっくりと喋り始めた。
「お集まりの皆々様方……新曲、作ったんで聞いてくらはい……新曲……えぇとなんだっけ……ああ、そうそう『Death Trap』……ゴホッ」


Death Trap

作詞 鏡夜
作曲 アボリジニー

 幾重にも仕掛けられた愛の罠
 かいくぐれなくて僕は君に服従する
 君を愛せば愛すほど
 僕は傷つき 悩み狂う
 僕は愛の奴隷なの
 それとも哀れな死の奴隷

 それにしても孫は可愛い
 なんでこんなに可愛いのかのう 孫と言う名の贈り物(MAGO is Treasure)
 孫がいれば後は何もいらぬ(MAGO is Everything)
 本当に本当に孫は可愛い(MAGO is Forever)
 年末にはお年玉をいっぱいあげるから(Too much ゛Otoshidama゛)

 もっとおじいちゃんのところに遊びにきてね(Come and hold me tight)

 狂おしい愛情(Death Trap)
 避けられない誘惑(Death Trap)
 ヒザに水が溜まる(Death Trap)
 驚くほど早く目が覚める(Death Trap)
 いつもどこかしら体が痛い(Death Trap)
 盆栽を壊したのは誰だ(Death Trap)
 孫だったのか(Death Trap)
 なら別に良い(Death Trap)


 最後にひときわ激しく「デス・トラーーーップ!」と叫んだ時、鏡夜の入れ歯が飛んだ。
 そしてカランコロンと寂しい音を立て、誰もいない前列の観客席へと消えていった。
 ……憐は前方を見る。
 誰一人観客のいない観客席を。
 ……憐は辺りを見回す。
 オーナーが友人なので、哀れんで安く貸して貰っている、だだっ広いステージを。
 ……憐は、振り返ると、背後のメンバーを見た。
 入れ歯が取れて「フガフガ」言っている鏡夜。
 置物のような哀歌。
 いつまでも日本語の上達しないアボリジニー。
 不意に憐――溝口憐太郎みぞぐち れんたろうは雷が落ちたように、瞬間的に理解した。
 ――ワシらはもうとっくに終着駅に辿り着いていたんじゃなぁ……。
 もう本当に今日で引退しよう。
 皆で盆栽をしよう。
 皆で熱いお茶をすすろう。
 孫と一緒に楽しい余生を過ごすのだ。
 そう。いつまでも走り続ける列車など、この世にはないのだから。
(続きは電子書籍で!)
登録日:2015年08月20日 15時35分
タグ : コメディ 笑撃波

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