
著者:天野雅(あまのみやび)
埼玉県生まれ、千葉県育ちの関東人だった。結婚を機に関西の人間になる。現在は関西とも東海ともいえる近畿地方に在住。10年経って方言にも慣れた。血液型はマイペースで知られるB型。住めば都を地で行く性質。ネット作家歴20年。同人作家歴はプラス5年。趣味は映像鑑賞。写真撮影。歌唱。創作料理。好物は自然万物一般。美術芸能一般。パソコン。ゲーム。漫画。文章。
小説/現代
風が哭く(1)
[連載 | 完結済 | 全7話] 目次へ
なぜ、屋上にいるのか謎のまま起き上がり、目をやった先には黒い革靴が揃えてあった。一方、美男美女の姉弟――遥子と逍太はその夜、何かを感じていた。そして登校中、雑居ビルの足元にうずくまる物体を見つけ……。
プロローグ
目の前に広がる黒い深淵。
なぜか自分の鼓動も呼吸音も何も聞こえない。耳鳴りすら錯覚だ。感じるのはただ肌を刺す凍てついた空気。
絶望に近いほどの孤独――
全身が鉛と化したかのように重い。彼はなんとかしてその場から逃れたかった。必死に、その場所から。
しかし酸素も満足に吸えないのだ。肺がキリリと痛み、脳が爆発しようと膨張を始める。
動くどころか息すらつけない……焦り? いや違う、この暗闇の中で何かが彼を放さないのだ。
それでも走ろうとした。彼は夢中で、両手をのばす。どこへ? 前へ――彼を見つけて、そこから連れ出してくれる人を探して。
た……すけ……て。
くちびるしか動かない。声が出なかった。
両足をひきずって走る、いや走ってなどいない、ずりずりとミリ単位で這う彼は昆虫以下の存在だった。2本の足は枷となって、彼をその場に釘づけにしようとしている。
こんな足いらない――!
彼はもがく。発狂しそうな闇の中で、ひたすら出口を求める。
誰か、助けてくれッ! 僕は何も悪いことなんてした覚えないのに! なんでこんな目にあわなきゃならないんだ!?
『私モ、ソウナノ』
瞬間。彼の全身は感電したかのように痺れ、頭の中に声が響いた。
誰だ……?
彼は身体をかたくして、見えない周囲へせわしなく視線を飛ばした。どこかで聞いた声だった。暗闇には不似合いな、あどけなさの残る、若い女の声だ。
『私モ、ココカラ出ラレナイノ。何モ悪イコトシテナイノニ。助ケテクレル?』
そんなこと言ったって、僕だって出口を探してるところなんだ。
『出口ナラ私、知ッテルワ。ダケドモウ力尽キテシマッテ動ケナイノ。一緒ニ連レテ行ッテクレル?』
出口を知ってるのか。それなら一緒に行こう、こんなところにいたら自分が自分でなくなりそうだよ。
心の中で答えた時、彼は声の持ち主を思い出した。驚いて、目の前の深淵へ彼女を求めて手をさしのべる。
さあ……きみとこんなところで会うなんて、思ってもみなかったけど。早くつかまって。
『アリガトウ――』
※
深夜2時。
月の光に照らされて、静まり返ったその街で、突然多数の犬の――飼い犬と野良犬の区別もなく――激しい遠吠えが空気を震わせた。
それは数秒のことだった。喧騒は文字通り闇に消え、飛び起きた人間にさえ記憶されずに終わったのである。
そう――普通の人間ならば。
ベッドの中で寝返りを打ち、天理遥子(てんりようこ)はしっかりと焦点の定まった目を天井へ向けた。
「風が……」
枕の位置から続き間への襖がある。暗がりの中でそこが数センチ開いたのは遥子のつぶやきと同時だった。
彼女は驚かず、胸騒ぎもつとめて押さえた声で言った。
「……逍ちゃんも感じた?」
「ああ」
こちらも感情を封じて小さなうなずきが、室内に落ちた。
ACT.1
気がつくと、閉じたまぶたがまばゆい光を感じて痛かった。
反射的に目を開けると、視界はハレーションを起こした。
近くから雀の鳴き声が聞こえる。
「う……」
彼はうめいて、身体の下敷になっていた両腕を無意識に動かした。首をめぐらせようとしたが肩や背中にかけて筋を傷めたようで堅く、回らない。
仰向けになって上半身を起こそうとすると、肘や膝の関節がまるでせまい場所に長いこと閉じ込められていたように鈍く麻痺していて力が入らなかった。
頭の中身も綿か発泡スチロールが詰まっているみたいだ。思考できない。
ぼやけた視野が明るさに慣れていくのに、多少時間がかかる。体も徐々に動かせるようになった。
ようやく辺りを見回すと、そこは朝の光を一杯に受けた、どこかの建物の屋上だった。
冷たい空気が頬を撫で、陽射しから熱をうばっていく。
「――え。どこだここ? なんで……」
頭上は清涼な空だった。
コンクリートの上にじかに横になっていたらしい。身体が痛むのも、無理もない。
10月の朝は澄んだ空気と薄い雲の向こうに強烈な太陽を迎え、すがすがしく張りつめていた。普通なら布団を一気にはねのけ伸びをして、雨戸を開けて深呼吸をする頃だ。
だが今の彼は、秋晴れの朝の光景にさえ心を許せない、暗い警戒を抱えていた。
何か怖い夢を見ていたような気がする。
身体を少しずつ起こして自分へ目を向けると、学制服を着ていることが分かった。開襟シャツに詰襟のガクラン、黒いズボンに目立つ白いホコリをはたく。毎日通っている中学の制服だ。内ポケットの縫い取りを確認する。
確かに自分のものだ。
急に寒気を感じて、彼はたて続けにくしゃみをした。太陽の光はまだ彼を温めていなかった。まさか夜通しここで寝ていたのだろうか? 風邪をひくかもしれない。
だが彼の頭を占めるのは、そんなことではなかった。昨夜はいつものように自分の家で、自分の部屋の布団に入って休んだはずだ……。
足元に見慣れた黒革の学生鞄が落ちていて、その下に薄いノートが見えた。鞄は彼のものだが、ノートは違う。見覚えがない。
「?」
手に取ると、朝日を受けてビニールの表紙が輝いた。
拾いあげ数ページめくってみたが、シャープペンで書いたらしい筆圧の弱いこまごました文字が紙面を埋めているだけで、裏表紙にも記名は見当たらない。
預かっておくことにして鞄を開けると、中には教科書や筆記用具がキチンと詰まっていた。昨夜自分が入れておいた通り、今日の授業内容が揃っている。
彼は首を傾げながら立ち上がった。
ざっと3メートル離れたところに、この屋上を囲む金網があった。その先に赤い骨組みをさらした鉄塔……地元の放送局が見える。
ようやく彼は、自分が家から徒歩で30分も離れた場所にいると理解した。
その鉄塔は市街を横断する大通りに面してあり、向かいには背が低くて見えないが消防署や警察署があるはずだった。通りを左へ行くと踏切に突きあたり、右へ行くと神社を祭った小さな山をかすめて過ぎる。
今、彼の視線の先である消防署の向こう側には青々と広がる公園の木々が見えていて、その先にひとめで校舎と分かるコンクリート造りの建物が白く朝日を反射して建っていた。
桜井市立東中学校。彼はそこの1年生なのだ。
どうしてここに自分がいるのかという謎をそのままに、彼は背後にドアを見つけて歩きだした。エレベーターか階段があるだろう。
……ふと、彼は再度、鉄塔へ目をやった。なぜか感覚がひかれたのだ。金網に添って、右へと視線がいく。
鉄塔に面した金網の手前、白く映えるコンクリートの上に、ぽつんと黒い点があった。
目を凝らすと、それはキッチリと揃えて置かれた一足の黒い革靴だった。
※
台所に入ってきた遥子を見て、今年で勤続7年になる家政婦は、もう少しで飲みかけたコーヒーを吹き出すところだった。
「……おっ、おはようございます」
慌てて椅子を立ち、テーブルの上の朝食を下げようとする彼女へ、
「おはよう。気にしないで食べててよ、和科子さん」
言って、遥子はサラリと腰までのびたストレートの黒髪を揺らして左手の食器棚へ歩いた。扉を開き茶色いビンを取り出す。
「あらっ、せっかく早起きなさったんですから……今パンを焼きますよ」
遥子はてのひらに白い錠剤を3粒落とし、しなやかな動作で口へ放りこんだ。
かじりかけの食パンを口の中へつっこもうとしていた和科子は、目をうばわれて中腰のまま手を止めてしまう。7年間……遥子が10歳の時から見てきたので、慣れっこにはなっているのだが、遥子に無機的な薬物はどうしても似合わないと思う。
それとも、これほど似合う組み合わせもないと言えるだろうか。
人の目を釘付けにして放さない遥子の気質は、倍も生きている和科子に真似できないのは当然だし、ついぞ他に目にしたことも稀である。
自分が高校生だった頃を考えるまでもなく、遥子は賞賛と羨望の対象なのだった。
すっきりと長い手足、繊細な指、細い首、いたずらっぽく輝く瞳には無邪気さと大人びた若さが同居する。高貴な――真の上流社会に暮らす優雅な人種から我が子のような扱いを受けられる猫でいて、人間とは決して相入れない野性味も時折しぐさに見え隠れする。
長年変わらず勤めてきた和科子にとって、それを知っていることが誇りでもあった。
普通の令嬢には既製品の無粋さで浮いてしまうセーラー服も、遥子ならば逆に難なく着こなして生徒達に溶けこむのだった。
「食欲ないから、これでいいわ」
遥子のひとことで、和科子は我に返る。口の中のパンをコーヒーで飲みくだした。
「じゃあ、せめてサラダでも作りますから」
「それ僕がもらおうかな。遥子の早起きはいつもの気まぐれだから、気にしなくていいんじゃない。まだ6時半だもんね。きっと胃はまだ夢の中だよ」
入口から別の声が飛んできた。今朝初めて聴くそれは和科子に向けたものだったが、なんとも答えるより早く遥子が振り向いた。
「逍ちゃん、その言い方はあんまりじゃない?」
遥子に負けす劣らず――紺のブレザーをぴたりと着こなして、それもそのはず、入って来たのは遥子の双子の弟なのだ。
「そうかなあ? いつも8時近くにやっと下りてくるのは誰だっけ」
和科子と朝の挨拶を交わしたあと、彼はそう言ってちらりと笑みを浮かべた。
背丈は遥子より高い。ついでに言うと和科子は遥子より低い。それは和科子が標準より低いせいなのであって、彼ら2人はクラスの真ん中辺りにいるのだが……それにしても中学時の変声期前までは違いといえばその程度で、線の細さや人をくったようにきらめく瞳、ショートカットの髪型も――二卵性であるはずなのにまさに遥子が2人いるかのようだったのだ。
「なっまいきー。和科子さん、コイツにエサやんなくていいからね」
「あっ、ちゃんといつも通り3枚焼いて。1枚はジャムをたっぷり塗ってさ。遥子と違って僕は食べるよ。あとハムエッグもヨロシク」
「逍ちゃんそんなに食べて、太ったら他人のフリするからね」
「育ち盛りの少年と、遥子を一緒にしないでほしいな」
「なにそれっ。少年ていうのはね、もっとかわいげがあるもんよ」
今は成長する一方で、日を追うごとに両者の差が顕著になる。
男女の部分で体つきもそうだが、それ以外なら髪だ。漆黒な遥子と対象的に、弟の方は前髪の一部だけどういうわけか徐々に色が落ち、陽に透けると茶色から金に見えるほどになってしまった。姉はくせがなく伸ばしているが、彼の髪質は若干ウェーブがかかっているので短めにカットしている。
たった2、3年の間に2人はウリふたつとは言えなくなった。
急激な変化に戸惑っているらしいが、仲の良さに変わりはないのだ。
細かいところが変わったとはいえ、顔つきは同レベルで甲乙つけがたい美男美女である。少々口は悪いが、中世の物語から抜け出した王子と王女が実は高校生でしたというオチだったのかと思わせる。姉弟なのに毎年校内の『ベスト・カップル』に選ばれたとの伝説を中学に残し、実績は現在の高校で更新中なのだった。
「まあまあ、朝から。今とびっきりのを御用意しますから、お待ちくださいませ」
つい見とれてしまいそうになる。頭をふりふり、和科子はようやく目をそらして立ち上がった。
「あんまり時間がないのよ。ホントに悪いけど、私いらないから」
「……お急ぎの御用なんですか?」
流しへ食器を持って行こうとした和科子は疑問を口にして顔を向けたが、開いたドアの隙間から廊下へと流れ去る黒髪をみとめただけだった。
「ショータッ」
思い出したように、廊下から声が響いた。
「時間あるでしょ手伝って。今日の髪はシニヨンにするから」
「手伝いますから呼び捨てはやめて、お願い、お姉サマ」
和科子の問いは耳に届かなかったのか、遥子へ情けなさそうに答える弟は家政婦に背を向けて、食器棚へ茶色いビンを戻すところだった。
「……いい天気なのにね」
見上げて、遥子はつぶやいた。
左右に並ぶ5階以上の高いビルの列が、ゆっくり後方へと流れ去っていく。
市街地の中心部を横断する大通り。
空はほんの一部分を青い帯にして見せているだけだ。それでも澄んだ蒼穹は明けきった陽光にうっすらとかすみ、秋の訪れを告げていた。
右側の車道を通勤途中らしいマイカーが、たまに数珠つなぎになりながら走り抜けていく。通りの両側にある歩道では、駅へ急ぐ通勤姿のサラリーマンや朝練に向かう学生などが、ぽつりぽつり、足早に歩いている。
けれど学生服姿の運転する自転車はほとんど見えない。この先にある桜井市立東中学校では、生徒の自転車通学をいまだに禁止していた。
遥子と逍太の通う高校は、そんなことはない。バイク通学の生徒すらいたりする。
「この辺かな」
言って、ハンドルから左手を放すと逍太は腕時計に目をやった。
『気まぐれの早起き』が功を奏し、文字盤は現在7時半。始業のチャイムまでは余裕たっぷり、1時間近くある。
左側の歩道を道なりにカーブすると、放送局の古ぼけたビルが赤茶けた鉄塔を背にして正面、交差点の左向かいの角に現れた。右向かいには消防団と警察署の建物が見える。
向こう側へ渡る前に横断歩道の信号が赤に変わり、逍太は自転車のブレーキをかけた。
「……近いわね」
背中で遥子も応じる。
天理といえば、ここ桜井市一帯では名の知れた有力事業主である。しかしこの街に所有する個人宅は控え目なもので、遥子と逍太は街の北側に位置する小さな山のふもとに住んでいた。
実は古くからそこにある常地神社が母の実家であり、祖母が健在だ。
平日の早朝から夜までは家政婦、それ以外はもっぱら祖母と生活を共にして、双子の姉弟は毎日を過ごしてきた。父と母は別々の仕事を抱えて、それぞれ国内外を飛びまわっている。
そういう事情を除けば、お抱え運転手がいるわけでもないし、普通の家庭と変わりないと思う。寂しいと感じることはあまりない。
山を下りる道から合流する大通りと平行に、繁華街のある隣の駅へと線路が走っている。
今、逍太達が待っている信号をまっすぐ行けば踏切に出て、右へ行くと噴水と広い芝生のある桜井公園、越えると間もなく左側が2人の通う高校になる。校庭からは線路の向こう側がよく見渡せるわけだが、最近建てられた公団住宅の隙間にも校舎が見つかる。2人の母校でもある、頭の固い中学校だ。生徒達は縮めて桜井東、略して東中などと呼ぶ。
「逍ちゃん、青」
「はいはい」
荷台に坐った遥子に言われるまでもなく、逍太はペダルの足に力を込めていた。
信号を渡り、鉄塔を過ぎたところで小さな路地――左へ曲がる。
放送局の一角を左に見た裏手、右側に建つ銀行からその奥、陽の射さない薄汚れたビジネスホテルを過ぎて更に右の路地へと回りこんだ、細い道。
自転車を止めた逍太の背中から、鞄をふたつ抱えて下りた遥子は、吐き捨てるように言った。
「ケーサツもたまんないわね、目の前じゃない」
人通りはない。ノラの姿もない。左にあるビルの高い部分が白い光を反射して、道端を明るくしているだけだ。
ビジネスホテルを右角に見て、その奥を占めるのは、打って変わって吹けば飛ぶよな木造の2階家の連なり。ガラリの扉に赤ちょうちんや縄のれんの下がった、のんべえ通りである。
近くにモグリの映画館や、はやらない写真館などもあるだろう。この一帯にとって、朝は『夜』なのだ。
大通り添いの街の中心部――に見えて、桜井市とはこういうところなのだった。
左側の、白い壁の建物――一応は大通りから見える位置にあるからか、こちらは身なりを整えた紳士風の(だがかなりお歳を召している)――敷地面積はせまいくせに6階建てという見栄っぱりな雑居ビルの足元を、遥子は凝視して動かないでいる。
「……『いない』みたいね?」
逍太の同意を待ったが、何も聞こえてこないので振り向くと、サドルに坐ったまま自転車を片足で支えたかっこうでハンドルにつっぷしているので驚いた。
「ちょっとしっかりしてよ、アレ飲んでこなかったの?」
「飲ん……だ」
くぐもった声で、逍太は答えた。息が絶え絶えになっている。
「やだなあ、脱け殻なんだから、どってことないじゃない」
わざと遥子は、踵を高く鳴らして雑居ビルの足元……にうずくまる物体へと近付いた。
「ほら、怖くないってば」
楽しそう、とまではさすがにいかないが、声量は押さえても明るい声で、遥子は言って、ターンまでしてみせた。スカートのプリーツがひらりと舞う。
「オレ……」
逍太が重ねた腕から数センチ顔をあげた。土気色だ。額に脂汗まで浮かべて。
あ、ダメだわ、と遥子は思った。
端正な造りが悲壮に歪んでしまっている。
目だけは向けずに、ようやく聞き取れる声で逍太が続けた。
「初めて……ナマの……し……たい」
「それは私だって同じ――」
ぐぐうっ、と逍太のノドが音をたてた。
恐らくは自らの血によってどす黒く変色した地面に横たわる、息絶えた少女の亡殻は奇妙にねじれていた。
遥子はそれを目の隅でとらえながら、バランスを崩して自転車もろともアスファルトに倒れこもうとする弟へと駆け寄った。
目の前に広がる黒い深淵。
なぜか自分の鼓動も呼吸音も何も聞こえない。耳鳴りすら錯覚だ。感じるのはただ肌を刺す凍てついた空気。
絶望に近いほどの孤独――
全身が鉛と化したかのように重い。彼はなんとかしてその場から逃れたかった。必死に、その場所から。
しかし酸素も満足に吸えないのだ。肺がキリリと痛み、脳が爆発しようと膨張を始める。
動くどころか息すらつけない……焦り? いや違う、この暗闇の中で何かが彼を放さないのだ。
それでも走ろうとした。彼は夢中で、両手をのばす。どこへ? 前へ――彼を見つけて、そこから連れ出してくれる人を探して。
た……すけ……て。
くちびるしか動かない。声が出なかった。
両足をひきずって走る、いや走ってなどいない、ずりずりとミリ単位で這う彼は昆虫以下の存在だった。2本の足は枷となって、彼をその場に釘づけにしようとしている。
こんな足いらない――!
彼はもがく。発狂しそうな闇の中で、ひたすら出口を求める。
誰か、助けてくれッ! 僕は何も悪いことなんてした覚えないのに! なんでこんな目にあわなきゃならないんだ!?
『私モ、ソウナノ』
瞬間。彼の全身は感電したかのように痺れ、頭の中に声が響いた。
誰だ……?
彼は身体をかたくして、見えない周囲へせわしなく視線を飛ばした。どこかで聞いた声だった。暗闇には不似合いな、あどけなさの残る、若い女の声だ。
『私モ、ココカラ出ラレナイノ。何モ悪イコトシテナイノニ。助ケテクレル?』
そんなこと言ったって、僕だって出口を探してるところなんだ。
『出口ナラ私、知ッテルワ。ダケドモウ力尽キテシマッテ動ケナイノ。一緒ニ連レテ行ッテクレル?』
出口を知ってるのか。それなら一緒に行こう、こんなところにいたら自分が自分でなくなりそうだよ。
心の中で答えた時、彼は声の持ち主を思い出した。驚いて、目の前の深淵へ彼女を求めて手をさしのべる。
さあ……きみとこんなところで会うなんて、思ってもみなかったけど。早くつかまって。
『アリガトウ――』
※
深夜2時。
月の光に照らされて、静まり返ったその街で、突然多数の犬の――飼い犬と野良犬の区別もなく――激しい遠吠えが空気を震わせた。
それは数秒のことだった。喧騒は文字通り闇に消え、飛び起きた人間にさえ記憶されずに終わったのである。
そう――普通の人間ならば。
ベッドの中で寝返りを打ち、天理遥子(てんりようこ)はしっかりと焦点の定まった目を天井へ向けた。
「風が……」
枕の位置から続き間への襖がある。暗がりの中でそこが数センチ開いたのは遥子のつぶやきと同時だった。
彼女は驚かず、胸騒ぎもつとめて押さえた声で言った。
「……逍ちゃんも感じた?」
「ああ」
こちらも感情を封じて小さなうなずきが、室内に落ちた。
ACT.1
気がつくと、閉じたまぶたがまばゆい光を感じて痛かった。
反射的に目を開けると、視界はハレーションを起こした。
近くから雀の鳴き声が聞こえる。
「う……」
彼はうめいて、身体の下敷になっていた両腕を無意識に動かした。首をめぐらせようとしたが肩や背中にかけて筋を傷めたようで堅く、回らない。
仰向けになって上半身を起こそうとすると、肘や膝の関節がまるでせまい場所に長いこと閉じ込められていたように鈍く麻痺していて力が入らなかった。
頭の中身も綿か発泡スチロールが詰まっているみたいだ。思考できない。
ぼやけた視野が明るさに慣れていくのに、多少時間がかかる。体も徐々に動かせるようになった。
ようやく辺りを見回すと、そこは朝の光を一杯に受けた、どこかの建物の屋上だった。
冷たい空気が頬を撫で、陽射しから熱をうばっていく。
「――え。どこだここ? なんで……」
頭上は清涼な空だった。
コンクリートの上にじかに横になっていたらしい。身体が痛むのも、無理もない。
10月の朝は澄んだ空気と薄い雲の向こうに強烈な太陽を迎え、すがすがしく張りつめていた。普通なら布団を一気にはねのけ伸びをして、雨戸を開けて深呼吸をする頃だ。
だが今の彼は、秋晴れの朝の光景にさえ心を許せない、暗い警戒を抱えていた。
何か怖い夢を見ていたような気がする。
身体を少しずつ起こして自分へ目を向けると、学制服を着ていることが分かった。開襟シャツに詰襟のガクラン、黒いズボンに目立つ白いホコリをはたく。毎日通っている中学の制服だ。内ポケットの縫い取りを確認する。
確かに自分のものだ。
急に寒気を感じて、彼はたて続けにくしゃみをした。太陽の光はまだ彼を温めていなかった。まさか夜通しここで寝ていたのだろうか? 風邪をひくかもしれない。
だが彼の頭を占めるのは、そんなことではなかった。昨夜はいつものように自分の家で、自分の部屋の布団に入って休んだはずだ……。
足元に見慣れた黒革の学生鞄が落ちていて、その下に薄いノートが見えた。鞄は彼のものだが、ノートは違う。見覚えがない。
「?」
手に取ると、朝日を受けてビニールの表紙が輝いた。
拾いあげ数ページめくってみたが、シャープペンで書いたらしい筆圧の弱いこまごました文字が紙面を埋めているだけで、裏表紙にも記名は見当たらない。
預かっておくことにして鞄を開けると、中には教科書や筆記用具がキチンと詰まっていた。昨夜自分が入れておいた通り、今日の授業内容が揃っている。
彼は首を傾げながら立ち上がった。
ざっと3メートル離れたところに、この屋上を囲む金網があった。その先に赤い骨組みをさらした鉄塔……地元の放送局が見える。
ようやく彼は、自分が家から徒歩で30分も離れた場所にいると理解した。
その鉄塔は市街を横断する大通りに面してあり、向かいには背が低くて見えないが消防署や警察署があるはずだった。通りを左へ行くと踏切に突きあたり、右へ行くと神社を祭った小さな山をかすめて過ぎる。
今、彼の視線の先である消防署の向こう側には青々と広がる公園の木々が見えていて、その先にひとめで校舎と分かるコンクリート造りの建物が白く朝日を反射して建っていた。
桜井市立東中学校。彼はそこの1年生なのだ。
どうしてここに自分がいるのかという謎をそのままに、彼は背後にドアを見つけて歩きだした。エレベーターか階段があるだろう。
……ふと、彼は再度、鉄塔へ目をやった。なぜか感覚がひかれたのだ。金網に添って、右へと視線がいく。
鉄塔に面した金網の手前、白く映えるコンクリートの上に、ぽつんと黒い点があった。
目を凝らすと、それはキッチリと揃えて置かれた一足の黒い革靴だった。
※
台所に入ってきた遥子を見て、今年で勤続7年になる家政婦は、もう少しで飲みかけたコーヒーを吹き出すところだった。
「……おっ、おはようございます」
慌てて椅子を立ち、テーブルの上の朝食を下げようとする彼女へ、
「おはよう。気にしないで食べててよ、和科子さん」
言って、遥子はサラリと腰までのびたストレートの黒髪を揺らして左手の食器棚へ歩いた。扉を開き茶色いビンを取り出す。
「あらっ、せっかく早起きなさったんですから……今パンを焼きますよ」
遥子はてのひらに白い錠剤を3粒落とし、しなやかな動作で口へ放りこんだ。
かじりかけの食パンを口の中へつっこもうとしていた和科子は、目をうばわれて中腰のまま手を止めてしまう。7年間……遥子が10歳の時から見てきたので、慣れっこにはなっているのだが、遥子に無機的な薬物はどうしても似合わないと思う。
それとも、これほど似合う組み合わせもないと言えるだろうか。
人の目を釘付けにして放さない遥子の気質は、倍も生きている和科子に真似できないのは当然だし、ついぞ他に目にしたことも稀である。
自分が高校生だった頃を考えるまでもなく、遥子は賞賛と羨望の対象なのだった。
すっきりと長い手足、繊細な指、細い首、いたずらっぽく輝く瞳には無邪気さと大人びた若さが同居する。高貴な――真の上流社会に暮らす優雅な人種から我が子のような扱いを受けられる猫でいて、人間とは決して相入れない野性味も時折しぐさに見え隠れする。
長年変わらず勤めてきた和科子にとって、それを知っていることが誇りでもあった。
普通の令嬢には既製品の無粋さで浮いてしまうセーラー服も、遥子ならば逆に難なく着こなして生徒達に溶けこむのだった。
「食欲ないから、これでいいわ」
遥子のひとことで、和科子は我に返る。口の中のパンをコーヒーで飲みくだした。
「じゃあ、せめてサラダでも作りますから」
「それ僕がもらおうかな。遥子の早起きはいつもの気まぐれだから、気にしなくていいんじゃない。まだ6時半だもんね。きっと胃はまだ夢の中だよ」
入口から別の声が飛んできた。今朝初めて聴くそれは和科子に向けたものだったが、なんとも答えるより早く遥子が振り向いた。
「逍ちゃん、その言い方はあんまりじゃない?」
遥子に負けす劣らず――紺のブレザーをぴたりと着こなして、それもそのはず、入って来たのは遥子の双子の弟なのだ。
「そうかなあ? いつも8時近くにやっと下りてくるのは誰だっけ」
和科子と朝の挨拶を交わしたあと、彼はそう言ってちらりと笑みを浮かべた。
背丈は遥子より高い。ついでに言うと和科子は遥子より低い。それは和科子が標準より低いせいなのであって、彼ら2人はクラスの真ん中辺りにいるのだが……それにしても中学時の変声期前までは違いといえばその程度で、線の細さや人をくったようにきらめく瞳、ショートカットの髪型も――二卵性であるはずなのにまさに遥子が2人いるかのようだったのだ。
「なっまいきー。和科子さん、コイツにエサやんなくていいからね」
「あっ、ちゃんといつも通り3枚焼いて。1枚はジャムをたっぷり塗ってさ。遥子と違って僕は食べるよ。あとハムエッグもヨロシク」
「逍ちゃんそんなに食べて、太ったら他人のフリするからね」
「育ち盛りの少年と、遥子を一緒にしないでほしいな」
「なにそれっ。少年ていうのはね、もっとかわいげがあるもんよ」
今は成長する一方で、日を追うごとに両者の差が顕著になる。
男女の部分で体つきもそうだが、それ以外なら髪だ。漆黒な遥子と対象的に、弟の方は前髪の一部だけどういうわけか徐々に色が落ち、陽に透けると茶色から金に見えるほどになってしまった。姉はくせがなく伸ばしているが、彼の髪質は若干ウェーブがかかっているので短めにカットしている。
たった2、3年の間に2人はウリふたつとは言えなくなった。
急激な変化に戸惑っているらしいが、仲の良さに変わりはないのだ。
細かいところが変わったとはいえ、顔つきは同レベルで甲乙つけがたい美男美女である。少々口は悪いが、中世の物語から抜け出した王子と王女が実は高校生でしたというオチだったのかと思わせる。姉弟なのに毎年校内の『ベスト・カップル』に選ばれたとの伝説を中学に残し、実績は現在の高校で更新中なのだった。
「まあまあ、朝から。今とびっきりのを御用意しますから、お待ちくださいませ」
つい見とれてしまいそうになる。頭をふりふり、和科子はようやく目をそらして立ち上がった。
「あんまり時間がないのよ。ホントに悪いけど、私いらないから」
「……お急ぎの御用なんですか?」
流しへ食器を持って行こうとした和科子は疑問を口にして顔を向けたが、開いたドアの隙間から廊下へと流れ去る黒髪をみとめただけだった。
「ショータッ」
思い出したように、廊下から声が響いた。
「時間あるでしょ手伝って。今日の髪はシニヨンにするから」
「手伝いますから呼び捨てはやめて、お願い、お姉サマ」
和科子の問いは耳に届かなかったのか、遥子へ情けなさそうに答える弟は家政婦に背を向けて、食器棚へ茶色いビンを戻すところだった。
「……いい天気なのにね」
見上げて、遥子はつぶやいた。
左右に並ぶ5階以上の高いビルの列が、ゆっくり後方へと流れ去っていく。
市街地の中心部を横断する大通り。
空はほんの一部分を青い帯にして見せているだけだ。それでも澄んだ蒼穹は明けきった陽光にうっすらとかすみ、秋の訪れを告げていた。
右側の車道を通勤途中らしいマイカーが、たまに数珠つなぎになりながら走り抜けていく。通りの両側にある歩道では、駅へ急ぐ通勤姿のサラリーマンや朝練に向かう学生などが、ぽつりぽつり、足早に歩いている。
けれど学生服姿の運転する自転車はほとんど見えない。この先にある桜井市立東中学校では、生徒の自転車通学をいまだに禁止していた。
遥子と逍太の通う高校は、そんなことはない。バイク通学の生徒すらいたりする。
「この辺かな」
言って、ハンドルから左手を放すと逍太は腕時計に目をやった。
『気まぐれの早起き』が功を奏し、文字盤は現在7時半。始業のチャイムまでは余裕たっぷり、1時間近くある。
左側の歩道を道なりにカーブすると、放送局の古ぼけたビルが赤茶けた鉄塔を背にして正面、交差点の左向かいの角に現れた。右向かいには消防団と警察署の建物が見える。
向こう側へ渡る前に横断歩道の信号が赤に変わり、逍太は自転車のブレーキをかけた。
「……近いわね」
背中で遥子も応じる。
天理といえば、ここ桜井市一帯では名の知れた有力事業主である。しかしこの街に所有する個人宅は控え目なもので、遥子と逍太は街の北側に位置する小さな山のふもとに住んでいた。
実は古くからそこにある常地神社が母の実家であり、祖母が健在だ。
平日の早朝から夜までは家政婦、それ以外はもっぱら祖母と生活を共にして、双子の姉弟は毎日を過ごしてきた。父と母は別々の仕事を抱えて、それぞれ国内外を飛びまわっている。
そういう事情を除けば、お抱え運転手がいるわけでもないし、普通の家庭と変わりないと思う。寂しいと感じることはあまりない。
山を下りる道から合流する大通りと平行に、繁華街のある隣の駅へと線路が走っている。
今、逍太達が待っている信号をまっすぐ行けば踏切に出て、右へ行くと噴水と広い芝生のある桜井公園、越えると間もなく左側が2人の通う高校になる。校庭からは線路の向こう側がよく見渡せるわけだが、最近建てられた公団住宅の隙間にも校舎が見つかる。2人の母校でもある、頭の固い中学校だ。生徒達は縮めて桜井東、略して東中などと呼ぶ。
「逍ちゃん、青」
「はいはい」
荷台に坐った遥子に言われるまでもなく、逍太はペダルの足に力を込めていた。
信号を渡り、鉄塔を過ぎたところで小さな路地――左へ曲がる。
放送局の一角を左に見た裏手、右側に建つ銀行からその奥、陽の射さない薄汚れたビジネスホテルを過ぎて更に右の路地へと回りこんだ、細い道。
自転車を止めた逍太の背中から、鞄をふたつ抱えて下りた遥子は、吐き捨てるように言った。
「ケーサツもたまんないわね、目の前じゃない」
人通りはない。ノラの姿もない。左にあるビルの高い部分が白い光を反射して、道端を明るくしているだけだ。
ビジネスホテルを右角に見て、その奥を占めるのは、打って変わって吹けば飛ぶよな木造の2階家の連なり。ガラリの扉に赤ちょうちんや縄のれんの下がった、のんべえ通りである。
近くにモグリの映画館や、はやらない写真館などもあるだろう。この一帯にとって、朝は『夜』なのだ。
大通り添いの街の中心部――に見えて、桜井市とはこういうところなのだった。
左側の、白い壁の建物――一応は大通りから見える位置にあるからか、こちらは身なりを整えた紳士風の(だがかなりお歳を召している)――敷地面積はせまいくせに6階建てという見栄っぱりな雑居ビルの足元を、遥子は凝視して動かないでいる。
「……『いない』みたいね?」
逍太の同意を待ったが、何も聞こえてこないので振り向くと、サドルに坐ったまま自転車を片足で支えたかっこうでハンドルにつっぷしているので驚いた。
「ちょっとしっかりしてよ、アレ飲んでこなかったの?」
「飲ん……だ」
くぐもった声で、逍太は答えた。息が絶え絶えになっている。
「やだなあ、脱け殻なんだから、どってことないじゃない」
わざと遥子は、踵を高く鳴らして雑居ビルの足元……にうずくまる物体へと近付いた。
「ほら、怖くないってば」
楽しそう、とまではさすがにいかないが、声量は押さえても明るい声で、遥子は言って、ターンまでしてみせた。スカートのプリーツがひらりと舞う。
「オレ……」
逍太が重ねた腕から数センチ顔をあげた。土気色だ。額に脂汗まで浮かべて。
あ、ダメだわ、と遥子は思った。
端正な造りが悲壮に歪んでしまっている。
目だけは向けずに、ようやく聞き取れる声で逍太が続けた。
「初めて……ナマの……し……たい」
「それは私だって同じ――」
ぐぐうっ、と逍太のノドが音をたてた。
恐らくは自らの血によってどす黒く変色した地面に横たわる、息絶えた少女の亡殻は奇妙にねじれていた。
遥子はそれを目の隅でとらえながら、バランスを崩して自転車もろともアスファルトに倒れこもうとする弟へと駆け寄った。
(つづく)
(初出:2012年10月)
(初出:2012年10月)
登録日:2012年10月16日 15時52分
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