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天野雅
著者:天野雅(あまのみやび)
埼玉県生まれ、千葉県育ちの関東人だった。結婚を機に関西の人間になる。現在は関西とも東海ともいえる近畿地方に在住。10年経って方言にも慣れた。血液型はマイペースで知られるB型。住めば都を地で行く性質。ネット作家歴20年。同人作家歴はプラス5年。趣味は映像鑑賞。写真撮影。歌唱。創作料理。好物は自然万物一般。美術芸能一般。パソコン。ゲーム。漫画。文章。
小説/現代

風が哭く(2)

[連載 | 完結済 | 全7話] 目次へ
墜落死した生徒の遺体を見て具合の悪くなった逍太をバイクで学校まで送り届けた藤冶。早速、保健室に向かう逍太だった。一方、遥子は後輩に飛び降り自殺した子の情報収集を依頼する。遥子の予知とは?
 ACT.2

 無人の教室は、ひどく空虚だった。
 壁の時計は7時半……廊下から吹奏楽部の騒音が響いてくる。
 ふらりと自分の席に歩くと、彼は乱暴に鞄を投げ出した。耳ざわりな音を立てて椅子を引き、腰を落とす。
 指が小刻みに震えていた。
 道で誰かに会ったとか、廊下で誰かに声をかけられたとか、そんなことはまるで意識の外だった。
 ショックで口の開いた鞄から、足もとにバサリとノートが落ち、ぼんやりとそれを見下ろして、彼は慌てて拾いあげた。
 ビニールのカバーが掛かったA4版の薄いノート。表紙で黄色い子犬のキャラクターが笑っている。自分で入れておいて、すっかり忘れていてた。無理もない。
 さっきはぼんやりしていて気にも止めなかったが、こうなると、このノートは……。
 彼はこわごわ真ん中辺りのページをめくった。
 教室は窓から光を入れて、なんとか明るい。
『9月7日』
 横書きの罫に添って冒頭にその文字が読めた。
 続く内容は予想を外れて、授業の内容ではなかった。
『またやられた。もうイヤ。今日は加西。くやしい。なんでこんな目にあわなきゃなんないの。イタイって言うからおもしろがるんだと思ったのに。そうじゃなかった。ゆるさない。加西。ゼッタイ、ゆるさない』
「はやかわ……」
 手が震える。彼は無意識に、ノートを強く握りこんだ。

     ◆*◆

 県立桜井常地高等学校。
 歴史が明治維新の時期から始まっている割に校風が穏やかなこと以外は、さして特徴のない普通科の高校である。
 踏切をひとつ越え、通りに面して開かれた南門を、1台のバイクがけたたましく侵入してきた。
 校庭で朝練するテニス部や陸上部は動きを止めない。朝日を蹴散らして疾駆する影は一直線に校舎の脇へ飛び込むと、周囲の目が集まる間もなく、あっさりおとなしくなった。
「あーあっ、しっかりしろよなっ」
 代わりにライダーが騒ぎを続けるらしい。
「朝っぱらから情けねえ。ちゃんと飯食ってっか? ほれ、離れろよ、マシン停めることもできねー」
 両手はあごの下でメットの止め具を外しにかかっているが、両足が機体をまたいだままなのは、背中ががっちり固定されているせいだ。
 左側に校舎が3棟、真横にある普通棟は弱い陽射しを受けて、背後に並ぶ特別棟、管理棟へと影を渡している。右側には体育館と、その奥に屋外プールがある。
 特別棟の2階から体育館へ連絡通路がのびているが、体育館の地下にある柔道場と剣道場へ行く部員達は、普通棟の昇降口から上履きのまま今いる道を横切っていくことが多い。止まっているバイクを横目に、何人かのジャージ姿が通り過ぎていった。
「くそっ、柔道部か。早く下りろって」
 毒づく彼をシートベルトよろしく巻いていたのは、白くなるほどきつく左右から回された華奢な指と細い腕だった。
「着いたってばよ、お姫サマ」
 途端、腕はぐぐぐっと余計に締めつけてきた。
「ショータッ、おまえホントに病人かっ!?」
「……おまえにそう呼ばれると腹が立つ」
 苦しげな声が背中でして、ブレザー姿のライダーはメットの下で眉をひそめた。ちょっと飛ばしすぎたか。
「分かったよ天理、とにかく腕を外せ……降りられるか?」
 タンデムシートに乗っていた逍太は、一瞬上体の重みすら運転者に預けたあと、ゆっくりと腕を引っ込めた。
 ハンドルを握り直すと、彼は小さな溜め息と共に振り向いた。
 逍太に当てないように慎重に、右足をマシンの上から左側に下ろす。
 背後に立った逍太は血の気の失せた顔をうつむき加減に、幽鬼のように立っている。細身でも決して脆弱でないことは知っているが、今は吹けば飛びそうに見えた。
 メットは要らないと断ったのは逍太の方だったのだが。
「待ってろ」
 短く告げて、マシンを体育館の方へと押していく。体育館の軒下に駐輪場があるのだ。
 昇降口は、校庭添いにぐるりと歩いた普通棟の、中央辺りにある。自身の力でそこまで行けとは、いくらなんでも言いにくい。
 メットをマシンに収めて置いてくるのと逍太の後方から彼女がやってくるのとは、ほぼ同時だった。
「さすがニーハンは速いわね。それとも藤冶(とうや)の整備が抜群だから?」
 音もなく、自転車が停止したのはそのあとだ。逍太と藤冶を分けるようにして、向こう側。
「チャリも遥子が運転すると颯爽とするな」
 半病人に対する態度とまるで変わって、さらに自転車の向こう側へと降りた遥子へ近付こうとした。
「あ、じゃあ悪いけどこれもお願い」
 素早くカゴから自分と逍太の鞄を抜き去ると、強引に藤冶の方へ自転車を傾けて、さっさと弟の腕をとって行ってしまう。
「鍵かけといてねっ」
 ひらひらと手を振られると、
「任せとけってっ」
 と文句ナシの笑顔を返してしまった。
「……森海(しんかい)、とうとう宿敵のアッシーまでやるハメになったか」
 はっと見ると、部活仲間の佐々木が面白そうに垂れ目を細めて体育館の方から歩いてくるところだった。学年は同じ2年だ。
 逍太を乗せて走ってきたことを言っているらしい。
 やっぱり見られたか。藤冶が笑みを消す。
「そんなんじゃねーよ。単なる緊急事態」
「誰かと思っちゃったよ。ご令嬢、いつもと髪型、違ったな」
「あのダンゴ頭か。早起きしてやったら早く起きすぎたとか言ってた。かわいーだろ、顔だけじゃ3日で飽きるさ」
「哀れなヤツ。有段者が骨ヌキとは……」
 藤冶は黙って自転車を押しながら、見上げるようにして彼の顔をのぞきこんでくる佐々木の横をすり抜けた。
 ふたりは部活が同じでなかったら口をきいていたかどうかも怪しい、正反対のタイプだ。
 野性のカンとパワーで押して、遥子のような気の強いオンナを好むなど、佐々木には理解できまい。
 藤冶の方は、佐々木が理知的だとうそぶくチタンの伊達メガネが理解できない。
 佐々木はそれを鼻の上に押しあげた。
「しかしお姫サマともなかなか絵になってたぞ。双子だもんな、森海も案外――わっ」
 藤冶が振り向いた。佐々木の鼻先に竹刀を突きつける。差してあったサドルの後ろから、一挙動で抜いたのだ。
「それ以上言うと、斬るぞ」

 頼りない足取りではあったが、逍太は遥子の肩を借りようとしなかった。
「まったく、デリケートな上に強情なんだから。知ってたけど」
 腕はおとなしく遥子に取られている。
 そろそろ人の増えだした廊下を保健室へと歩けば、すれ違う生徒が例外なく振り返っていく。片方が多少青白くても鑑賞には充分耐えるようだ。却ってただごとならぬ雰囲気に、声をかけられず背中をゾクゾクさせる女子生徒もいたかもしれない。
 男子生徒に関しては、考えたくなかった。
 森海藤冶に逍太を頼めたのはラッキーな偶然だった。
 目を回した弟に現場で吐かせるわけにもいかず、とにかく我慢するようになだめて数分、遥子だけビルの内部を調べた。
 雑居ビルの入口は大通りからすぐ折れた道に面してあり、大きな硝子のはまった扉の鍵は開いていた。短い廊下の奥に薄暗い階段とエレベーターが設置されていて、天井の低い箱の中は薄汚れて照明も暗かった。
 屋上への鉄扉にも施錠はされていなかった。
 出ると無人のコンクリートを錆びた金網が囲い、正面に放送局の鉄塔を見て靴が一足残されていた。23センチくらいの黒い革靴は、揃って外側を向いていた。
 静まり返った各階の入口をうかがいながら、今度は階段を注意深く下りてみたが、こちらは何も発見できなかった。
 飛び降りたと思われる少女は花柄のパジャマを血に染めて、和人形のような黒髪のショートカットに白い顔だけが綺麗に浮いていた。
 何も手をつけず、自転車と逍太を抱えて大通りに出ると、藤冶の250C.C.バイクが通りがかった。早起きは三文の得、と(正しくは徳なのだが)どちらがつぶやいたか。
 特別棟の2階、体育館との連絡通路に接した角に、『保健室』とプレートが出ている。
 硝子戸をノックすると、はあい、と応答があった。
「失礼します」
 告げて反射的に滑らせる、その勢いを止められぬまま、はっとして遥子は振り向いた。
「分かったの?」
「……少し」
 逍太のうなずきを聞きながら、彼女は室内へにこやかに踏み入っていた。

     ◆*◆

 太陽が頭上にかかり、急ぎ足の営業マン達が爪楊枝に手をのばす頃。
 通報してきたのは、銀行裏の焼き鳥屋だった。行員向けにランチメニューを用意し、タヌキの置物を外に出そうとしていた女将が、見慣れた風景に異物を発見したのだ。
 かけつけた刑事達は自分達の警察署と目と鼻の先の現場に舌打ちを禁じえなかった。まさに『足』は自分達の足でことたりた。
「ヤクかね?」
 何度もまたたくフラッシュに目をしばたかせながら、年配刑事は記録担当の鑑識係員をつかまえて訊いた。
「外的には認められないスけど。結果待ちですね」
 丸い鼻を指でこすりながらうつむく耳元へ、
「見たとこ推定9時間以上って感じだけど」
 ささやくと、
「……調べてみないとはっきり断言はできませんよ」
「午前の3時から4時ってトコ?」
「まあ……」
 断言はできないけどうなずくのはいいかな、ってなふうな中年の鑑識係員だった。
「飲み屋街で発見が今とは」
 立ち去る彼を見送って、刑事はひとりごちた。灰色の眉の下で瞳に苦渋の色が濃い。空を仰ぎ見る。築20年は越えた雑居ビルの屋上。
「高校生か、中学生ですかね」
 後ろで若い刑事が言った。女将から供述をとった手帳を背広の内ポケットにしまう。
「むごいな」
 墜落死と思われる少女の身柄は、変死として解剖に送られた。
 無残にも手足や首は骨折がひどく、大量出血も認められた。にも関わらず死に顔に苦痛の余韻は少なく、そこからあるいは薬物による――つまり麻薬や幻覚剤で恐怖心が消された状態での落下かとも推測されたが、のちの結果は否と出たので対外的にはそれがせめてもという感じだった。
 身元を割り出せる手掛かりはパジャマと下着と屋上に残された革靴、そして推定年令と顔写真のみ。
 屋上にいたもう1人の若い刑事は、既に遺留品として持っていかれてしまった革靴の、位置だけ示したチョークの線を見つめた。それからサビが浮いて黒くなった金網を眺め、三角に頭を出した鉄塔と、広がる公園の緑に目を移した。
 暖かい陽射しがまんべんなく注ぐ、のんびりとした小春日和の午後だ。
「夜中にパジャマでフェンスを越えるか」
 苦々しげなひとことを、冷たい風がさらっていった。

 ACT.3

「――女の子?」
「ああ」
「あのコ自身じゃなくて、別の?」
「僕だって顔は見たんだからな、違うことくらい」
「あっ分かった分かった。思い出すと顔色悪くなるよ、逍ちゃん」
「……不覚」
 がっくり、と逍太は頭を垂れた。あぐらをかいたコンクリの床が暖かい。その膝に、カラにしたばかりの弁当箱が乗っている。
「修行よ、修行」
 ポンポン、と隣に坐った遥子が微笑して背中をたたく。
 彼女も箸と弁当箱を持っている。こちらはまだ少し御飯とおかずのかけらが残っていた。真ん中にうずらのゆで卵を埋めた巣ごもりハンバーグだ。和科子の得意料理である。
「まあ、今回はダメージ大きかったってことで、しょうがないかも」
「ばーちゃんにはそんなの通用しないよ、きっと」
 深く溜め息をついた逍太の頬を、ひんやりした風がなでていった。
 普通棟の屋上。
 学年は同じだがクラスは違う彼ら双子は、昼休み誰も邪魔に入ってほしくない時ここに来る。
 見渡せば、南向きの校舎正面には大通りを隔てて一戸建の住宅地が広がっている。
 校庭の右側をフェンス越しに私鉄電車が走り抜けていく。その音と、追うように太陽を反射するパンタグラフが光の帯になって、消えた。
 線路の向こう左はマンションの群れだ。その先に公園の木々が見え隠れしている。大通りを境にして右はビル街、廃墟に立つ道標のように骨組みをさらした鉄塔が遠くに見える。
「ごちそうさま……」
 力なく逍太は言って、弁当箱にふたをした。
「で、その女の子って?」
 最後の獲物を箸でとらえながら、遥子は質問だけ発した。
 逍太は困惑したように視線を鉄塔の方へ泳がせた。軽くうなる。
「はっきりしないんだ。外身(そと)も感情(なか)も、感じなかった……ひどく印象が薄くて。やっぱアレ飲まなきゃよかったかな」
「だって飲まなきゃ貧血状態で済まないよ、逍ちゃんの場合」
「――そうだけど」
 遥子は弁当箱を閉じると、立ち上がってスカートをはたいた。
「いいわ、見当がつかなくもない」
「本当に?」
 ナイス、と見上げると、彼女の後ろからその視界に入り込んだ姿があった。浮かびかけた笑みも忘れて逍太はあからさまに顔をしかめた。
 天理姉弟がいつからか屋上を利用するようになったことは校内のモグリでなければ誰もが知っていることだ。ぬけがけ禁止協定として邪魔が入らないのであり、また当然お客が来ることもある。
「ちょっと電話してくるから、逍ちゃん、お礼ぐらい言っておいたら」
 逍太の証言をせかした辺りから、遥子は気づいていたのだろう。2人分の弁当箱を抱えると、振り返り、笑顔で見事に藤冶の不意をついてから、その横を歩き過ぎて校内へと姿を消した。
 数拍置いてあとを追おうとした藤冶を、
「遥子はすぐ戻るよ。朝はどうもありがとう」
 ぶっちょうづらの逍太が、呼びとめた。
「あ、おう……具合はもういいのか?」
 筋肉質の体は俊敏に方向を切り換えた。
 天敵と、佐々木からだけでなく言われる相手だが、それは逍太からの一方的な反感によって成り立っている。藤冶の方は遥子に近付けるなら弟とも仲良くしたいのだ。
 昼休みはまだ、だいぶ残っている。

 東中学校の事務員は遥子のことを覚えていた。喜んで近況を話し始めようとしたのを申し訳なく遮って、用件を伝えた。
 相手が代わるまでに1分も待たなかった。
『ヨーコセンパイ!?』
 遥子がうっかり受話器から耳を遠ざけた隙に、イニシアチブは持っていかれた。
『おひさしぶりですぅ、ショーちゃんセンパイもお元気ですかぁ? もーっ、なんの御連絡もくださらないんですもん、ユーナ寂しかったんですよぉ』
「あ……ごめんなさいね。みんなも元気?」
 勢いに押されながら、ようやくそれだけ言う。彼女のトレードマーク、若鮎のように撥ねるポニーテールと小作りな顔が目に浮かぶ。
 英語研究部(ESC)の後輩なのである。
 これでも世間では憐憫の情をこめて灰色と形容をつけられる受験生なのだが、まだ部長をやっている。それをさすがと呼ぶべきなのかどうか遥子には分からなかった。
『ハイ、元気ですっ。来月の文化祭は是非いらしてください、あたし達ってば教室ひとつ借り切ってオリジナル劇やることにしたんですよ。文芸部と共同制作なんです。すごいでしょ?』
「あら……じゃあ観に行くわね」
『きゃあっ、ショーちゃんセンパイも御一緒にどうぞ、みんなに教えてあげなくちゃ。あたし頑張りますっ』
 やっと話題に一区切りつき、慌てて遥子は受話器を持ち直した。
「結菜ちゃん、それでね、電話したのはね」
 目の前でテレカの使用度数がひとつ減った。
 管理棟1階、事務室前のカウンター。遥子は声をひそめた。
 2階に食堂、3階に視聴覚室と図書室を配して、1階に生徒の使う部屋はない。廊下は照明を落として薄暗かった。人影はない。
 透明な硝子越しに見える事務室の中は蛍光灯に照らされて白く、スチール机には給食会社の赤い弁当箱が見える。椅子に坐って実務をこなしているのは女性1人だった。他は見えない場所で休憩しているのだろう。
『ヨーコセンパイの予知って当たるんだもん。怖いですよぉ』
 結菜が元気よく言った。遥子はその声が廊下中に響き渡ってしまいそうな錯覚を起こし、思わず自分の側の送話口を押さえた。結菜の口調から明るさが消えていることには気づいている。
「物騒な内容でしょう。なんか気になっちゃって……もしかして、もうあった?」
 遥子は穏やかに結菜の答えを促した。だがそんなはずはない。発見されているとしても手掛かりのない状態から学校まで捜査の手がのびるには、まだ早い。
『ええ……でもそれは、ずいぶん前の話です。ヨーコセンパイの予知が当たってたら、それは2人目、ってことになっちゃいます』
 既に1人? 遥子の背筋に冷たいものが走った。
「ずいぶん前って? 男の子、女の子?」
『先月末……新聞には載らなかったみたいですけど、1年生の女の子』
 さすがに結菜の声も小さくなっている。
「詳しく知ってる?」
『あたしも噂を聞いただけなんですよ。あ、でもESCの子に訊けば、名前くらい分かるかも』
「調べてもらえるかな」
『ハイ、遠慮しないでください。あたしヨーコセンパイの言うコトなら、なんでも聞いちゃいますから』
「ありがと。くれぐれも情報はさりげなく集めてね」
『任せてくださいっ。あたしこれでも口固いですし。おおっぴらに《夜中に飛び降り自殺しちゃったコ》のことなんて、訊いてまわったりしませんから』
 遥子はまた送話口を押さえた。
「……頼むね……」
(つづく)
(初出:2012年11月11日)
登録日:2012年11月11日 16時46分
タグ : 自殺 事件 学生

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