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城本朔夜
著者:城本朔夜(しろもとさくや)
自称「心のカメラマン」。被写体は、見えなくて、水のようにいつも動いているもの。究極に目指すのは、世にも美しい芸術作品。でも好きなのは、なんの変哲もない「スナップ写真」。撮ったあと、ちょっと変わっているのが撮れていたりすると、嬉しくなって、誰かとシェアしてみたくなります。
小説/SF

生態刑(4)

[連載 | 完結済 | 全5話] 目次へ
反乱軍に加入した聡。親玉であるマッドサイエンティスト庄田を人質にする作戦を決行するが、庄田は反乱軍に教えられた人物像と異なっていた。なぜ、このような世界が生まれたのか淡々と説明する庄田。そこに狂気の目をした柴田がナイフを持って現れる。
 さゆりさんは、宿泊棟にもどるとすぐに、ぼくを食堂の方へ連れて行った。これから、その場所でミーティングがあるらしい。
 メンバーは、全部で八人。ぼくが入ったことで九人になった。柴田が名目上、この組織のリーダーだったが、組織のブレインは、やっぱりさゆりさんだということが、初めて来たぼくの目にも明らかだった。その他に、ぼくが知っている顔が二人と、あとは、強制労働のときは別グループで、宿泊棟も異なる人たちが四人。
 ぼくたちが許されている行動範囲は、各宿泊棟から半径二キロだったから、三つの宿泊棟の真ん中に位置するぼくらの宿泊棟は、隣り合う宿泊棟からギリギリ行き来することができた。
 メンバー全員がそろうまでに少し時間があった。その時間を使って、さゆりさんがぼくに、今までの話の流れを教えてくれた。
「聡くんは、はじめて牛顔を見たとき、どう思った?」
 ぼくが初めて見たのは、パン屋のおばさんだ。
「それは、まあ、びっくりした」
「オカルトっぽいよね?」
「うん、不思議な国に迷いこんだのかと思った」
「あれはね、遺伝子組み換えクローン生物なのよ」
「イデンシ……クミカエ?」
 何のことやらさっぱりわからない。
「遺伝子っていうのはね、人間なら人間を形作るための、細胞レベルでの設計図みたいなもの。私たちはたった一個の卵細胞からこんな身体に成長したでしょう。そのひとつの始まりの細胞の中に、そして、この体全部の細胞の中に、設計図が組み込まれているのよ。その設計図には、さとし君の体は目鼻立ちにいたるまで、こーんな形になるって言うことが細かく書かれているわけ。ここまでわかる?」
 さゆりさんは、ぼくの鼻先を突っつきながら説明する。ぼくはうなずいた。
「今はね、その設計図を、人間の力で変えてしまえる技術があるの。それを遺伝子組み換えっていうのよ。そしてクローンっていうのは、簡単に言えば、コピーされたようなもの。たとえば、聡くんが、何人も存在するような。今の技術ではそんなこともできてしまうのよ。その技術で、あの牛顔人間が作り出された」
「そんなことが人間の力でできるんだ」
「そうよ。そんなことをやっていいのは」
「神様ぐらいなものだ」
 横から、柴田が口を出した。
「その神様気取りの、マッドサイエンティストが事の発端だ」
「だけど、何のためにそんなこと…」
「さあな、キチガイの気持ちはオレたち凡人にはわかんねーよ。ただそういう事実があるってことだ。オレが思うには、そいつは、実験に餓えている。だから、やつら牛顔たちをうまいことたきつけて革命を起こさせ、合法的にどうにでもしていい囚人なるものをでっち上げた。そうすれば、自分の実験材料には事欠かないというわけだ」
「実験材料?」
 ふたりの口から次々に信じられないような言葉が飛び出してくる。ぼくはただ、ほうけたように、それを聞いていることしかできないでいた。
「いけにえに選ばれたものは、間違いなく、実験室行きだ」
 そのとたん、ぼくはとんでもないことに気づいてしまった。それじゃ、母さんがあの廃校にいたってことは、どこかの宿泊棟にいて、昨日いけにえに選ばれて……。そして、それに気づいたじんのすけも口封じか、ついでに実験に使われる羽目になって、命からがら逃げ出した……。
「どうしたの? 顔が青いわよ」
「こんな話、聞きゃあ、ガキでなくても青くもなるさ」
「か、母さん……」ぼくの声は、どうしようもなく震えだした。
「母さんを助けて!」
 声と一緒に涙があふれた。今までじっと我慢していた全てのものが、一気に爆発したみたいだった。噴き出したぼくの感情は、こらえても、こらえても、嗚咽となって口のすき間からもれ出てしまう。柴田が「たまんねえな」とつぶやく。さゆりさんが、「どうしたの?」とぼくの両肩を抱いてくれている。
 ぼくの涙は、しばらくの間、止まらなかった。それでもぼくは、しゃくりあげながら、父さん、母さんと別れ別れになっていて、その行方を捜していることや、じんのすけが、昨日、廃校で母さんらしき人を見かけたことをみんなに話した。そして今日、じんのすけが母さんであることを確かめに廃校へ行って、あんな目にあって帰ってきたことも。
「決まりだな」
 柴田が、冷ややかに言った。
「そんなこと」
 さゆりさんが、柴田をたしなめる。
「聡君のお母さん、きっとまだ大丈夫よ。それに、私たちの作戦は今日これから決行するんだから」
 その頃には、すっかりメンバーもそろっていて、ぼくの周りに集まって心配そうにぼくを見ていた。
「さあ、作戦会議、始めるわよ!」

「この顔をよく覚えておいて」
 さゆりさんが、ある科学雑誌の切抜きを、ぼくらに見せた。
 そこには、丸々と太った、色白の男の顔写真があった。首が、二重あごに隠れて見えなくなっている。
「こいつが、そのマッドサイエンティストの正体よ。庄田雄一郎。遺伝子工学博士。某有名国立大学の教授をしていた男よ」
 ぼくは、その人物を知るはずもないのに、だれかに似ている気がして戸惑った。けど、それがだれなのかさっぱり思い出せない。テレビかなんかに出ていたのを見ただけだろうか?
「それにしても、どうやって、ここにいてそんなことがわかったの?」
「牛顔たちがつめている管理棟。あそこを調べたのよ」
「え? そんなことができるの?」
「ええ、思っているより簡単なことなのよ。ここの囚人って、そろいもそろってお人好し ばかりだから、ここ最近、困った事件なんて何も起こしちゃいない。牛顔たち、すっかり警戒のねじがゆるんじゃっててね。特に昼間は、各グループの査察に忙しくって、管理棟はまるっきりお留守なの」
「でも、だからって、脱走したりする人はいないの?」
「脱走事件は、決まったときにしか起きていないのよ。その一つ目が、何もわかってないここへ来たばかりの新人が、ここへ来たその日に逃亡を図るパターン」
 ぼくのことだ。
「二つ目が、いけにえに決まって錯乱した囚人が、その決まった夜に逃亡を図るパターン。それ以外は知る限り皆無ね。だから、牛顔たちもそれと知って、安心しちゃってるのよ。新人が来ない日は、大体お留守よ」
「仕事を抜け出したりして、目をつけられない?」
「そりゃあ、あんまり長時間は無理よ。だからトイレと偽って、ほんの少しの時間だけ調べるのよ。毎日少しずつね。メンバーひとりひとりがこつこつと調べた結果がやっとここにそろったっていうわけ」
 牛顔はいばっているけれど、脳みその方は、さゆりさんのそれよりは少し足りないらしい。
「さて、話を本題に戻すわ。川崎君、最終確認するけれど、牛顔と、庄田博士との関係は今も主従関係にあるっているのは間違いないわね?」 
「ああ。電話で話をしているのを聞いた限りでは、あのスーツの牛顔が、バカていねいな口のきき方で、ひどく恐縮していたから間違いないと思う」
 川崎と呼ばれた男は、管理棟で調べ物をしていたときに、スーツの牛顔が帰ってきてしまうという、危うい状況に陥ってしまったことがあったらしい。物陰に隠れて、たまたま見つからずに外へ出られたのだ。川崎さんは、そのときのことを言っているのだ。
 さゆりさんが続ける。
「電話の相手も、庄田博士に間違いはない?」
「庄田さんって呼んでたから、間違いない」
「じゃあ、庄田博士を人質に取れば、牛顔の動きは封じられるって線で、進めていっても大丈夫ね?」
 一同は合意した。庄田博士が廃校にいるということは、管理棟にある全体地図に、庄田邸と書きこんであるために間違いがないという。
「廃校まで一番近い宿泊棟にいる私たち四人が、実行部隊。あとの四人がおとり部隊ということで、決めていいわね?」
 四人ってことは、ぼくは数に入っていない。子供だからってなめられたものだ。ぼくは納得がいかなかった。
「ちょっと待ってよ。オレも廃校へ行くよ」
「お子ちゃまは危ないから、見学です」
 すかさず、柴田が言葉を返してきた。
「足手まといにはならないよ。母さんのことが心配なんだ。一緒に行かせて」
「だ・め・だ」と柴田がたたみかけるように言うのと「命の保証はないけどいいのね?」と、さゆりさんが言うのとが同時だった。
 柴田は変な顔でさゆりさんのことを見ている。不満げな表情がうかぶ。
「かまわない」
 こんな言葉、ぼくの口からするすると出てくることが、自分でも不思議だった。死ぬことだけを避けながらここまでやってきたのに。
 けれどぼくは、どうしてもここに置いていかれて、ただ成り行きを見守るなんてことだけはしたくなかった。
「じゃ、決まりよ。私たち五人は廃校へ向かう。いいわね?」
 無言でうなずく。柴田はまだ納得の行かない顔をしているが、さゆりさんの言葉を受け、みんなに向かって作戦の概要について語り始めた。
「目的は、庄田の身柄を拘束し、やつを人質にして、囚人全員の開放を要求することだ。今日、真夜中の十二時きっかりに、作戦は決行する。いいな?
 まず、その時間になったら、おとり部隊が、おのおの四方に散らばって、敵の注意を引く。管理棟には、ちょうど四人の牛顔が詰めているはずだから、脱走犯と気づいた敵は、管理棟を全員が出払い、四方に散らばるものと思われる。そして、十分後に実行部隊が出発する。この場合も念のため、二手に分かれて、別ルートで廃校に近づいた方がいいだろう」
「あと、これは私の意見なんだけど、おとり部隊は、はじめはまっすぐに脱走とみなされる付近まで走って欲しいの。だけど、その地点に着いたら決して限界地点を超えないで。円心を描くようにその付近を、横に向かって歩いてちょうだい。そうすれば、脱走犯とは決めつけられないから。いい?」
さゆりさんは、細かいところまで気のつく人だ。最悪、死人の数は減らされるだろう。
「廃校に着いたら、どうすればいいの?」
 ぼくの質問に、
「廃校には誰も近づいたことはないの。こればっかりは、行き当たりばったりね。とにかく博士を見つけて、身柄を拘束する。後は天に運をゆだねるしかないでしょう」
 さゆりさんはぼくの肩を大丈夫、とたたきながら、ほほえんだ。
「さて、実行部隊のグループ分けだけど……」
「オレがこいつと行く」
 意外なことに、柴田がぼくを指名した。
「そう? じゃあもう一人柴田君と行くのは……」
「オレとこいつ、二人だけで十分だ」
「でもそれじゃ……」
「いいんだ。さゆりは女だから三人で行動した方がいいだろう」
 柴田は、一歩も引かない口調だ。
「そんなに言うなら、じゃあそれで決まりということにしましょう」
 さゆりさんは、柴田の勢いに飲まれるように、そうつぶやいた。ぼくは柴田の真意をはかりかねていた。


 ひとまず一団は、おのおのの宿泊棟にもどり、そのときを待つことになった。宿泊棟で柴田ととなり合わせのぼくは、この奇妙な取り合わせに戸惑っていた。ぼくのことを足手まといに思っていたはずの柴田が、ぼくをパートナーに選んだことについて。柴田は、その後もいつもとなんら変わりなく、ぼくに対して親しみを感じている風も見えない。となり合っているのにぼくらは、ただ黙ってそのときが来るのを待っているだけだった。
 柴田が腕時計に目を落としながら、無愛想にぼくにつぶやいた。
「そろそろだ、行くぞ」
 ぼくらは窓から抜け出すと、最短距離で廃校ヘ向かうルートを走り始めた。
 さゆりさんたちは、少しだけ迂回するルートをたどる。今頃はたぶん牛顔は、おとり部隊を追って、まったく逆の方向へ走っているはずだった。
 真夜中の田舎の細道は、それほど暗さを感じなかった。ぽつんぽつんと立っているはかなげな街灯と、西に傾いた半月がぼくらの行く手を照らし出してくれている。それに、かえるの声があたりに響き渡っていて、さびしいとはおおよそいえない状態だ。なぜか、ひどく懐かしいような不思議な気持ちがぼくを包んでいる。ぼくと柴田は、無言で走り続けた。
 しばらくすると、ぼくは、宿泊棟からの限界点を超える所にさしかかっていることに気がついた。さっき、じんのすけを心配して来たときに立っていた覚えがある。
 ぼくはそこに白線を見るような気がした。目をつぶってエイヤと飛び超える。これで捕まえられれば、ぼくらは即、あの世行きだ。
 それからしばらく走ったところで、
「やつだ!」
 柴田が叫んだ。次の瞬間、ぼくにも、それとわかる黒い影が、ぼくらを追ってくるのが見えた。
「どうして、ばれたんだろう?」
 あえぎながらぼくが尋ねる。柴田は、さあな、と言ってぼくに目配せすると、さっと横道に入った。計画にはない道だ。きっと、やつらの目をごまかすためだろう。
 ぼくも後に続く。それからすぐに生い茂った生垣の中に身をひそめ、息を殺して全身をアンテナにした。
 やつらをやり過ごしたのを感じると、柴田が低い声でこう言った。
「スパイがいたんだ」
「え、まさかぼくらの中に?」
 ぼくは、思わずすっとんきょうな声を出してしまった。柴田が、ぼくをにらみつける。
「違う。スパイは……お前の犬だ」
 何だって? この男は何ていうことを言い出すんだ。ぼくはきつい視線で、無言の反論を柴田に返す。
「あいつ、人間の言葉を話したな? ってことは、あのキチガイに何らかの手術を施されているってことなんだ。じゃなかったら、犬がしゃべるだなんておかしなこと、この世の中にあるわけがないだろうが」
 じんのすけがしゃべれる理由……。確かに、それで説明はつくかもしれない。だけどぼくには信じられなかった。
「あの犬、本当に元からお前の犬なのか?」
 それは……確かに違った。ぼくは頭を横にふる。
「だろうと思ったぜ。あいつ、うまくお前に取り入って、オレたちの様子をうかがってたんだ」
「だけど! じんのすけはケガをして帰ってきたんだよ。それに、ぼくたちの最後の計画は聞いてないじゃないか」
「そんなものは、どうとでも説明はつく。計画の細部なんか知らねえでも、オレたちのことを張ってりゃいいんだし、オレたちの計画のことがだいたいわかれば、あの犬も役目を終えて必要なしだ。消されようとしてたのを命からがら逃げ出したってところだろうよ」
「そんな…」
 そんなバカなことがあるもんか。ぼくは信じない。
「でも、それはもうどうだっていい」
 柴田は、そう決め付けてから、
「今、大事なのは、オレたちが牛顔に追われてるっていうことだ。さあて、これからどうするかな……」
 三十センチほど前の闇を見つめ、少し思案した。
「オレにいい考えがある。悪いようにはしない。おまえはオレの言うとおりにしろ、いいな?」
 有無も言わさぬ言い方で、ぼくに指示を出した。ぼくは言われるままに一人でさっきの道に出て、全速力で廃校までの道を走り出した。
 うっそうとした黒い森を背にして、目指す廃校がぼくの目に見えてきた。柴田はぼくに、とにかく先に走れと指示をした。どういうつもりなのだろう?
 走りながら牛顔がいつ、ぼくの前に躍り出るかと、内心びくつきながらぼくは走った。と、そのとき、ぼくが恐れていたように、背後から牛顔らしき人影が、ぼくに近づいてくるのを感じた。
 万事休す。ぼくはえり首をつかまれ、まるで、綱を引っ張られた犬のように、首に圧迫感を感じた。
 そしてもう一人の人影を感じたその時、ぼくは牛首に首をつかまれたまま、横倒しに倒れてしまった。牛顔が、ぼくの背後で倒れている。ぼくの頭上では、背の高い男、柴田が、赤黒く血で光ったナイフを持ち、そこに立っていた。
「早く起き上がれ!」
 柴田は、ぼくのえり首をつかんだまま横たわっている牛顔の手を、ぼくの首からふりほどき、ぼくに手を差し出した。
「牛顔を刺したの?」
「そんなこと言ってる暇があったら、走れ! まだその辺に牛顔はいるはずだ!」
 ぼくと柴田は、倒れている牛顔を置いて、廃校へと向かう。古びたコンクリートでできた廃校の門柱を通り、ぼくらは、植えこみの陰に隠れた。
「あの牛顔、死んじゃったの?」
「だろうな」
「何も殺さなくても……」
 ぼくをおとりにして先を走らせ、牛顔の注意をぼくに集めておき、ふいをついて後ろからあの牛顔をナイフで刺したのだ。はじめからそのつもりで。いくら非常事態とはいえ、殺すことはなかった。暗がりの中ぼんやりと写る柴田の横顔に、ぼくは狂気を感じた。
「うまく逃げられただろ? それに、あいつらは殺されて当然のことをしたんだ。オレのマブだちを、あの世に送りやがって……皆殺しにしてやる!」
 ぼくは、その横顔に何も言う言葉が思いつかない。ぼくには柴田が常軌を逸脱してるようにしか思えなかった。さゆりさんは、このことをどう思うのだろう。牛顔たちを殺すことも考えのうちなのだろうか?
「ここからまた、校舎まで走るぞ」
 二人が、植えこみの陰を出たときだ。牛顔が、ふいにぼくらの目の前に立ちふさがった。柴田が、即断する。 
「牛顔たちは、オレに任せろ! おまえはふりきって、中へ入れ!」
 ぼくは、ひるまなかった。腕につかみかかった牛顔の手を大げさにふってふり払い、校舎をめざして走り出した。後ろでは柴田と牛顔がもつれ合って、砂を蹴る音がしている。
 正面玄関にたどり着くものの、その扉は施錠してあり、びくとも動かない。ぼくは、校舎に沿って横の方へ走り出した。植えこみを見つけ、目立たないように身を低くすると、暗がりの中、半分手探りで大き目の石を見つけ、そのまま窓ガラスをたたき割った。注意を引くような大きな音が出た。急がなくては。
 窓をやっとのことでよじ登り、ガラスの破片に注意しながら中へ入った。教室らしいその場所には、月の光がつくる影が落ちていた。
 さゆりさんたちは、どうしただろう? すでにどこかからここへ入っているのか、それとも、追っ手につかまってしまったか? それがわからない以上、ぼくは一人、前へ進まなくてはならなかった。
 ぼくは、柴田ではないけれど、念のために窓ガラスの破片を一枚手に持った。万が一のときは、これを役立てなければならない。力のないぼくが、大人を人質に取るには、これで脅すことくらいしかないと思ったのだ。
 廊下へ出ると、教室をひとつひとつ調べていく。物置同然に、使わなくなったいすや机を片側に寄せて積んである部屋が、いくつも続いた。本当にこんな所に人が住んでいるのだろうか? そう思い始めた頃、理科室と書かれている教室を見つけた。
 静かに引き戸を開けて、ぼくは、まるで映画を見ているような光景に出会った。月の光にぼうっと照らし出された、おびただしい数の実験器具たち。それが木造の古い校舎の壁を背景に不気味な点で、異常に似合っているのだ。いかがわしい実験を夜な夜な繰り返す、マッドサイエンティストをほうふつさせる。今にも、古い映画に出てきたフランケンシュタインが実験器具の陰から現れてきそうだ。
 ぼくは一瞬、身をすくませた。核心に迫っていることを感じ固唾を飲みこむと、足音を忍ばせながらゆっくりと実験室の中へ足を踏み入れていった。実験台の水道の蛇口から、水がポタン、ポタンと滴り落ちる音が、やけに大きくぼくの耳に聞こえてくる。
 実験室は、広かった。いくつもの教室を、実験室に改造したのだろう。理科室ひとつがこんなに広いわけがない。扉で仕切られた向こうの部屋にも、実験室は広がっていた。
実験室はやがて、医務室のような形相を呈してきた。いくつかの簡易ベッドが置かれ、そのそばにさまざまな計器類が置かれている。そして、注射器などの医療器具。もしかしてここで、人体実験が行われているのだろうか? 急に、それがリアルなものとしてぼくには感じられて、ここに立っていることさえ、恐ろしくなる。そのときだ。
「おい」
 ぼくの背後から、男の声がした。庄田だ。ぼくは確信した。ここに住み、毎日ひとりずつ、ぼくら囚人の中からいけにえを出させ、ここで人体実験を行っているマッドサイエンティスト。
 ぼくは、身を硬くした。ガラスの破片を右手に確かめ、覚悟を決めたように振り向いた。
 次の瞬間、自分の目を疑った。なぜこの人がこんな所に? 事情が飲みこめずに、立ちすくんでしまう。
「夜更けに、こんなお客さんとはね。ぶっそうなものを持っているところからして、穏やかなことではなさそうだな?」
「お、おじさんが、な、何でここに?」
 やっとのことで声を絞り出す。そこに立っていたのは、ぼくに、エコスフィアをくれた、あのひげおじさんだったからだ。
「おじさんは、やつの何?」
 気を許してはならない。まだその辺に、庄田が隠れているはずだ。おじさんはまだことの真相を知らない、庄田にだまされている一人に違いない。
「やつ? だれだ、それ?」
「おじさん! だまされちゃだめだ! ここに住んでいる庄田はどこなの?」
「何をカッカしてんだ、坊主。オレが庄田だ。まだ紹介してなかったっけ?」
 何? おじさんがショウ……? 急な展開にぼくの頭はついていかれない。だって、太った色白の、雑誌に載っていた顔とは似ても似つかない。けれどそこで、ぼくは気づいた。めがねの中の目が……。そうだ。あの時思ったどこかで見たと思った理由は、この目だったんだ。今はやせて日に焼け、ひげをたくわえている、変わり果てたおじさんの姿がここにあるのだ。じゃあ、おじさんが、羊の皮をかぶった狼だったってことか?  
「今、やつらから連絡が入った。囚人の中から反乱軍が出て、こっちに向かっているってな。もしかして坊主、お前がそうなのか?」
 混乱したまま、ガラスの破片を目の前にかかげ、ぼくはうなずく。
「何でそんなことを。坊主は夕方教えてやった答えを持って、明日出られるはずだったんじゃないか」
「牛顔たちは、どんな答えを持ってきても、イエスとは言わないって……」
「そんなでたらめ、だれに吹きこまれた?」
「そんなことはどっちでもいい! ぼくらが問題にしているのは、日々奪われていく人の命のことだ! ぼくの……ぼくの母さんを返せ!」
 ぼくは聞く耳を持たなかった。
「落ち着け! お前の母さんなら、ここにいる」
 見ると、庄田の後ろの扉から、一人の女性が、ゆっくりと姿を現すところだった。
 それは、母さんに間違いがなかった。
「母さん!」
 母さんは無事だった。しかも元気そうだ。ぼくはその姿を見たことで、今までの張り詰めた糸がすべて、どろどろに溶けていくのを感じた。もしかしてぼくは大きな勘違いをしていたのではないだろうか? やっと、ぼくの中に自問する余裕ができてきた。
「さと……し?」
 けれど、母さんの様子は少しおかしかった。ぼくのことをまるで幽霊でも見るような目で見ているのだ。
「か、母さん?」
 思わず、駆け寄ろうとして、ぼくの足は止まった。母さんの目が、ぼくを受け入れてはくれなかったからだ。ショックを受けたぼくを、庄田が察したらしい。
「坊主、これには訳がある。だけどまずは、さし迫っている他の反乱軍、つまりお前の仲間のことを何とかしなくちゃならない。だから、お前の母さんのことは横に置いといて、オレに関しての誤解を解いておきたい。聞いてくれるか?」
 ぼくの頭の中はぐちゃぐちゃだった。糸がからまりあって、自分の力ではどうにも解くことができない。糸をほどいてくれるのなら、だれでもいい。ぼくは、とにかく庄田の話を聞こうと思った。
「お前ら、反乱軍がオレをどんな怪物に仕立て上げていたかは、想像に難くない。さしずめ、牛の顔をしたやつらの総元締めって所か」
ぼくは静かにうなずいた。
「ある意味、それは、正しいといえる。アレを作り、アレの故障を治す。俺はここでその仕事を担っている。あいつらを先導して、十年前の声明を出させたのもオレだ。どうだ? そんなふうに思っていたんだろ?」
 そうだ、さゆりさんたちの読みは、間違っていなかった。
「とにかく、事の真相を語るには、まず、昔のオレのことを話さなくちゃならない」
 庄田は、すぐそばにあった丸いすに座り、話し始めた。母さんは、そのとなりにひかえ、ぼくの顔をじっと見つめている。心なしか、瞳が潤んでいるようだ。
「オレが、四十のときだった。オレは自分で言うのもなんだが、優秀な科学者だった。遺伝子工学という分野に、人類の明るい未来をかけていた。そのころから近い未来に食糧危機が訪れるだろうと言われていたから、オレのやっていることこそが、それを救う道になると考えていたわけだ。
 あの時オレは、遺伝子組み換えで、成長スピードの速い牛を作ろうとしていた。その遺伝子を持つ牛をクローン技術で増やせば、数倍の効率で牛を食卓に登らせることができるからだ。
 それが、どこでどう間違ったのか、牛の遺伝子の中に、人間の遺伝子が紛れ込んでしまった。となりの研究室では、ヒトゲノム――人間の設計図の詳細――の解明をしていたから、どこかで手違いがあったんだろう。結果、偶然にも二本足で立って歩き、人間の言葉を話すお前もよく知っているあいつらの原型が生まれてくることとなった。
 牛の納屋の中で、オレは愕然とした。牛が人間を、いや怪物を生んだようなものだったから。オレはそのとき初めて、自分のしていることの恐ろしさを実感した。これはすべてを創造した大いなるもの、いわば神の仕事なのだって。オレみたいな未熟な一動物が、してはならない領域のものだって。外観が同じで、性質だけをいじっていると、そんな大それたこととは気づかないものなんだ。
 とにかく、ショックを受けたオレは悩んだ。すぐにその子牛を殺して、なかったことにするのが、一番の方法だったのかもしれない。けれど、オレはそれをしなかった。自分の犯してしまった罪をなかったことにして、何かから目をそむけてはいけないと思ったからだ。
 そのうちに、子牛は、大人になった。確かにオレの意図するとおり、成長の早い牛になっていた。牛は人間の言葉を話し、オレと動物たちとの意思をつなぐ通訳の役割を果たした。オレは人間だけが、他の動物との意思の疎通が取れないで、かけ離れて存在していたという事実を知った。動物たちは、人間が思うほど下等なわけではなかったんだ。オレはそこから多くのことを学んだ。人間が、食糧危機を最先端の科学の力で何とかしようなんてことは、小手先のごまかしに過ぎない、結局はその傷を大きく広げてしまっているだけだということ。人間だけが、地球の営みの環から大きく外れていて、今すぐに先進国のやり方を変えなければ、地球は確実に砂漠になることも」
 庄田は、深いため息をついた。
「オレは思った。オレが作ってしまった哀れな牛にも、役割がある。それを存分に生かして、人間の進む方向を変えてみることはできないのかって。そして、十年前、オレはあいつら牛をはじめとする動物たちの思いを束ねて、革命を引き起こした。そのために、また、あわれな牛のクローンを何体も作り出すことになってしまったのだが……」
 丘の上で、ぼくに「答え」をそれとなく教えてくれた、懐の深いおじさんが、確かにそこにいた。ぼくは、やっぱりこのおじさんを信じたかった。ぼくの深い所の何かがそう教えてくれている。
 だけど「いけにえ」があるのは、事実だ。何でこのおじさんが、囚人の命を平気で奪うようなことをするのだろう? 
「だ、だからって、なんでここに来た人たちは、死ななくちゃならないんだ。人を殺すような大罪を犯したわけでもないのに。オレ、おじさんがわかんないよ!」
 おじさんは少しも動じた様子を見せない。
「牛に、殺される理由があると思うか? 豚は? 鶏はヒトゴロシをしたんだろうか?」
 ――あ。
 ぼくの目からウロコが落ちた。おじさんはきびしい顔でぼくを見つめている。
「地球から見たら、人間は何も特別な存在なんかじゃない。人間を殺していけないのは、人間界だけの倫理だ。自然界ではそれは当てはまらない。あるのは、生きるために食べることだけだ」
 一度言葉を切ると、おじさんは言葉を探すようにして、また話し始めた。
「いまや、人間をとりまく食物連鎖のピラミッドは、逆三角形になっている。人間は増えすぎた。増えすぎてなお、そのエゴで地球を砂漠にしているんだ。崩れたバランスは元に戻さなくちゃならない。牛や豚も同様だ。今までの家畜制度で、牛や豚も増えすぎたから、その数を減らさなければならない。そこで、人間を豚に食わせ、人間が豚を食う。そうして食わせあうことで、だんだん、お互いの数は減り、それぞれ、ふさわしい数になっていく」
「そんな! それこそ神様の仕事じゃないか」
「だろうな。このまま自然に任せれば、近い未来に、人間が滅亡するのも確かだろう。でも、オレは人間が好きだ。この町から見える緑も、動物たちもみんな好きだ。みんながつながって生きているこの地球を守りたいと思う。だけど、ゆるやかに方向を変えるだけじゃ、もう守れないところまで来ているんだ。だからオレは、生きることを許されている限り、今やってることを続けようと思う」
 地球という大きな目で見たときの小さな犠牲というわけか。ぼくは複雑な思いがした。
 何が本当に正しいのだろう? 
 そのとき、実験室の奥から突然、だれかが飛び出してきた。柴田だ。
「しょうだー!」
 狂気の目が飛び込んでくる。光るナイフ。刃先は、上を向いている。危ない! 僕はとっさに、柴田に背を向けて気づかないおじさんの前に立ちふさがった。
 一瞬のことだったが、ぼくはその瞬間に、柴田がぼくをパートナーに選んだ訳を悟った。さゆりさんがそばにいては、都合が悪かったのだ。はじめからさゆりさんが意図しないこと――庄田を殺すつもりでいたからだ。
 ぼくはスローモーションを見ていた。柴田がぼくに覆いかぶさる。激痛が走る。向こうからさゆりさんが走ってくる。映像がまるで夢のようだ。
 叫び声だけが、リアルにぼくの耳に響いている。
「キャアアア!」「聡くん!」「坊主!」母さんの悲鳴、さゆりさんの声、そしておじさんの声――。
 ぼくは薄れていく意識の中で、思っていた。なぜ、おじさんをかばったりしたのか? はっきりとした理由はなかった。ただ、おじさんを通して、守るべき象徴をそこに見たから。そういうことだったのかもしれない。そこまで思って、意識は途絶えた。
(つづく)
(初出:2012年03月)
登録日:2012年03月29日 14時31分

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城本朔夜の電子書籍 - 新着情報

  • 瞳の奥に眠る森 城本朔夜 (2011年09月29日 15時47分)
    エリートたちが集うネスト本校に通うサナイに、リゴフィールド行きが告げられた。就職と出世の貴重なカードとなるチャンスにも、サナイの心は浮かばない。ひとり分け入った森林で見たオーグルの意外な姿。兄の死の真相、ヒビキの出生、カスガの怪しい行動。次々と明らかになる大人たちの欺瞞と葬り去られた過去に立ち向かう感動の大作! (小説ファンタジー
  • イペタムの刀鞘 城本朔夜 (2010年11月20日 15時42分)
    蛇の痣(あざ)がある孤児、カカミ。村中の人間から「悪魔」と忌み嫌われる彼は、妖刀イペタムに魅入られ、寝食を忘れてイペタムの鞘作りに没頭する。そんな彼をそっと見守るのは、皆殺しにあった村で姉と二人だけ生き残った美しい娘、ミナ。やがて数年の研鑽が実を結び、ついに鞘が完成するが……。
    価格:350円(小説ファンタジー

小説/SFの記事 - 新着情報

  • 葬送のフーガ(17) 北見遼 (2016年02月04日 16時23分)
    ユノとハルを置いて、そして鉢植えを置いて、セリトは歩む。レイは性別を決める期限が来ていた。レイの決断やいかに? 葬送のフーガ最終章。(小説SF
  • 葬送のフーガ(16) 北見遼 (2015年12月20日 18時27分)
    白葬されたエリサに埋めるべき骨は欠片も残っていないが、墓石だけはあった。そこには予想通りハルの姿があった。そう思いたい不幸を直視できるか?(小説SF
  • 葬送のフーガ(15) 北見遼 (2015年11月26日 10時33分)
    間一髪、助け出されたユノは病院のベッドで目を冷ました。彼女をそこまで追い込んでしまった罪と、苛烈なハルの想い。すれ違う各者の行く末やいかに。(小説SF

小説/SFの電子書籍 - 新着情報

  • 生命の木の下で――THE IMMATURE MESSIAH―― 天生諷 (2016年07月06日 18時39分)
    異次元の怪物ソフィアを切欠にした第三次世界大戦から数百年後――人類は高さ1万メートルに及ぶコロニー“セフィロト”を建造。ソフィアの出現に合わせるように、人の規格を遥かに凌駕する身体能力と一種の超能力であるマギを備えた新人類ネクストが登場する。彼らが組織したオラクルと反オラクルのゴスペルが覇権を巡りせめぎあう中、ゴスペルはオラクル攻略のためセフィロトの管理人である天才少女チハヤを狙う。執事のイルは命の恩人でもあるチハヤを守ろうと奮闘するが……。最強のネクスト、先代ゼロとソフィアを封印したネオらの戦闘に加え、ソフィア眷属によるセフィロト崩壊の危機にどう立ち向かう!? 近未来SFアクション登場!(小説SF
  • ALI-CE ワンダーランドの帰還者 天生諷 (2012年03月12日 20時00分)
    ニニ世紀初頭。テロや犯罪が頻発する人工島IEでは、人々は武装し、ナノマシンで身体能力を強化していた。そんな中、アメリカの特殊機関ワンダーランドで戦闘技術を学び、殺しのライセンス、スイーパーの所持者であるアスカは、三〇〇億という常識外れの借金返済のため学園に舞い戻る。想像の斜め右上をぶち抜く変わり者“天災”ミルティに翻弄されつつ、ナノマシンでもインプラントでも強化人間でもない不思議な力「ALI-CE」と燐光を放つ剣サディーヤを駆使して彼女を護衛するアスカ。彼らを襲う強化人間ソウルレスと哀しい事情を抱えた雄太、妖艶な魅力で誘惑するエルフィネル。テロリストたちの目的とは何なのか? 圧倒的な格闘シーンに酔え!(小説SF

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  • 生態刑(5) 城本朔夜 (2012年05月31日 13時40分)
    一命をとりとめた聡だったが、おじさん――庄田博士から衝撃的な話を聞かされる。そして、じんのすけを通し、あるものを託された。雲ひとつない青空のように透明な心で決意する聡。生態刑、最終章。(小説SF
  • 生態刑(3) 城本朔夜 (2011年06月23日 14時18分)
    牛顔たちに連れてこられたのはウンコの山――堆肥熟成所だった。ウンコをスコップでかき混ぜ、畑にすきこみ、作物の手入れをする。初めは刑罰のように感じられた重労働も、生き生きと輝く若い葉っぱを見ると充実するのだった。これなら宿題も自然に見えてくるだろうと気持ちが軽くなってきた矢先、同室の柴田がとんでもないことを言い始めた。(小説SF
  • 生態刑(2) 城本朔夜 (2011年04月07日 15時06分)
    強制収容所とおぼしきプレハブ小屋の一室で目が覚めた“ぼく”は逃げ出した。殺されるかも知れない……。しかし、犬のじんのすけに止められ危うく難を逃れる。連行された先で「つかまった本当の理由をみつけなさい」と言われる。期限は三週間。収容所での生活に“ぼく”は……。(小説SF